雑誌『ソトコト』は、「社会や環境がよくなって、そしておもしろい」をテーマとしたソーシャル&エコ・マガジンです。2019年1月講座では、『ソトコト』編集長の指出一正さんが「地域を旅する」というテーマで講師を務めます。日頃から、全国各地を旅している指出さんに、地域の旅を楽しむポイントを教えてもらいました。

地域は旅を優しく包む

もう来てくれる人を拒むような地域は少ないですよ。以前は、地域に来てくれる人を拒むように見えることもありました。でも、あれは恥ずかしいだけなのですね。お互いの距離感はすぐにつかみきれないから、冷たい印象を受けてしまうかもしれないけれど、昔に比べて人と人との距離感はぐっと縮まっています。だから安心して、地域を旅してくださいね。

知らない地域に入っていくと、もうひとつの世界を持つことができる喜びにつながりますよ。みなさんスマートフォンの中に3つも、4つも異なる世界を持って暮らしていますよね。ぼくでさえ、いろんなスレッドでプロジェクトをやっているから、ここに自分がいても、スレッドでは今も別の世界が動いています。

インターネットでは、そんなふうに単層な世界から複層な世界へ移っているから、リアルな世界で過ごす空間も、もう1個、2個と増やしていったら、面白い世界になりますよ。世界が複層になったら、ここにいる自分が息詰まりや束縛感を感じても、気持ちが揺らぐことは少なくなると思うんです。それって、とても大事なことですよね。

人と触れ合う旅のはじまり

例えば、ぼくが島根の中山間地域で、あるおじさんと会ったとします。1日の滞在でその人と話す数時間と、日頃一緒に働く人たちと1年間話す時間は、ほぼ同じかもしれません。東京で働く会社員が部下と上司でどれくらいの時間を会話しているのか。それを計算してみたら、おじさんと話す時間は1年分の濃度かもしれないと思うんです。

とはいえ、もともとぼくは魚にしか本当に興味を持っていませんでした。はじめて会う人には、必ず、「頭の中はイワナという川魚のことでいっぱい」と話すくらいなんです。小学校から釣りをはじめて、大学生になって山登りをするようになって、各地に、なんて素晴らしい地域があるのだろうと感じてきました。

ひとつだけはっきりしているのは、プライベートで地域を訪れるときに山や森といった“舞台”に興味を持っていたことです。みなさんも、どんな場所なのかということに興味を持ちますよね。それが『ソトコト』の編集長をするようになって、“舞台”から“演者”に興味を持つように変わりました。今では、地域の素敵なおばさんや、面白いキャラクターのおにいさんなどと触れ合ったり、仕草を見たりすることが楽しいんです。

新しい人とつながるパスポート

はじめて訪れた地域で、どのように人と出会っていったらいいのかな。ぼくの場合は、ソトコトというずるい“パスポート”があるので、ちょっと変わっています。みなさんの場合だったら、あなた自身がそんな“パスポート”になるんじゃないかと思いますよ。素のまま訪れたらいいんです。地域の人たちも、挫折したり凹んだり、楽しくて気分が上がったりする、ふつうの人として同じような人が来てくれることを楽しみに待っていますから。

お互いにただの人同士が出会うことの面白さは各地に広がっています。だから気構えないで大丈夫。旅という非常に良い形の入り方で、地域の日常みたいなものに少し興味を持ってみると、旅のその先で待っている楽しいことに出会えると思います。そんなふうに地域へ旅するときは、はじめて会った人にぜひ「楽しみに伺いました!」と大きな声で伝えてみてください。

地域も人も自信を持てないことは、どこの誰にも共通しています。だから、地域の外から来た人に楽しみだと伝えられるのは、ものすごく嬉しいことなんですね。心から、そういうことを喜ぶ気持ちは100%伝わります。それは、みなさんが地域を旅していく際の良い“パスポート”になりますよ。

まだ知らない地域の魅力に会いに行く旅

まだ知らない地域の魅力に会いに行く旅

講師:指出一正(『月刊ソトコト』編集長)

1月講座は、地域のものづくりや文化の魅力を都市で暮らす生活者に提案する「旅ルミネ」との連動企画となります。講師は、ソーシャル&エコ・マガジン『月刊ソトコト』編集長の指出一正さんです。『まだ知らない地域の魅力に会いに行く旅』と題し、旅をきっかけにした地域との関わり方や、人とふれあうことで感じられる魅力などについてお話いただきます。

日時
2019年1月16日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2018年12月20日(木)〜2019年1月6日(日)

指出一正(『月刊ソトコト』編集長)

1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現『ソトコト』編集長。ロハス発祥の地と言われる、アメリカ・コロラド州ボールダーや、アフリカ、アイスランド、中国の現地取材を担当。趣味はフライフィッシング。民俗学や手仕事の分野にも興味があり、両方の要素から東北に惹かれ、出かけることが多い。昔の日本人に通じるひとつの村の暮らしぶりが見える地域も好きで、日本中のさまざまな地域を旅している。