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新鮮な郡山ブランド野菜が彩る、「ご自愛ごはん」料理体験イベント

2025.02.21

2025年1月25日(土)、ルミネ大宮のABCクッキングスタジオで「旬のお野菜を使ったシンプルでおいしい料理体験 〜心と体を満たすご自愛ごはん〜」が開催されました。

ルミネ大宮では、サステナブルなアクションとして、特に地域社会との共生やさまざまな地域の魅力発信に注力しています。大宮駅は東北の玄関口となる場所。本イベントは、大宮からつながる地域のおもしろみを知っていただける機会として企画されました。

大宮出身の料理家・管理栄養士である長谷川あかりさんと、福島県郡山市にある鈴木農場代表の鈴木光一さんによるトークショー、鈴木農場で収穫された新鮮な郡山ブランド野菜を使い、長谷川さんが考案したレシピでつくる料理体験の二部構成で実施。参加された17名のみなさんは「見て」「聞いて」「つくって」「味わう」ことのできる貴重な時間を楽しみました。

「料理は楽しい」というメッセージを伝えたい

まずは「なんでもない日を幸せにする、シンプルで豊かなごはん」をテーマに、自己肯定感のあがるレシピを発信している長谷川あかりさんのトークからスタート。

料理家になったきっかけについて聞かれると、「料理はおいしいだけでなく、周りの人が喜んでくれる。それに、目の前の作業に集中することで自分の心の栄養にもなることに気づいたんです」と振り返った長谷川さん。「料理は気持ちが満たされるし、楽しい」と語ります。

「ただ、日常生活では、やらなければいけないタスクのになかに料理が入ってくる。そうすると純粋に料理を楽しめないというのはわかります。だからこそ、レシピという観点から、気持ちを底上げしていきたい。そこにこの仕事のやりがいを感じていますし、これからもチャレンジしていきたいです」と、長谷川さんが発信する自己肯定感の上がる“ご自愛ごはん”への想いを伝えてくれました。

普段、SNSを中心に情報を発信し、Xのフォロワーは36万人以上という長谷川さん。情報発信の際にこだわっていることについて聞かれると「日本語の選び方」と話してくれました。

「ネットはちょっと大げさな表現のほうが届きやすいんです。たとえば『これを食べたら確実に痩せます!』とか……。でも、誤解を与えるようなことがあってはいけないので、私はできるだけフラットな表現を心がけています。ただ、たとえいいレシピをつくったとしても、届けるべき人にきちんと伝わらなければ、私がやりたいことを叶えることはできませんから、誠実な表現のなかでどうわかりやすく伝えるかということは普段からすごく考えていますね」と語りました。

農家もお客さまと会って話すことが大事

続いて、郡山ブランド野菜をはじめとした年間350品目の野菜を育て、地域の種苗店としての顔も持つ鈴木農場・鈴木光一さんのお話へ。

お客さまと対面して販売することを大切にし、最近ではルミネ荻窪やルミネ町田、ルミネ横浜などでのマルシェに出店することも多いという鈴木さん。「お客さまのお顔を見て、話をすることは大事なんだなとあらためて感じます。なにより、すごく楽しいですね」と笑顔で語ります。

また東日本大震災以降、鈴木農場の畑で「フードキャンプ」を実施しているといいます。震災で福島県産野菜への風評被害が広がってしまったとき、「生産者と会って話をすることで親近感を持ってもらいたい」、そしてなにより「野菜が安全であることを知ってもらいたい」という思いを抱き、企画がスタートしました。

「自分の職場を人に見られるのは好きじゃなかったんですけどね(笑)。フードキャンプでは、採れたての野菜を使った料理を振る舞うほか、畑に寝転がってもらい、野菜の気持ちになってもらうこともあります」と、笑顔で話す鈴木さん。参加者の方もフードキャンプの話に興味津々といった様子でした。

ほかにも、月2、3回ほどファーマーズマーケットに参加しているという鈴木さん。さまざまな対面の機会を設け、消費者とのつながりを大事にしていることが伝わってきました。

料理体験で使用した郡山ブランド野菜とお米

おいしくて栄養価の高い、郡山ブランド野菜

福島県産野菜への風評被害に対するもうひとつの対策は「おいしくて、栄養価の高い野菜をつくること」でした。そして生まれたのが、栄養豊富な土壌と、夏は暑く、冬はマイナス10℃にも達する寒い気候で育った「郡山ブランド野菜」です。

鈴木さんの取り組みは消費者や飲食店にも知られるようになり、ブランド野菜としての地位を少しずつ確立。その成果もあって、2024年9月には、福島県内の農業の発展、生産技術の向上などで功績があった団体を表彰する県農業賞の最高賞・農林水産大臣賞を受賞しました。「鈴木農場はお客さまに直接販売しています。そのときに、ちゃんと野菜の安全性やよさを伝えれば、わかってくれる人が多かったというのが印象的でした」と鈴木さん。

最後に、2025年の抱負を聞かれた鈴木さんは「農業を始めて40年。まだ40回しか野菜をつくっていません。だからこそ、まだまだおいしくつくれると思うので、もっときわめていきたい」と力強く話します。また、消費者の方に畑の様子をもっと見てもらうため、畑見学の機会を増やしたり、楽しめる企画を考えたりしたい、という思いも語りました。

長谷川さんは2025年の抱負について「レシピを通してみなさんに貢献していきたい」と、これまでと変わらない想いを胸に歩むことを宣言。さらに、料理の魅力を伝えるために「みなさんと顔を合わせて一緒に料理をする機会をもっとつくれたらうれしいですね」と、笑顔で語ってくれました。

トークショーのあとは、いよいよ料理体験がスタート

見て・聞いて・嗅いで・食べて楽しい料理体験

トークショーが終わると、お待ちかねの料理体験へ。調理するのは「にんじんとローズマリーの土鍋炊きごはん」「さつまいものせいろ蒸し 柚子味噌豆乳ソース」「キャベツとネギのクミンスープ」の3品です。郡山ブランドの芯まで甘いキャベツ「冬甘菜」、柿のような甘味の「御前人参」、しっとりとしたスイーツのようなサツマイモ「めんげ芋」、冬の寒さで糖度が増したネギ「ハイカラリッくん」を、ふんだんに使います。

まずは長谷川さんによるデモンストレーション。「郡山ブランド野菜は焼くだけ、蒸すだけでもおいしいです。今回は香りや塩味を少し加えることで、ワンランク上の味わいにすることを心がけました。もちろん、どれも手軽にできますよ」と、調理の手を動かしながら、今回のレシピのポイントについて話してくれました。

真剣な眼差しで、長谷川さんの様子を見つめる参加者の方々。ポイントとなる工程をスマートフォンで撮ったり、書き留めたり、料理野菜の下ごしらえや火加減について質問をしたりする人もいました。そして、料理が仕上がってくると、おいしそうな匂いが会場に漂い始めます。

できあがった料理

食のプロたちと料理をつくる、リアルイベントに大満足

デモンストレーションが終わると、参加者のみなさんは4人1組に分かれて調理をスタート。簡単に自己紹介をして、分担を決めると、手順通りにテキパキと作業を進めます。時に談笑を楽しみながら、時に食材の香りにうっとりしつつ、終始和やかな雰囲気。長谷川さんも各テーブルをまわり、質問に答えたり、アドバイスをしたりと、コミュニケーションを楽しんでいました。

料理が完成すると、いよいよ試食へ。「どの野菜も甘い!」と、郡山ブランド野菜の味わいに驚く声もあがりました。試食が終わると、鈴木さんが少し緊張した面持ちで「おいしかったですか?」と参加者の方に質問。笑顔で答える参加者たちに、鈴木さんも思わず表情がほころんでいました。

こうして、約3時間のイベントはあっという間に終了。参加した方は「トークショーだけというイベントは多いですが、会話をしながら実際に料理をつくるリアルイベントは珍しくて、とてもよかったです」と、満足した様子でした。

そのほか「長谷川さんが『料理の手間を省くには生産者の美味しい野菜を選ぶことがコツ』と話し、タイムイズマネーならぬ“タイムイズベジタブル”説を唱えていたのが印象的でした」という声や「震災による風評被害があったにもかかわらず、こんなにもおいしい野菜をつくり続けてくださったことに感動と感謝です」、「鈴木さんが、もっとおいしいブランド野菜をつくろうと知恵を絞ったことがすばらしい」といったコメントも。ふたりの仕事にかける想いと料理の魅力、そして郡山ブランド野菜のおいしさが伝わる、素敵な時間となりました。


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