2016.12.16
Report 1/3

ネコとわたしの暮らし方

講師:坂本美雨(ミュージシャン)

書籍『ネコの吸い方』(幻冬社)を上梓するなど、大のネコ好きとして知られるミュージシャンの坂本美雨さん。講座では、愛猫「サバ美」との暮らしや、ネコとの付き合い方のコツを教えてくれました。会場には、帽子、メガネ、洋服と、すべてネコをあしらった“ネコ正装”で登場。いわく、愛猫家の間では正式な装いとして知られるコーディネートだそう。ネコ愛たっぷりの講座の様子をどうぞ。

お花畑に寝転がるように、ネコを吸う

2014年に出版された『ネコの吸い方』は、Twitterでの「ネコはお吸い物です」というつぶやきをきっかけに生まれた本。講座は、坂本さんが提唱するネコとのコミュニケーション方法「ネコ吸い」の話から始まりました。独特のその方法は、次のとおり。

「今どんな気分? ちょっといいかな?」と、話しかけながら抱き上げ、仰向けに寝せて体を開きます。そしてお腹に顔をうずめます。ネコと呼吸や気を通わせ、循環させるようなイメージで深く息を吸い込み、吐きます。このとき、心を無にするのが大切です。お花畑で寝転がっているような、うっとりした気分に身を任せてみましょう。私はいつもこの「ネコ吸い」で、サバ美から生命力をもらっています。……みなさん、ついてきていますか?(笑)

この「ネコ吸い」を、どんなに忙しくても1日5回行う坂本さん。こまめなコミュニケーションには、ネコの体調の変化にいち早く気付けるというメリットもあるのだそうです。そしてもうひとつ提唱しているのが、仰向けになったネコのおなかをひと息に撫でる「ズサァ」。それを期待してお腹を出すネコ側の“ズサァ待ち”があって初めて成立する、信頼関係に基づいた上級コミュニケーション術です。詳しくは、坂本さんのInstagramでご確認を。

サバ美が連れてきた夫と娘

そんな坂本さんとサバ美の出会いは、2010年のこと。その頃、ずっとネコと一緒だったニューヨークでの暮らしから、東京に戻ってひとりだけで生活していた坂本さんは、寂しくて、毎晩のように里親募集サイトを眺めていたそうです。でも、一人暮らしで先の人生がまだ見えず、独身者が猫を飼うことに対する偏見も気になって、なかなかお迎えする気になれませんでした。そこに現れたのが、ノラネコとして保護されたサバ美。サムネイル画像を見ただけで、ハッとしたそうです。

この先どうなるかもわからないのに一生面倒を見られるかなとか、そんな気持ちが吹き飛んでしまうような出会いだったんです。サバ美とは、里親募集サイトに載っているネコと実際に会える「譲渡会」で対面しました。希望を出すと審査を受けるんですが、「もし私でなくても、幸せにしてくれる人にもらわれてほしい」という気持ちもあって。でも、最終的に保護主さんが私を選んでくださって、うちに来ることになったんです。独身時代に一緒に暮らしはじめて、サバ美がきっかけで夫と出会い、娘が生まれました。きっとサバ美が「こいつには一緒に暮らす人間がいたほうがいい」って、夫を連れてきてくれたんじゃないかな(笑)。

坂本さんは現在、夫と娘(愛称、なまこちゃん)、それにサバ美の3人と1匹暮らし。姉妹のようになまこちゃんと仲がいいサバ美ですが、出産直後は「知らない生き物が家にいる」と戸惑い、なかなか近づかなかったのだとか。

私がひとりでいるときは近寄るのに、なまこといると不安そうにうろうろして。でもある日、授乳で手が離せないときに、サバ美がふと私の脚にくっついて、ペタンと座った。本当は私から歩み寄るべきなのに、私が動けないことをわかって、彼女から心を許してくれたんです。その瞬間、家に初めて来たときや、夫と暮らし始めたときも心を開いてくれたことが思い出されて、もう感動して、泣いて泣いて。心からありがとうって思いました。そういう懐の深さに頭が下がるし、そこがサバ美の一番好きなところ。

サバ美と暮らしはじめてから、結婚して家族ができただけでなく、独身時代も含めて「毎日がツヤっとしている(笑)」と坂本さんは言います。

ただ楽しいだけじゃないんです。暮らしの中に、血液が流れるように生命力のかたまりがある感じ。サバ美がいるから、外でどんなにつらいことがあっても、生きようって思える。サバ美は、体調が悪いときや泣いているときに、さり気なく横にいてくれるんです。私と同調して、寄り添い合う存在。言葉がなくても気持ちが通じ合っていることを感じるときが幸せな瞬間です。

ペットショップではない、ネコとの出会いを

講座の最後には、ネコや坂本さん自身に関するさまざまな質問が飛び交いました。その答えの中には、これからネコを飼いたいと思っている一人暮らし中の人に向けた、こんなアドバイスも。

 

「ネコ親戚」と呼んでいるんですが、鍵を預け合って、出張のときなどにお互いのネコのお世話をし合えるような関係の人がいると安心です。ネコを通して、本当の親戚のようにだんだん深い関係になっていくのもよくて。それから、まだ一生の面倒を見る約束ができない人におすすめなのは「預かりボランティア」。里親が見つかるまでの間、動物愛護団体で保護されている子と一緒に暮らすシステムです。施設は保護された子であふれ返っているので、今、こういう形で猫と暮らすことが切実に求められています。もちろん、私のように譲渡会に参加してもいい。お金を出して買うのではない出会い方を、もっと当たり前にしていきたいと思っています。

締めくくりに、CLASS ROOM恒例の「よい暮らしとは?」という質問に、「健康であること」と答えた坂本さん。その心は?

現代の女性は、自分のことをほったらかしにしてでもやりたいことをやって、本当に頑張り過ぎていると思うんです。でも、自分を大事にすることは、自分も、家族や大切な人も幸せにすることでもあると思っていて。だからこそ、自分の体を大切にしてほしいと思っています。ネコとの暮らしも同じで、私が不健康な状態だと、サバ美の毛並みもツヤがなくなってくる。大切な誰かとは、深いところで連動しているんだと思うんです。

>>交流会の様子はこちら

坂本美雨(ミュージシャン)

東京・ニューヨーク育ち。日米ともに猫と過ごす。97年、「Ryuichi Sakamoto feat. SisterM」名義でデビュー。聖歌隊CANTUSと「坂本美 雨 with CANTUS」として2016年6月22日にミニアルバム「Sing with me」をリリース。ソロ活動に加え、おおはた雄一氏とのユニット「おお雨」として多くの音楽フェス等に出演、ラジオのパーソナリティや、ナレーションなどでも活躍中。『ネコの吸い方』(幻冬社)を執筆するなど、大のネコ好きとして知られている。「freePets〜ペットと呼ばれる動物たちの生命を考える会(愛称:ふりぺ)」のメンバーとしても活動している。

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