東京・中目黒駅徒歩11分、住宅エリアの一角に、アナログメディアを取り扱うセレクトショップ「waltz(ワルツ)」はあります。2015年8月にオープン後、音楽を愛する人々の間で口コミが広がり、アーティストやモデルも通うお店になりました。その評判は海を超え、2017年12月にはGucciがインスピレーションを得た場所「Gucci Places」に、日本ではじめて認定されることになります。そんなwaltzのメイン商品は、カセットテープ。ご自身もコレクターだった店主の角田太郎さんに、カセット音楽カルチャーの入口まで案内してもらいました。

手のひらサイズの可愛いアート

カセットで新譜をリリースしているアーティストはたくさんいますよ。日本のメディアでは、そのような状況が取り上げられることは少ないけれど、カセットは現在進行形のポップカルチャーなんですね。でも世界を見ても、waltzのようにカセットをメインで扱うお店はまったくないから、海外の取材を受けることも多いんですよ。

毎日10件ぐらい海外のレーベルやアーティストから新譜の取り扱いについて問い合わせが入るんですね。ぼくは届く曲を聴いて、waltzのテイストに合うものを選んでいます。テーブルに並んでいるカセットはすべて新譜ですよ。どこの国のどういうジャンルのアーティストかわかるように、一つずつキャプションを書くようにしているんですね。

こうやって新譜が並ぶテーブルを俯瞰してカセットを眺めていると、魅力がわかると思うんですね。あえて小さい長方形でアートを表現したい、そんなクリエイターが世界中にいるのだと感じられますよ。リスナーとして、このカセットを見ると、可愛いって感じると思うんです。それがカセット音楽カルチャーの魅力なんですよ。

人を惹きつけるカセットの魔力

「うわぁー、これ可愛い!」って思ったら、手に取ってみたくなる。手に取ると、サイズ感も可愛くて、新鮮で、「どんな音楽が流れてくるんだろう。聴いてみたい……」。ほしくなるから、買う。一つ買うと、集めたくなる。カセットには、そんなふうに人を惹きつける魔力が宿っていると、ぼくは思うんですね。

新譜を製作するアーティストからもカセットは評価が高いんですよ。カセット音楽は、スキップしたりシャッフルしたりすることができないからなんですね。ちゃんと1曲目から音楽を聴いてもらえるから、アーティストのこだわりがリスナーによく伝わるんですよ。アーティストは曲順をはじめ、曲と曲の間に何秒の間を置くかまで考えて作品をつくっているから。

だから、生活の中で音楽のプライオリティが高い人たちは、カセット音楽を聴くようになってきていますよ。インデックスのデザインを含めて、音楽に形があるんですよね。形があるから、可愛いという気持ちで新譜と出会うきっかけが生まれていくんですね。そんなカセットを整然と並べて眺めていると、内側からクリエイティビティも湧き上がってきますよ。

キャプションから広がる縁

waltzの常連客には、音楽やファッションの関係者が少なくないんですね。まちで見かけたら、びっくりするような人もお忍びで通ってこられていますよ。混んでいるときに入店してこられるから、「大丈夫かなぁ……」ってすごい心配になるくらいです。他のお客さんと一緒にキャプションを読んで、購入していかれますよ。

海外のファッション・デザイナーが来日する際に、waltzを案内してくださる人も多いみたいです。せっかく来日して、東京に来たから、他国では体験できないおもしろいところに案内したい。そういう場所のひとつとしてwaltzをリストアップしてくれているようなんですね。

2017年12月に「Gucci Places(グッチ・プレイス)」に認定されて、2018年4月にオーディオカセットのパッチがデザインされた「Gucci Courrier(グッチ・クーリエ)」コレクションが生まれることになったのも、もともとGucciの方が来店してくれていたことがきっかけだったんですね。お問い合わせの連絡が来たので、撮影場所として利用する問い合わせかと思ったら、そのような話だったので、何か不思議な気持ちでしたよ。

女子のための音楽入門講座

女子のための音楽入門講座

講師:角田太郎(waltz店主)

6月講座の講師は、日本唯一のカセットテープ専門店である中目黒「waltz」店主の角田太郎さんです。『女子のための音楽入門講座』と題し、カセットテープやレコードなどのアナログメディアの音楽をライフスタイルに取り入れることの醍醐味や、この季節にピッタリの音楽の楽しみ方をお話しいただきます。

日時
2018年6月27日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2018年6月8日(金)~6月20日(水)

角田太郎(waltz店主)

1969年、東京都生まれ。CD/レコードショップ WAVE渋谷店、六本木店でバイヤーを経験後、2001年にアマゾン・ジャパンに入社。音楽、映像事業の立ち上げに参画。その後、書籍事業本部商品購買部長、ヘルス&ビューティー事業部長、新規開発事業部長などを歴任し、2015年3月に同社を退社。同年8月に東京・中目黒にカセットテープやレコードなどを販売するヴィンテージセレクトショップwaltzをオープン。また、さまざまな企業や店舗、イベント等のための選曲を行うほか、同ショップは、2017年12月、Gucciがブランドのインスピレーション源になった場所を紹介するプロジェクト「Gucci Places」に日本で初めて選出された。