買い物はエネルギーを受け取ること

お買い物は何か、エネルギーを受け取ることだと思っていて。例えば、ファストファッションはどこかの環境下で誰かが低賃金でつくる物だったりするけれど、それを買う人がいるから結局つくられ続けている訳でっていうようなことは、みんなに見えている時代。なので、みんながハッピーな仕事で成り立っている物を選んでいきたい。

まだ勉強中の身ですが、籠をひとつとっても、その先には籠を編む作家さんがいて、その籠の材料を作る人がいて。みんなが繋がってひとつの作品が生まれている。そんな背景を知ると、最終、お店で買う行為がちゃんと良いエネルギーを受け取る行為にしたい。提示する側としては、そんなモノ選びをしたいと思っています。

大袈裟かもしれないけれど、お買い物は生きることに近いかもしれないですよね。エネルギーを受け取ることもそうだし、誰かと関わることのすべてだったりもするので。それこそ、コンビニで飲み物を買うにしてもペットボトルにするか紙パックにするのか選択の連続で、その一つひとつの選択を大事にしたいなってすごい思います。

自分の感覚が響いた物を手元に置く

買った物って、消え物以外は使ったり、飾ったりするから、家の空間は選んだ物のエネルギーで満ちていく。自分が心地いいと思える物に囲まれて良いエネルギーで満ちていくと、暮らしと心は豊かになってくると思います。なるべく、「これでいいや」って物は買いたくないというか、これだ! と思えるものに出会わなければそれまで買わないし、っていうのはすごいあるかもしれません。

でも、商品のそばに添えられたキャプションで、語れることがいっぱいある作家さんや商品について、「こんなに良いんですよ」って説明することはCASICAではあえてしていないです。せっかくお店に足を運んでもらっているので接客でお伝えできたらということと、書かれたものを読んで選ぶというよりか、「好き。でも、これって何だろう?」「わぁ!」っていうお客さん自身が持っている自分の感覚に響いて、手に取ってもらえたら。

日本人っていうか、私はそうなんですけど、そういう説明にすごい影響を受けちゃうから。それをシャットアウトするのは、日常、東京で生きていて難しいと思うんです。情報ばかりが入ってきて、ちょっと頭でっかちになっちゃいますよね。だから、なるべく野生の勘みたいなものは鍛えていきたい。

部屋は“私”の集大成

CASICAでお話ししていると、「どれを選んでいいか、わからないです」って方もいるんです。ディスプレイもそうですが、好きなものを選ぶことに正解もないので、それこそ私もそうだったように、失敗して、勘は育っていくものだと思う。眠っていると思うんですよ。私にもまだ違う引き出しがあるだろうし、来年はまた違う物を好きになるだろうし。

でも、それも好きで。そんな風に変化して積み重なっていく自分の歴史で部屋って構成されていくじゃないですか。自分の歴史とともに選んでいったら、さまざまな物で構成された一個一個の集大成になる。そんな部屋は、いろんな物を置いていても、ぐちゃぐちゃにはならずにその人にとってのスペシャルな空間になるんですよね。

素敵だなと気になった作家さんは展覧会だけではなく、どんなに遠くてもその方の工房やアトリエに伺わせていただきます。作業スペースやお家にお邪魔すると、その方が何を大事にされているのかきちんと感じ取ることができる。お客さんとの架け橋となるショップのみんなに、作品だけでなく感じ取ったことを伝えるのが自分たちの使命だと思っています。

自分の価値観を磨くモノ選び

自分の価値観を磨くモノ選び

講師:引田舞(CIRCUSディレクター)

10月講座の講師は、新木場にあるショップやカフェ、ギャラリーなどの複合施設「CASICA(カシカ)」の内装やディスプレイ、古道具や古家具の買い付けまでトータルにディレクションするユニット「CIRCUS」の引田舞さんです。国内外問わず様々なところでの買い付けをしている引田さんに、モノ選びをするときに大切にしていることのお話をしていただきます。

日時
2019年10月23日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2019年9月19日(木)〜10月13日(日)

引田舞(CIRCUSディレクター)

アパレルのプレスアシスタント、ラジオの構成作家などのキャリアを経て、現在は夫の鈴木善雄さんとともに、ショップの内装デザイン&ディレクションを行うユニット「CIRCUS」を主宰。新木場の複合スペース「CASICA」のディレクションなどを担当。