2018.10.24
Report 1/3

食べることから暮らしのことを考えてみる

講師:田下隆一(風の丘ファーム)

10月の講座は、食を通じて都市での豊かな暮らしを育む「ルミネアグリプロジェクト」との連動企画でした。講師に招いた、「風の丘ファーム」の田下隆一さんもこのプロジェクトのマルシェに参加しています。田下さんは、埼玉県小川町で有機肥料の無農薬野菜をつくっている生産者です。野菜を食卓に届けてくれる田下さんと、食べることから暮らしについて考える時間を過ごしました。

自然の中で野菜をつくる

有機農業や無農薬野菜という言葉は聞いたことがあります。ですが、そもそもどういった形式で野菜をつくることなのか曖昧な人も少なくありません。田下さんが行なっている方法について教えてもらいました。

普通の栽培では草は悪で見るのも嫌なくらいの農家もありますが、うちでは草の種が落ちず、野菜が草に負けなければ草は必要だと思っています。畑にいる虫は半分以上がただの虫で、何もしませんし野菜を食べしまう害虫のことを食べる虫がいて、その虫は農家の味方になってくれます、そんな生き物たちが住める場所を畑の中につくっていくのです。

例えば、野菜にはアブラムシがつきます。アブラムシが野菜の汁を吸ってしまうので、野菜は硬くなってしまうんですけれど、テントウムシやカゲロウはそのアブラムシを食べてくれます。そういうようにいろんな虫が畑にいられるようにしてあげて、栽培していくのがうちの生育です。

田下さんは、なぜ有機肥料の無農薬野菜をつくろうと思ったんでしょう?

もともと農業を知らなかったことが一番大きいと思います。畑で野菜をつくっていって、種を蒔いて、収穫することをイメージしたときに、農薬を使うことが思い浮かんでこなかったんです。それなので、どうしたら食べてもらうかたに美味しくて安全な野菜を食べてもらうようにできるのか、こだわってきました。

旬の野菜は美味しく健やか

そんな田下さんは、ひとつの畑からいろんな野菜を育てているのだそう。

畑では、春夏秋冬で育つものが変わってくるんですね。春は寒さが抜けるので、地面の上で小松菜やレタスなどが育ちます。だんだん暖かくなると、たくさん光を浴びることができるので、立体的にトマトやキュウリやピーマンなどが成ります。それから涼しくなっていくと、また地面の近くに戻っていって葉物を育てることができます。

そして冬になると寒くなるため、ネギだとかニンジンやゴボウ、ダイコンのような地下のものができます。野菜は、その時々や地域などの環境に合わせてできるものが旬になるんですよ。それは、栄養価も高く美味しい野菜です。

旬の野菜をどのようにすれば美味しくいただけるのだろうか。

野菜って生きているんです。収穫してからも、生きています。ですから、輸送中に冷蔵庫に入れたり、クール便で配送します。涼しく保存しておくと、野菜の呼吸数が下がるので、旬の野菜が土からもらったものの消耗を少なくして食べることができます。ですから、できるだけ近い場所で採れた野菜を買って、早めに食べるのが一番です。

そうすると、東京には生産現場が少ないので、関東平野でつくっている野菜は旬の野菜だと考えるのは、わかりやすいのかな。旬の野菜だったら、あまり凝った料理をしなくても、軽くあぶったり、ちょっと料理してあげるだけで美味しいんですよ。

例えば、うちではネギ鍋をします。このネギ鍋は1〜2月しか美味しくないんです。ネギは1年中、ぼちぼちと出荷がある野菜ですが、1〜2月の霜に当たったネギは、見栄えがちょっと悪くはなっているけど、味が違うんですよ。寒ちぢみ野菜とか、寒絞め野菜といって、寒さから自分を守るために野菜が糖分を溜め込んでいるんですね。

環境や食べ物がすんなり入ってくる暮らし

講座の後半は、参加したみなさんからの質問に答えていきました。

Q.野菜は生よりも加熱したほうがいいとよく聞きますが、本当でしょうか?

野菜にも、いろいろなものがあるんですね。採れたてで食べたほうがいい野菜もあれば、置いておくほうが美味しくなる野菜もあります。また、冬の野菜であれば、ちょっとだけ火を通してあげると甘みが出て美味しくなると思いますよ。

Q.田下さんらしさを表現できた野菜はありますか?

私は、パセリやセロリ、ニンジンがもともと好きじゃありません。うちでつくるようになった今でも、イタリアンパセリとセロリは苦手です。でも、ゆっくりじっくり土の中のものを吸い上げてニンジンができたとき、甘さやコクがものすごく美味しいんです。

最後に、CLASS ROOM恒例の質問にも答えてもらいました。田下さんにとって、「良い暮らし」とは何でしょう?

農業をしていると、朝から晩までやることがいっぱいあります。最初の頃は、休みを取れずに仕事をしていました。ただ、本当に一瞬なんですけれど、やっていて気持ちいい瞬間があるんですね。春に、ぽかぽか暖かくなって、桜が咲いたときに綺麗だなと思ったり、秋に紅葉のなかで働いていたりする、1年で本当に少しの時期なんですが、そういうときにいい気持ちになります。

あと農家って綺麗な野菜は出荷してしまうんです。食べているのは、出荷せずに除けた野菜。それでもこんなに美味しいものを食べられるのは、すごくいい仕事だなと思います。そんなふうに、周りの環境や食べるものが日常にすんなり入ってくる暮らしができているのは、良い暮らしなんだなと思うんですね。

>>交流会の様子はこちら

田下隆一(風の丘ファーム)

1960年生まれ。埼玉県地域指導農家理事、株式会社風の丘ファーム 代表取締役。東京での生活で農業に憧れ、高校卒業後、北海道の牧場で研修の後、東京でサラリーマンをするが農業をあきらめきれずに、小川町の霜里農場で研修。翌年小川町で就農、2008年には法人化し株式会社風の丘ファームを設立。露地野菜年間100品目、米、麦、大豆を栽培、飲食店、一般家庭に農産物、加工品を直接出荷している。

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