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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.19(選者:小谷実由さん)

2025.02.04

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回は、モデルの小谷実由さんが「Blooming Days -幸せ溢れる春の訪れ」をテーマに選びました。
ここ数年、世の中ではウェルビーイングの意識がぐっと高まっています。これまで“幸せ”といえば癒しやリラックスというイメージが主でしたが、最近では愛情や信頼感によって生まれる幸福感がより多く求められているのだそう。
この季節ならではの、幸せ溢れる世界観。それは、2冊のエッセイに綴られているような、日々のなかにあるささやかな愛情や信頼を通して広がっていくのかもしれません。

『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』著:安達茉莉子(三輪舎)

日々があっという間に過ぎていく中で、何一つどうでもいい選択はないと思っている。その時の気分で選択し、思いのままに流れるように生きる、そんな人生もいい。ただ、見て見ぬふりをしながら日々を過ごすことは、自分自身との信頼関係に関わることなんじゃないかと思う。見逃してることって実はたくさんある。でもいつだってそれらを拾い上げていくことは手遅れなんかじゃない。

作家であり文筆家の安達茉莉子さんの、タイトル通り彼女の生活が華麗に変化していく様子が描かれたこちら。ある知人が口にした「生活改善運動」という言葉。彼女はそれを自分にとっての心地よさや、快・不快を判別しながら、より自分が幸福な方へと生活を改善していく運動と解釈した。家を選ぶところから、日々目の前に現れる衣食住まで、彼女の感じるままに、気持ちのいい方へと突き進めていく。何もできていないことで落ち込んで立ち止まるなんてもったいない。大切なのはできた後にどんな素敵な景色が広がるかを想像すること。そんなことを続けていけば、自分との信頼関係はとても穏やかになり、自身と共に歩む生活をきっと今よりもっと愛せるはず。

『これが生活なのかしらん』著:小原晩(大和書房)

毎日を丁寧にゆっくりと過ごせなくても、この匂い、この時間、この景色、そんな自分の心の目に留まったものを忘れたくない。そんなものたちが自分に与えてくれるものは過去の記憶かもしれないし、新たな発見かもしれないし、言葉には表し難い身体の奥から湧き上がる感情かもしれない。誰でもない自分でしか手にすることができないあの体験に、誰か名前をつけて欲しい。

作家の小原晩さんによる、きっと誰にでも「この感じ、知ってる」と思わせてくれるような“ほのおかしい”日々が綴られたエッセイ集。彼女の生活はくるりくるりと変化していく。ひとり暮らし、三人暮らし、実家暮らしに寮暮らし、そしてふたり暮らし。誰といても、彼女の心の目に留まるものには全てきらりと小さな光を放つものがある。彼女の日々を眺めていると、一見なんでもないと思って退屈に感じてしまいそうな自分の日々にもそんな光が隠れていそうな気がしてくる。

小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


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