「練る」「炊く」「焼く」「型どる」の
和菓子の代表的な技法を4つに分けてご紹介いたします。

練る

小豆や寒天などの材料を、時間をかけて練ることで、しっかりと味の詰まった練り羊羹が完成します。シンプルながらも、材料が多いほど時間がかかり、さらに練るほどに水分が飛んでいくので重さが増していきます。
こうした羊羹作りを要にして、多彩な商品を展開しているのが、石川の「茶菓工房たろう」です。

一晩、水に浸けて戻した糸寒天に水を加えて熱を加えます。
この糸寒天が練り溶けたら、そこにザラメ糖を加えて練ります。この状態で一煮立ちしたら、そこに生餡を投入して、さらに練ります。とろみが出てきて、表面に泡が出たら沸騰の合図です。
「茶菓工房たろう」では、チョコレートなどを使った羊羹もあるため、そうした商品では、さらに材料の追加と練りの作業が加わります。

日々の気温等にも左右されるため、沸騰の泡の具合やとろみをこまめに確認しながら、順に全ての材料を練り上げ、最後は熱々の液体を濾し、羊羹型に流し込みます。

こうした寒天を使った羊羹作りは、江戸時代末期に始まったと言われています。糖度を気にしすぎて固くなりすぎても、水分が多すぎても美味しい羊羹は完成しません。職人による練りの技法が、繊細な素材の風味を引き出しているのです。

炊く

和菓子といえば、あんこを思い浮かべる人が多いですが、餡と一言でいっても、じつに多種多様です。
たとえば最中の場合は、その餡の水分バランスが重要で、しっとりした美味しさの要になるのです。
その最中に注力した和菓子を作っているのが、滋賀・彦根の「菓心おおすが」です。

「菓心おおすが」では、餡を作るにあたってまず北海道産の小豆「きたろまん」を炊きますが、日々の気温や豆の状態でその加減は異なります。長年の経験を積み重ねた職人によって見極められ、ボイラー機でじっくりゆっくりと蒸された小豆は、3〜4倍の大きさにまで、ふっくら炊き上がります。
その熱々の小豆に白双糖を加え、粘り加減や光沢具合を職人が確認しながら、練り上げていきます。そうして完成した餡は一晩寝かすことで、さらに糖度が高くなるのです。
そして、糖度が高くなり、程よい固さとなった餡を最中に詰めれば完成です。

良質の素材を丁寧に見極め、その美味しさを最大限に引き出す。小豆を炊くことから始まる、和菓子の奥深さがここにあります。

焼く

お煎餅に近い穀物を潰して焼いたものは、弥生時代の遺跡からも見つかっています。それほど古くから親しまれてきたのが、お煎餅の歴史です。

お煎餅屋は日本国内でも数多くありますが、東京の「富士見堂」は、うるち米を仕入れ煎餅生地を作るところから自社で行っています。こうした生地作りから一貫生産をしているお煎餅屋は国内では数少ない存在です。

たとえば、堅焼き煎餅。これは全て職人の手作業で焼き上げます。焼きの工程で大切なことはいくつかありますが、焼き始めの柔らかいうちにキリで刺して、煎餅生地の気泡(中の空気)を抜くことは一つのポイントです。
この一手間によって、お煎餅の歯ごたえや味わいは大きく変わります。

堅焼き煎餅は、15分ほどで焼き上がりますが、焼き機の奥と手前では温度が異なるので、手作業で何度も返しを行い、焼き色で見極めます。

良質なお米を使うことへのこだわりと、熱さにも負けない職人たちの最上の技で美味しさを作り上げているのです。

型どる

硬い桜の材で作られた菓子木型は、江戸時代発祥の文化と言われています。日本の四季折々の風情を象った菓子木型に材料を詰めて、型どります。この技法を用いて、富山県産の米粉やブドウ糖を原料にラムネ菓子を作っているのが富山の「大野屋」です。

まず果汁を粉に流し込み、長方体の捏ね棒を使ってよく混ぜます。こな全体に果汁が行き渡り、程よくしっとりとしたらその粉を菓子木型に詰めていきます。
詰める際には、指で押しつめたり、コテを使いますが強く詰めすぎると型に張り付いて、上手く型どることはできません。
強すぎず弱すぎずの絶妙な職人の手仕事によって、細部まで緻密な形が生まれるのです。

型どられたばかりのラムネは、まだ水分が多いため約1時間、乾燥機に投入され、完成となります。愛らしく型どられたラムネは、口の中に入れると溶けるように広がり、儚く消えていきます。

木型が小さくなるほどに、その緻密な形をきれいに型どることは難しくなります。優しすぎても、強すぎても完成しない木型菓子には、繊細な手仕事の技が生きているのです。