2019.12.18
Report 1/3

やっぱり雑誌が好き

講師:高山かおり(「Magazine isn't dead.」主宰・ライター)

12月講座では、国内外の雑誌を販売するオンラインマガジンストア「Magazine isn't dead.」主宰の高山かおりさんを講師に招きました。「やっぱり雑誌が好き」というテーマで、つくり手のこだわりが伝わってくる雑誌について、高山さんから気持ちのこもったエピソードを話してもらいました。

店名の由来になった1冊

「Magazine isn't dead.」という特徴的な店名は、ロンドンでつくられていた、とある雑誌がきっかけで名付けられました。

私が書店勤務の頃、洋雑誌の輸入をしていて見つけたのが『Print isn't dead.』。入荷時に箱を開けると、真っ黒い表紙に白い文字でタイトルがプリントされていることが印象的でした。この雑誌のことを知れば知るほど、つくり手自身が紙や印刷への愛を持ってつくっていることがわかって、ずっと頭に残っていたんです。

惜しむらく4号で休刊になった『Print isn't dead.』ですが、この雑誌のつくり手が次に制作したものが『Posterzine』という変わった雑誌です。

広げると、A1サイズのポスターになるという特徴的な雑誌です。ISSNという世界共通の雑誌コードをつけて発行されています。そのコードがついていると、大英図書館に永久保存されるんですね。つまり、『Posterzine』でも“紙は死なない”が体現されているんです。そんな風にパッと見ただけではわかりにくくても、つくり手の想いが反映されていることを見つけられると楽しくなります。

つくり手の想いに共感して

『Posterzine』をはじめ、世界にはつくり手の想いがつまった雑誌がたくさんあります。同じくイギリス発の『COUNTERPOINT』という雑誌もそのひとつ。

プリントゴッコは知っていますか? 日本の理想科学工業という会社の商品です。そこがつくった高速プリンター「リソグラフ」で刷っている雑誌です。3色カラーで独特の色合いになり、高速プリント特有のかすれ具合が生まれて、1冊として同じ雑誌はない、1点ものを探す楽しさがあります。これこそ紙の魅力。

海外ではリソグラフが注目されて、リソスタジオという印刷スタジオが増えているんですが、『COUNTERPOINT』のつくり手も元はウェブマガジンをつくっていたのに、その魅力に影響を受けて、このような雑誌をつくるようになったんですよ。

「好き」を忘れないで暮らそう

講義の後半は、参加した方々の質問に答えていきました。

Q.雑誌を楽しめるオススメのスポットを教えてください。

意外かもしれませんが、北海道へ行く際は六花亭の「六花文庫」にぜひ寄ってみてください。札幌市の真駒内駅から歩いて10分くらいのところにあって、食の本と雑誌がそろっています。私はそこで『お菓子の街をつくった男』という絵本を読んで、はじめて絵本で泣きました。

東京だと都立図書館が楽しいです。国分寺市にある多摩図書館は「東京マガジンバンク」と謳うほど雑誌がそろっていて、企画展も行なわれていますし、広尾駅近くにある中央図書館にも雑誌がそろっています。どちらの図書館も公園が隣接していて、ロケーションも最高です。

Q.英語が苦手です。洋雑誌はどう楽しめばいいですか?

ビジュアルだけでも楽しめる雑誌はたくさんあります。サイズの小さいZINEのような雑誌を所有すると私は満足感が高いです。でも、せっかくだったら辞書を引いて見るのもいいですよ。私も英語は話せませんが、簡単な英語で書かれている洋雑誌は多いので、意味をひも解いていくのがオススメです。

Q.収納はどうしていますか?

自作で棚をつくりました。家のサイズに合わせてつくったんですが、そこにも収まりきらないくらいの雑誌があります。だから、家のいくつかのところに積んで保存するようにもしています。

最後に、CLASS ROOM恒例の質問にも答えてもらいました。高山さんにとって“良い暮らし”とは何でしょうか?

「好き」っていう気持ちを忘れない暮らし。夢中になることを諦めてしまったら、今の私はないと思うんです。きっと雑誌のつくり手たちも同じ。好きだからやる、ということに楽しさは潜んでいるので、「好き」という気持ちを忘れないことが大切なんじゃないかな。

>>交流会の様子はこちら

高山かおり(「Magazine isn't dead.」主宰・ライター)

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead.主宰。販売だけでなく卸やセールスも手がける。本業はライター、編集者。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」にて5年間販売員として勤務後、都内書店へ転職し6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、あらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。主な連載に、ginzamag.com「Magazine isn’t dead.」、WWD JAPAN .com「雑誌と本を行ったり来たり」、リトルプレス『北海道と京都と その界隈』内のエッセイ「偏愛北海道」などがある。
【ウェブサイト】http://magazineisntdead.com/

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