© Norito Romania 2014

大切なことは、つながりたいという気持ち。

僕のような旅は、誰にでもできるわけではないかもしれません。でも、たとえば現地の人と少しの間、一緒に過ごすだけでも同じような感覚を持つことはできると思います。外から見るだけではなく、「ふれる」こと、体験することが大切だと思います。たとえば、現地の人が個人宅を宿泊施設として提供してくれるAirbnb。宿を提供しているホストの中には、異文化交流が大好きな人も多い。そういうホストのところに泊まり、Facebookなんかで友だちになったりするだけでも、彼らの生きる背景に興味が湧いたり、自分たちの暮らしや国について話すことを通して、いろいろと見えてきたりするものです。

ちなみに僕、英語がそれほど話せないんですよ。中学1年生の1学期くらいで止まっていて(笑)。でも、気持ちとジェスチャーとノリでなんとかなる。大切なのは、コミュニケーションを取ろうとする姿勢だと思います。指差し手帳も使いますし、Facebookでつながっちゃえば、ネットで翻訳しながらメッセージをやりとりすることもできる。

それに、そもそも英語が通じない場所って多いんです。基本的にツーリストが行く場所は通じますが、そこから外れると本当に通じないことが多い。考えてみれば、英語はもともとイギリスだけの言葉で、それが植民地時代にアメリカなどに広がることで、世界の標準語になっていきました。でも、国の数だけ言葉はあるわけですから、ローカルエリアでは意外と使えないのも事実なんです。ただ、僕の場合はカメラという武器があるのが、コミュニケーションに困らない理由のひとつでしょうか。

© Norito England 2016

旅の記憶を、真空パックしてくれる写真たち。

旅の中で、現地の人とふれ合うことと同じくらい大切なのが撮影です。自分の感じたものをそのまま真空パックできるような写真は、僕の旅には欠かせません。ただ、いい写真を撮らなければとか、作品づくりのような肩の力の入り方ではなく、旅と同様、楽しむようにしてます。たとえば、人を撮るときなんかも、撮るという行為の前に、互いの意思疎通のほうが大切。その上でいい関係になれば撮らせてもらうし、そうでなければシャッターを切ることはありません。そんな関係性や姿勢は写真に反映されますから。

そうはいっても、いい光や魅力的な人を見つければ、撮りたくなるのも事実。そんな被写体を見つけたときは、カメラを片手に庭先から「やあやあ」といった感じで、中に入っていきます。あやしすぎますよね(笑)。実際、声をかけた人に、庭の草木を手入れしていた銛のようなものを突きつけられたこともあるんですよ。

撮っているときには集中しすぎて、実際のシーンを楽しめなくなったりすることが悩みどころですが、帰国してからの楽しみはひとしお。帰国後すぐにではなく、忘れかけたころに見返すことで、旅を二度楽しめているような感覚に陥ります。

© Norito England 2016

自分の旅が、誰かの何かにつながればいい。

直近では、イングランドを2ヶ月間旅してきました。基本的に、1回の旅でひとつの国にじっくりと入りこむというのがマイルールです。本当にあてもなく廻りますが、街に寄って人と接するたびに、「あそこに行ってみなよ」って、次の行き先が決まってくるんですよ。「I don’t like many tourist」とか言っていると、地元の人しか行かないような場所を教えてくれたりして。

宿は、その日暗くなったところで探しますね。とにかく予定が決まっているのが嫌なんです(笑)。その街にしばらく居座りたくなるかどうかは、入ってみないとわからないし、どんな出会いに恵まれるかもしれない。治安のいい国であれば、最悪、車の中でも寝られますし、ローカルな場所でも思った以上に宿はあるので、意外に困らないんですよ。まあ、宿とは呼べないようなところも多いんですが(笑)。

あと、慣れない国の運転と撮影でとにかく肩が凝るんです。だから、携帯電話の待ち受け画面をバスタブの写真にしたりして(笑)。海外だと、あまりありつけることはないんですが、万が一の可能性を信じて必ず見せることにしています。「I love this !」ってね。笑ってくれて、そんなことからも仲良くなったりしますね。

そろそろ帰ろうかなと思うのは、その国に馴染みすぎた感覚になったとき。最初の方に感じていた高揚感やドキドキは、だいたい1、2ヶ月くらいで薄れてきます。逆に、帰ってきてからしばらくは日本が楽しいんです。やっぱりごはんは最高においしいし、とにかく便利で快適。しばらくは意味もなくSUICAをピッとやったりして、あやしい笑みを浮かべたりします(笑)。

イングランドの旅を終えた今は、『LUKETH』の次号の制作を進めているところ。創刊号では、とにかく情報を排除して、写真の力だけで現地の暮らしにある空気感を伝えたかった。“こうしようよ”という道しるべを示すこと自体、本来あるべき旅の姿からかけ離れているような気がして。やっぱり、自分の旅は自分たちでつくってほしい。『LUKETH』は、そんな“きっかけ”を与えられる存在でありたいと思っています。次号からは“その国に暮らす”ということが、どういうことなのか。もう少し具体的な内容を織り交ぜながら、外にある世界への興味をより膨らませていただけるような誌面にしていこうと内容を模索しているところです。

世界の暮らしをめぐる僕の旅

世界の暮らしをめぐる僕の旅

講師:Norito(LUKETH編集長)

世界各国を巡るロードトリップを重ね、現地にあるリアルな日常を綴った、ビジュアルトラベル誌『LUKETH(ルークス)』を創刊したNoritoさん。ガイドブックからはなかなか体験することのできないエリアを、お一人で車旅するユニークな旅路や、現地の暮らしにふれる醍醐味についてご紹介いただきます。インタビューで語ってくれた、直近のイングランドの旅の写真もたっぷり。どうぞお楽しみに。

日時
2017年4月26日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2017年3月17日(金)~4月12日(水)
申し込む

Norito(LUKETH編集長)

香川県出身。2013年より世界各地を車で巡るロードトリップに出る。ローカルエリアを中心に人々の営みや日常風景を写真に収め、世界のライフシーンを綴ったビジュアルトラベル誌『LUKETH(ルークス)』を創刊。2015年にはインドのラージャスターン地方を巡った旅をテーマに、東京/神戸にて巡回展を実施。今後の旅模様についても、本誌や個展にて随時発表を予定している。
【ウェブサイト】http://luketh.com/