2016.10.26
Report 1/3

ニットパーティーを楽しもう

講師:谷村佳哉(Giiton)

今回開催したのは、“ニットパーティー”!毛糸を束ねたふわふわの「ポンポン」でキーリングをつくるワークショップ。 講師は、日本や海外の手芸アイテムのオンラインストア「Giiton(ギートン)」のディレクターで、各地でさまざまなワークショップも行っている谷村佳哉さん。まずは、新たなムーブメントが生まれつつある手芸の“今”についての話からスタート。その様子をお届けします。

「ニットはセクシーで簡単で楽しくなければいけない」

お店「Giiton」のコンセプトは、「ENJOY imagination & creation」。ものづくりのある生活とその楽しさを提案する、編み物・手芸雑貨のショップです。昔からあるいわゆる手芸屋さんとちょっと違うのは、今のファッションや生活に合うアイテムを中心に取り揃えているところインテリアショップやセレクトショップなどでワークショップを開催することも多いそうです。

手芸や編み物というと年配の方がやるものというイメージがあって。今はブームなので若い方も増えてはきましたが、実際に購買層も年配の方が多いんです。でも、もっと若い世代、20代から40代の人でも、ものづくりをしたい人が多いはず。若い世代の人はどんなものだったらつくってみたいと思うだろう? ものづくりが好きだった人にも、これから始める人にも、ものづくりを楽しんでもらうにはどうすればいいだろう? ということが立ち上げの動機でした。ちなみに店名の「Giiton」は、機(はた)を織るときの音、ものづくりの音からとってるんですよ。

毛糸や編み棒、手芸キットを揃える中、中心的に扱っているのが、ロンドンのニットブランド「WOOL AND THE GANG」。アレキサンダー・マックイーンやバルマンを経たデザイナーが中心となって立ち上げたブランドで、従来の編み物のイメージを覆す高いデザイン性はもちろん、新しいビジネスモデルを成立させている点も面白い、と谷村さん。

「WOOL AND THE GANG」はファストファッションを否定しているんです。洋服はもっと誇りや愛を持って着られるものでなければいけないのでは? というところがその出発点。ニット製品と毛糸などの素材やキットを販売しているのですが、製品は工場の機械でつくったものではなく、世界各地にいるニッターさんが編んでいるんです。誰かが編んだ製品か、毛糸やキットを使って自分で編むかを選んで買うことができます。そういうローテクな商品を、インターネットをうまく使って拡散しているんです。そして、持続可能であること、環境やその仕事に関わるすべての人に配慮することを大切にしています。今日のワークショップで使う糸も、Tシャツ工場で出た端材をリサイクルしたもの。編み物をかっこいい文化にまで昇華させたブランドでもあるんです。

WOOL AND THE GANGを代表する毛糸の特徴は、糸が太いこと。その理由は「ニットはセクシーで簡単で楽しくなければいけない」という考えが根底にあるから。

初心者の方が編み物で挫折する理由って、細い糸を細い針で編むと全然進まないから。「何時間も編んだのに、これしか進んでへんやん」っていうところがあって。太い糸で編むと、それがないし、粗も目立ちにくい。だから挫折せずに最後まで編めて達成感も感じられます。

手芸の領域がどんどん広がる、海外の状況は?

「WOOL AND THE GANG」以外に、海外で人気があるブランドが、ニューヨーク生まれの「LOOPY MANGO」。こちらもファッションからアプローチした手芸ブランドで、毛糸も編み棒もさらに太いのが特徴です。この2つは数年前から韓国では大流行しているのだそうです。

以前は、編み物、ソーイング、刺繍、それぞれ明確にコミュニティがあったと思うんですが、今はその枠がすごく広がり、曖昧になってきていると感じます。紹介した2つのブランドもそうですが、インテリアやファッションなど、さまざまな分野から手芸に派生してきている。そういう面白い状況になっていますね。

谷村さんがもうひとつ取り上げたのは、「TECHNOLOGY WILL SAVE US」というブランド。こちらはテクノロジー系のDIYキットを販売しているロンドンの企業です。

たとえば、鉢植えの土に挿すガジェットをつくるキット。植物に水をやるタイミングを「喉乾いたんやけど」って(笑)、メールで教えてくれるんです。海外のキットには、シャレが効いた、攻めてるものがたくさんある。ロンドンのリバティ百貨店の手芸売り場とか、海外の手芸屋さんを回っていろいろ見てみると、絶対日本にないやろうなっていう、面白いものが見つかったりします。

スライドで見せてくれたのは、オリンピック選手のあみぐるみや、ありえないほど巨大な編み針、「パーフェクトボーイフレンド」という名の編みぐるみのキットに、パンツづくりのキット……。日本にはない面白い手芸用品を見つけるのも、海外の手芸屋さんを巡る楽しみのひとつ。

ものづくりを通して、コミュニケーションが生まれる

次は、個人的に好きだという日本の手芸の動きについて。実際に参加したことがある、お気に入りのワークショップを教えてくれました。そのひとつが「押忍!手芸部」。ファッションデザイナーの石澤彰一さんが率いる、さまざまな場所でワークショップを行っている手芸グループです。魅力は、「型紙をつくらない」「まっすぐ縫おうとしない」など、活動方針のユルさ。

「押忍!手芸部」の、「ロボぐるみ」をつくるワークショップに参加したことがあるんです。歩いたり鳴き声を出す犬のおもちゃがありますよね。その外側をはがして、代わりに自分の好きな布を貼るという内容なんですが……。写真右が、私のつくったロボぐるみです。すごく評判が悪くて、気持ち悪すぎる、夢に出るからやめてほしいって言われました(笑)。スイッチを入れると動いてワンワンって鳴いて、たしかにめっちゃ怖いんです。でも、つくってる最中はすごく楽しくて。

実用的でかっこいいものももちろんいいけれど、役に立たないものでも楽しんでつくることが大切。手芸は、それぞれがそれぞれの目的で楽しめばいいというのが、谷村さんの考え方。「ひとり黙々と編むのもアリだけど、みんなでワイワイ楽しんでほしい」。ということで、いよいよニットパーティーがスタート!

色とりどりの毛糸をつかって、世界にひとつだけのポンポンづくり!

ワークショップで使用したのは「ポンポンメーカー」、その名の通りポンポンをつくる器具です。そして各テーブルに用意されたのは、色とりどりの毛糸。まずは色選びから、「みなさんここが一番時間がかかるところですね。1色でもいいですし、組み合わせてもOKです」と谷村さん。

いきなり洋服を編もうとすると大変なので、最初は帽子やマフラーなど、比較的簡単にできそうなものから始めるのがおすすめです。キットを使って手軽につくるのもいい。今日つくるポンポンは、初めて毛糸に触れる方にはちょうどいいのではないでしょうか?

選んだ毛糸をポンポンメーカーにきれいに巻き付けたら、ハサミでカット。最後にきゅっと糸で結べばできあがり。谷村さんが各テーブルを回ってアドバイスする中、参加者のみなさんはおしゃべりを楽しみながらポンポンづくりを体験しました。

完成品がこちら。色も大きさも人それぞれ、手づくりならではの、世界にひとつだけのポンポンのできあがり。みなさん、さっそくバッグやスマホにつけて楽しんでいました。そして最後は、CLASS ROOM恒例の「谷村さんにとって、よい暮らしとは?」という質問。

生活していると、面倒くさい人に出会ったり、思ってもみなかったハプニングが起こったりしますよね。そういうことも含めて、全部を面白がることができる暮らし方がいい。編み物でも、失敗したらそれをどうかわいく見せられるか考えたりしますし。今日も、みなさんは一番好きな色を選んでポンポンをつくったと思いますけど、今は、ほかの色もすてきだなって思ってるんじゃないかな。つくってる間に次のワクワク探しをしている、ものづくりのそんなところがいいなって思います。

>>交流会の様子はこちら

谷村佳哉(Giiton)

Giitonとは「ENJOY imagination & creation」をコンセプトに、「WOOL AND THE GANG」をはじめとする国内外のものづくりに焦点を当てた商品を取り扱う新たなカタチのライフスタイルショップ(清原株式会社が運営)。ものづくりする楽しさをたくさんの人と共有できるように、さまざまな場所でワークショップも行っている。
【ウェブサイト】http://giiton-store.com/

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