古い映画が教えてくれる新しい発見

お家でのDVDや配信だとスマホを片手に観ることもできちゃうから、映画館がオススメです。私の場合、名画座で古い映画を観ることは、仕事よりも趣味のほうに近い体験。1950〜60年代の松竹、東宝、大映っていう大きな映画会社がつくった作品は、すごくリッチで華やかだし、スターがそろっています。

古い映画をいっぱい観てもらいたいって思っているんです。「若い世代は知らない」って上から言っているわけじゃなくて、ファッションや映像が可愛かったり、ゴージャスだったりするんですよ。以前、青山学院大学のゲスト講座で『パリの恋人』という作品を流したら、若い子たちが可愛いって楽しんでいました。

主演のオードリー・ヘップバーンを写真でしか見たことがない世代から「えっ! 昔の映画ってこんなに可愛いんですか?」って驚いてもらえて。それもあって、可愛いっていうことは大事なんだなと改めて感じることができました。

自分以外が教えてくれる私に必要なもの

シド・チャリースという有名なミュージカル女優を観てもらった時も、すごかったんです。ダンスシーンで、彼女の長い脚がスリットスカートからパッと見えた瞬間「この長さ、あり得なくない?」みたいな歓声が上がりました(笑)古い映画って聞くと貧しいものを見せられるって思うかもしれないけど、本当にリッチにできているのでオススメです。邦画もそれは同じで、古いからって古臭いわけじゃないんですよね。

もちろん、その日の気分に合わせて観るのがしんどそうな作品もあります。私の場合は、それでも気分に合わなそうな映画を観なきゃいけないことがあるんですけど、逆にそんな作品が良かったっていう体験も多いんです。自分が本当にほしいものって自分でわかってあげられていないこともありますよね。

だから、誰かからオススメされた映画や、映画館でたまたま上映していた作品と、出会うことも楽しいです。好きな映画館でたまたま上映されていたから、っていう理由で観ることがあってもいいんじゃないかな。「今の私には、これが必要」だと、自分で思っていなかった体験が映画の中で見つかると思うんです。

映画館通いが日常にペースを刻む

お気に入りの映画館を見つけて、そこで上映されている作品を定期的に観てみたりする。そうしていると、本当にほしいものを見つけることができるのかもしれませんね。映画館まで通うってことが大事な体験になると思うし、映画館には大きなスクリーンで観ること以外にも、そんな魅力が待っています。

私の場合、日常で良い映画を観ると、なぜかおなかが空いちゃったりもして(笑)熱量が高まっているからなのかな? そんな風に、日常に映画を取り入れると、経験値が高まっていく。いつもと同じ映画館に通っても、その日の気分や天候で感じる印象は変わりますし、そういうことが楽しいです。

日々生きていたら、しんどい時期もあるじゃないですか。そんなしんどい時期も「あの映画を観た」っていう体験で捉え方を変えられるかもしれない。「辛かった時期だけど、あの映画を観たな」って、コンテンツに飲み込まれそうな時代に、自分のペースを打つことができる。それが、自分自身や人生を振り返る、記憶や体験として残ると思うんです。

2020年の処方箋

2020年の処方箋

講師:山崎まどか、山口博之、垣畑真由

2020年新年特別講座のテーマは「2020年の処方箋」と題し、2020年、様々なことが目まぐるしく変化する日常を、楽しみながらも心の平穏も保てるようなCLASS ROOM的ウェルビーイングについて考える講座内容を予定しています。映画/本/音楽それぞれの専門家から、自分らしく日々の暮らしを整える作品との向きあい方などを語っていただきます。

日時
2020年1月22日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2019年12月19日(木)〜2020年1月12日(日)

講師プロフィール

山崎まどか(文筆家)

15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に2019年10月に刊行された『映画の感傷 山崎まどか映画エッセイ集』(DU BOOKS)『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)等。

山口博之(ブックディレクター/編集者)

good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで、幅允孝が代表を務める選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、ショップやカフェ、ギャラリーなど様々な場のブックディレクションをはじめ、広告やブランドのクリエイティブディレクションなどを手がけ、その他にもさまざまな編集、執筆、企画などを行なっている。
https://www.goodandson.com/

垣畑真由(Silver編集者)

1995年生まれ。中学生の頃にアナログレコードと出会い、高校2年生から大学卒業までをレコード・ショップ、ディスクユニオンに勤務。音楽に出会ったきっかけでもある60s-70sROCKを始め、SOUL / FUNK / RARE GROOVE中心に収集している。現在はDJ・ミュージックセレクター、雑誌Silverの編集メンバーとして活動している。また趣味で製作しているZINE、「RAPTURE magazine」は不定期で発行され、今年5月にリリースした最新号ではBEAMS T・Sho Miyataらとのコラボレーションが実現した。