「外苑前」駅から徒歩6分。わき道にひっそりたたずむ一軒のギャラリーを併設した花屋「VOICE」に、見るも珍しい雑誌の数々が販売されていました。12月講座で講師を務める高山かおりさん主宰の、国内外の個性的な雑誌を販売するオンラインストア「Magazine isn’t dead.」のエキシビジョンです。高山さんの記憶には今も幼い頃の雑誌との出会いがかすかに残っていることを、話しはじめてくれました。

雑誌と育った幼少期のときめき

4歳のときに通っていた保育園で『こどものとも』という雑誌を見つけました。それを読むことが通う楽しみになったんです。小学校に入学してからは、『小学一年生』シリーズを定期購読して、すっかり、雑誌が好きになりました。あのシリーズには、漫画があり、勉強ページがあり、女の子向け、男の子向けのページがあって、本当に雑誌そのもの。

北海道の音更町という田舎で育って、近所の本屋さんが定期購読する雑誌を自宅まで届けてくれていました。毎月、届くのが楽しみで。東京とは違って、3日遅れでくる発売日まで待ちきれない。テレビCMを見かけるたびに、「まだ入荷しないかなぁ」って思っていたんです。

小学校5年生のときには、『nicola』というファッション誌も読むようになって。「ファッションの仕事がしたい」という気持ちが芽生えました。高校を出て、専門学校に進んだ頃には、「将来自分のお店を持ちたい」と思ったんです。まずは修行しようと、aquagirlというセレクトショップで販売員として働きはじめました。

人に伝える喜びを知った社会人の私

ルミネ新宿の店舗に勤務して、立川、池袋と移っていく中で、販売員として表彰される機会にも恵まれました。その期間に、自分が魅力を感じる商品を人に伝える楽しさがわかったんです。5年経って退社することにしたんですけど、次に働きたいと思っていた古着屋さんはどこも求人が出ていなくて。

進路に悩んでいる時に、ある書店で感動する出来事を体験しました。ズラッと陳列されている雑誌が迎えてくれて、雑誌が好きだったことを思い出したんです。それで、その書店の採用試験を受けて、雑誌担当として働くことになりました。書店勤務の頃は、慕う上司からいろんな本や雑誌を紹介してもらって、海外雑誌も読むようになって。

雑誌を売る仕事をずっと続けていきたい。でも、ほかに働きたい場所は探しても見つからない。6年勤務して、契約期間を終える1ヶ月前にそんな気持ちでいた私が思いついたのが、今、取り組んでいる「Magazine isn't dead.」だったんです。

かつて販売できなかった雑誌こそ伝えていきたい

もっと接客に力を入れたい、陳列しておくだけでは人に伝わることが少ない好きな雑誌の数々の魅力を伝える人になりたい。雑誌を選ぶ人にとって、背中を押してくれるようなきっかけをつくりたい。そんな私の気持ちに、いろんな人が力を貸してくれて、このオンラインストアができました。

Magazine isn’t dead.では、自分の好きな雑誌だけを世界中から集めています。いろんな事情で日本に入ってきづらいような雑誌でも、個人だからこそ仕入れることができるかもしれないなと思って。そうやって、あまり見かけないけど魅力的な雑誌をそろえていったら、面白いんじゃないかと思ったんです。

プレオープンから1年経った今でも、雑誌選びの基準は書店勤務の経験が大きく影響しています。売れるもの、売れないものの傾向はありますが、それを基準に以前なら「これはあまりたくさんの数を売ることは難しいかな」と思った雑誌も仕入れをしています。それは、数冊単位という小さな規模で仕入れをできるからです。

やっぱり雑誌が好き

やっぱり雑誌が好き

講師:高山かおり(「Magazine isn't dead.」主宰・ライター)

12月講座の講師は、国内外の雑誌を販売するオンラインマガジンストア「Magazine isn't dead.」を主宰している高山かおりさんです。高山さんが厳選する、つくり手のこだわりが伝わる雑誌の紹介をはじめ、なぜその雑誌を選び、どこに注目しているのか、高山さんの溢れる雑誌への愛情をたっぷりとお話していただきます。

日時
2019年12月18日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2019年11月14日(木)〜12月8日(日)

高山かおり(「Magazine isn't dead.」主宰・ライター)

独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead.主宰。販売だけでなく卸やセールスも手がける。本業はライター、編集者。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」にて5年間販売員として勤務後、都内書店へ転職し6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、あらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。主な連載に、ginzamag.com「Magazine isn’t dead.」、WWD JAPAN .com「雑誌と本を行ったり来たり」、リトルプレス『北海道と京都と その界隈』内のエッセイ「偏愛北海道」などがある。
【ウェブサイト】http://magazineisntdead.com/