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CLASS ROOM

好きなことと向き合って得られる、最高にリラックスした時間

2022.09.21

ルミネが運営する暮らしをもっと楽しむためのカルチャースクール「CLASS ROOM」。さまざまなジャンルで活躍するゲストを招いてお話を伺い、ルミネマガジンとYouTubeルミネ公式チャンネルで配信しています。
今回のゲストは、イラストレーターのReika Nakamuraさん。自分の感覚を大切に、言葉にならない気持ちを作品に込めて表現するReikaさんの、創作へのインスピレーションの源や、ワインやレコードなど、好きなものと向き合う暮らしについて聞きました。

>> インタビューを動画で見る:前編後編

最近取り組んでいるドッグシリーズの作品。Reikaさんの作品では、感情を持つ人や動物が多く描かれる。

体験から得たインスピレーションを描き起こす

―Reikaさんが絵を描くようになったきっかけや原体験を教えてください。

私は長崎県の出身で、海や山に囲まれて育ったのですが、子どもの頃から美しい風景や家族と行った場所の思い出などを写真のように記憶して、それを週末に作品として描き起こすみたいなことをしていました。絵を描くことで気持ちを表現できると思っていたんです。それはたまたま絵だっただけで、もしかしたら音楽になっていたかもしれないし、言葉にできていたらその日のうちに誰かに言っていたかもしれないんですけど、それができなくて絵になったのだと思います。

成長するにつれて少し絵から離れたこともあったのですが、大人になって社会に出てから、自分の中で整理できない思いなどが出てきた時に、また絵を描くようになりました。描くと気持ちが素直になったりスッキリしたりすることがあって、そこから改めて絵を描いていきたいと思うようになりました。


―絵を描いている時間というのは、Reikaさんにとってどういう時間なのでしょうか。

小さい頃から色が好きで、絵具や色鉛筆を使って「自分にはこう見えている」というのを表現するのが楽しくて描き続けてきました。今は音楽を聞いたりお香を焚いたりして、そこからテーマを決めて描いています。絵を描いている間は頭の中が空っぽになって、本当にリラックスしている時間だと思います。真っ白な紙にどんどん絵が仕上がっていって、描き上がったときは、走り抜けたような感覚になるんです。


―イラストを描くときのインスピレーションの源や、Reikaさんの作品に共通するテーマはありますか?

私の描く絵はメッセージ性が強いものが多いのですが、割と言葉からイメージして描くことがあります。小説の中のある言葉だったり、映画に出てきた忘れられないセリフだったり、あるいは歌詞からイメージがどんどん膨らんできたりもするので、やっぱり言葉がインスピレーションの源なのかもしれません。

本も映画も音楽も、カルチャーは全般的に好きなのですが、それをただ観たり聴いたりするだけで終わらせたくないという思いがあるんです。そこで得たものを自分なりに昇華して絵に起こすというのが、私の好きな作業なのかなと思います。

お気に入りのイラストやポスターなどが飾られるReikaさんのご自宅。デスクにあるのは10歳の頃に描いた作品。

「好き」という価値観と向き合いとことん掘り下げる

―たくさんのものや情報に溢れた世界の中で、好きと感じるものとの出会いや、「好き」という価値観をどう大切にしていますか?

私は、好きと思ったら「何で好きって思ったんだろう」と、その理由を追求する癖があるんです。例えば、このお店が好きだと思ったのは、そこに流れる音なのか、壁の色なのか、匂いなのか。そこで音楽が気になったとしたら、お店の人に何の音楽なのか聞いてみたりしています。解決したいという気持ちが、もしかしたら人よりも強いのかもしれません。あと、街の掲示板もよく見ますね。あらゆるものに興味はあるけれど、自分自身が何に引っかかるのかをまだまだわかっていないことも多いので、自分が何にビビっとくるのかを日々探しながら街を歩いている感じかもしれません。

価値観については、好きだけではなく、なんだかちょっと苦手だなと思う感覚もすごく大事にしています。好きも苦手も自分の感覚に引っかかるから出てくる感情なので、実はどちらも近い場所にあるような気もするんです。苦手だなというものに出会ったら、人の意見を聞いたりいろんな情報に触れて、自分の中に偏見があるかもしれないと考えてみたりしています。そうやって自分の思いを見つめ直していくことや、まず自分がちょっと引っかかっている、という感覚を大切にしています。


―苦手だと思っていたものが好きに変わった体験はこれまでにありますか?

初対面でちょっとうまくいかないかなという人がいたときに、実は自分自身の嫌なところが似ていたりするのかなと感じたことがありました。それを理解すると自分も直そうと思ったり、その人のことも理解できるようになったりして、出会った人とはうまく関係性を築いていけるようになったかなと思っています。

動物の気持ちを想像しながら人とセットで描くシリーズ。"Frozen time" - "凍った時間"(左)/"The sun will be ready" - "太陽はもうすぐ準備できます"(右)

―Reikaさんの作品にも登場するレコードやワインなど、好きなものをどう追求し、暮らしの中でどのように楽しんでいるのでしょうか?

ワインはもともと両親が好きで飲んでいたので、割と身近な存在だったんですけど、私自身が凝り出したのはレコードがきっかけです。音楽が好きでレコードをもっと楽しみたいという思いが出てきて、それも音楽を流すというよりも、音楽のソファーに座っているような感覚になるレコードが家でも聴けたらいいなと思ったんです。そうすると、レコードに合うのはワインとか、ゆっくり飲めるお酒かなと。そこからいろんなお店でワインにトライするようになって、飲んだワインのラベルもコレクションしています。最初にワインのラベルを見て、味を想像してから飲むのが楽しいですね。せっかくなら飲んだことのない味や、ちょっと変わったものに触れたいという気持ちが常にあるので、オーソドックスなものよりも、職人魂を感じるようなものに惹かれます。スペインワインとか、ちょっと一癖あるような、ラベルも味も香りもユニークな感じが好きなんです。

レコードも、ワインのラベルのようにジャケットがきっかけで好きになっていったのかもしれません。アメリカにいた時に、ブルックリンではレコードフリマみたいなものが結構あって、そこでジャケ買いしたり、古いレコードを買ったりもしていました。レコードのジャケットを描くのは大きな夢の一つだったのですが、今度イギリスで発売されるOMOCHIさんという日本人アーティストのジャケットを描かせていただいて、それはとても嬉しかったです。


―絵を描くときのリラックス感と、音楽やワインに身を委ねながらリラックスする時間はご自身の中でどのように区別していますか?

絵は自分1人の世界で内面と向き合う作業なので内向的な時間ですが、ワインは友だちや家族と飲んでそれぞれの話を聞いたりする、外向的な時間かなと思います。そういう違いはありますが、それぞれ、どちらもすごく好きな時間です。

レコードコレクションの中にはReikaさんがジャケットを担当した作品も。

居心地の良さを追求した先にある、良い暮らし

―好きなものと深く向き合って好奇心や世界が広がっていくことは、Reikaさんの暮らしや創作にどう影響していますか?

好きなものを追求していった先にまた次の好きなものがあったりと、全部がつながっていくような気がしています。それまで自分が全く触れてこなかったカルチャーだったりすると、その分野の詳しい方のお話を聞いたりブログを読んだりするだけでも、新しい言語を覚えているみたいで、とても知的好奇心が湧いてきます。

そういう新しい言語である好きなものを作品の中にモチーフとして登場させるのは、見てくれた人にとっても、今まで言語化できなかったけどあれはこういう気持ちだったのかなとか、そんな風に思ってもらえたらいいなと。ちょっとかゆいところに手が届くような絵が描きたいと思っています。また、ストーリーのある絵というのが私の大きなテーマでもあるので、一枚の絵から会話が聞こえてきたり、流れる涙の音が聞こえてくるような、見ている人の気持ちがスッと入れるような絵を目指しています。


―Reikaさんにとっての良い暮らしとは?

自分の居心地の良さをとことん追求することなのかなと。自分がこの状態だとすごく落ち着くなとか、リラックスできるというのをいつも考えて追求していくこと。本当に自分をいたわってあげることで、全ての気持ちに余裕ができて、良い暮らしにつながるのかなと思います。

Reika Nakamuraさんおすすめの、暮らしをもっと楽しくしてくれる一冊

『KYOKO』著:村上龍(集英社)

「KYOKOという女性の、自身の内なる衝動を大事にし、流れてくる運命の波を大事に掴む姿が心を打つ作品です。周りの指標ではなく自分が感じた情熱を大切にし、実際に行動する、そして当時忌避されていたエイズになってしまったホセに対して、偏見なくフラットにひとりの大切なひととして向き合うKYOKOが、わたしの理想の女性像です。」

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<プロフィール>

Reika Nakamura(イラストレーター)
1991年長崎県出身。現在、東京都在住。
明治学院大学 国際学部を卒業後、インテリアメーカーの海外営業を経て、18年フリーのイラストレーターへと転身。現在、企業広告やアーティストグッズの制作等を中心に活動中。
https://reikanakamura.com/


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