2018.12.19
Report 1/3

私が好きな、甘く、かわいく、おいしい贈りもの

講師:甲斐みのり(文筆家)

12月講座では、旅や散歩、お菓子に手土産、クラシック建築やホテル、雑貨と暮らしといった題材で、書籍や雑誌などに執筆している甲斐みのりさんを講師に招きました。贈り物をテーマに、甲斐さん自身がどのように贈り物のある暮らしを楽しんでいるのか。日常的に取り入れていることを教えていただきました。

好き。その気持ちをおすそ分けしたい

日頃から書くことを仕事にしている甲斐さんは、贈り物においても、書くことの大切さを実感してきました。それは、初めて贈り物をし合う友達ができた20代の頃から変わりません。

京都に住んでいた20代前半の頃に、京都の六曜社という喫茶店に通っていました。東京で住むようになっても、六曜社の奥野美穂子さんとお友達付き合いをすることができ、お菓子の文通をしたんですね。美穂子さんは京都からお菓子を贈ってくださる。私も東京からお菓子を贈る。その頃の私は、まだ品物を多く知らなかったけれど、いつも違う贈り物を差し上げたかった。
それで、美穂子さんに何を差し上げたのか、贈り物ノートを付けるようになりました。

美穂子さんと贈り物を交換し合う日々は、甲斐さんにとって楽しいことでした。贈り物をいただいてしまったからお返しをする、そういうことではなく、どちらから約束するともなく贈り合うことが楽しく、好きだったそうです。それは今でも、甲斐さんが贈り物のある暮らしを楽しむ基本になっています。

可愛い、美味しいなどと、好きという溢れんばかりの気持ちがあって、私はそれをおすそ分けするように贈り物をしています。だから、この気持ちをどうか受け止めてください、という想いだけなんです。

どれだけ可愛いか、どれほど美味しいか。好きなものを親しい友人、知人に伝えたい。そんな気持ちがあるから贈り物をしたいし、楽しい。甲斐さんの贈り物がある暮らしには、甲斐さん自身の好き、楽しいという気持ちが横たわっていて、暮らしとポジティブに接しています。

贈り物を渡す日常の魅力

甲斐さんが楽しむ、贈り物のある暮らしは、贈り合う瞬間だけに留まりません。贈る相手をよく知っていくことも、楽しい時間のひとつ。

旅先ではお土産や贈り物の販売店に通っていますし、スーパーマーケットのような場所で、可愛らしいものや美味しいものを探しているんです。贈り物をする相手のこともよく知るようにしていて、特に身近な方との会話には、耳をそばだてています。会話で、『カステラ好き』と聞いたら、その人はカステラというように覚えておきますよ。

頭でよく覚えられるようになるまでは、贈り物の相手のこともノートにつけていたんだとか。記録や記憶をストックしていくと、贈り物が日常とひとつに重なって、特別なことではなくなるようです。

甲斐さんの場合、日常で出会った可愛いものや、美味しいものは、贈る相手が決まっていなくても買い溜めしています。1,000円以下のカゴを用意して、箸置きのような生活雑貨や鰹節のような保存食品などを1度に複数個は買って、保存しているそう。

何も、菓子折りのように箱詰めされたものだけが贈り物だと思わなくていいんですよ。箸置きなら、2個セットで買っておくとお祝いとしても差し上げられますし、鰹節のような保存食であればストックしておすそ分けすることもできます。箱詰めされているお菓子でも、箱から開けて、ひとつずつ包み直して渡す。そのラッピングを自分でするのも楽しい。小さなお菓子なら、2枚の紙皿で挟んでリボンで止めたり、紙皿にドットマークを手書きしても可愛いです。

そんな甲斐さんの周りには贈り物好きな友達もたくさんいます。

友達同士で、お互いの好きなモチーフを把握しあっている相手もいます。私自身は、よく好きなモチーフを伝えるようにしていて、そうすると、友達は出先でそのモチーフを探すことが楽しめたりして、私自身も友達の好みの品物を探すことが楽しかったり。そんな贈り物の楽しさが、日常の何でもない日に溢れてくるから、贈り物好きな友達をつくることも大切かな。

自分だけの5つ星を見つけよう

贈り物を日常のそばで大切にする甲斐さんは、渡す相手にとって大切な瞬間を祝う際、ある工夫をして贈り物を差し上げていると言います。

結婚や出産といったお祝い用に、定番の贈り物リストを用意しています。京都にある有次の包丁や開化堂の茶筒、辻和金網の焼き網の3つから、友達に好きなものを選んでもらうんです。また、カラーバリエーションが豊富な贈り物を渡したい時は、代金と贈る相手の住所をお店に伝えておいて、相手に色を選んだらお店へ連絡してもらうようにもしています。

何もすべてを自分で決めてしまわなくてもいい。相手にとって、必要で、使ってもらえるようなものを贈りたいときに、選んでもらうというオプションを付けて、甲斐さんは贈り物をしているようでした。

講義の後半では、参加者の質疑応答に答えてもらう時間です。

Q.旅先でお土産を買う際も、事前にリサーチしていますか?

リサーチは365日いつでもどこでもしています。ただ、人伝が多いです。SNSはあまり見ていなくて、友達や贈り物を渡す相手から聞いたことで、良さそうだなと思ったことをメモしています。

Q.義理のお母さんがとても食べ物に厳しくて、何を贈ろうか悩みます。甲斐さんなら何を贈りますか?

こだわりの強い方への贈り物は、私もすごく難しいと感じてしまいます。例えば、無添加の食品であれば、DERBARのバームクーヘンはオススメです。お店の方自身、日本でいちばん体に優しいバームクーヘンをつくるとおっしゃっている方で、私なら、体に気をつけている方にそれを贈ります。

このように、甲斐さんは贈り物を差し上げる際、贈り物にまつわるエピソードも添えています。それは、甲斐さんが贈り物をするうえで意識していることのひとつです。

最後に、CLASS ROOM恒例の質問にも答えてもらいました。甲斐さんにとって、「良い暮らし」とは何でしょう?

加点法の暮らしです。インターネットの星評価は、人がつけたものですよね。だから、わたしには関係なくて、自分の星を自分で増やすようにしているんですよ。

>>交流会の様子はこちら

甲斐みのり(文筆家)

1976年静岡県生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。旅や散歩、お菓子に手土産、クラシック建築やホテル、雑貨と暮らし。女性が好んだり憧れるモノやコトを主な題材に書籍や雑誌に執筆。

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