2017.6.21
Report 1/3

走る入門

講師(モデレーター):上田唯人(走るひと編集長)
ゲストスピーカー:ベイカー恵利沙(モデル/スタイリスト)

「走ること」に関わる人の個性や内面を深掘りする “異色のランニングカルチャー誌”として、20代・30代を中心とした読者からの熱い支持を受けている雑誌『走るひと』。今回のCLASS ROOMでは、編集長の上田唯人さんが講師を、同誌でスタイリングを担当するモデル・スタイリストのベイカー恵利沙さんがゲストスピーカーを務め、『走るひと』の制作裏話や、ランニングを楽しむコツをたっぷりと教えてくれました。その様子をどうぞ。

ライフスタイルとしての走ること

「ランニング専門誌は世の中にたくさんありますが、そのほとんどがハウツー本なんです」。『走るひと』は、これまでのランニング専門誌とは違い、ファッションや音楽といった切り口から入ることで、ランニング初心者でも楽しめるきっかけになるような1冊にしていると上田さんは話します。

メインの企画は、ミュージシャンやアーティストなど、さまざまな分野で活躍されている方へのインタビュー。毎回、一緒にランニングしながら話を聞いています。走りながら聞くと、みんな打ち解けて本音で話してくれるんです。そして、もうひとつは、「走る〇〇」という企画。この〇〇には、「銭湯」「ねこ」「テクノロジー」など、一見ランニングとは関係がなさそうに思えるキーワードを入れています。 “走る”というキーワードだけだと、速く走る方法とか正しいフォームといった専門的なことに終始してしまいますが、まったく別のものとうまく掛け合わせれば、新しいカルチャーとして広がりが生まれます。(上田さん)

「走る○○」の中でも、特に力を入れて取り組んでいる企画のひとつに「走るファッション」があります。ビジュアル的にも入りやすいファッションと、走ることを掛け合わせることによって、「ランニング=辛いこと」という、体育や部活で刷り込まれてしまった印象を変えたいと上田さんは考えているそうです。企画がスタートしたのは『走るひと』2号。以来、毎回テーマを変えてファッション企画を続けてきましたが、常に意識しているのが、“5キロ走れるリアリティ”。

一般的な雑誌のスポーツファッション特集では、細くて少し不健康な印象のファッションモデルが服を着ています。確かにファッションとしては美しいかもしれないし、モードでもある。でも、なんだかスポーツとしての躍動感や覇気がなくて、走りたくなるマインドとはかけ離れたものが多かったんです。だから『走るひと』では、ちゃんと走っているひとに登場していただいて、スタイリングも、少なくとも5キロくらいは問題なく走れる機能性があるものにする、それを大前提に組み立てました。モデルさんにもファッションにも、「5キロ走れるリアリティ」を持たせようと思ったんです。(上田さん)

その「走るファッション」企画に、スタイリストとして関わることになったのがベイカー恵利沙さん。上田さんの誘いでフルマラソンにも参加していたこともあり、企画の意図をすぐに理解したそうです。誌面では、Chim↑Pomのエリイさん、水曜日のカンパネラのコムアイさん、E-girlsの須田アンナさんなどアーティストも登場。スタイリングはそのときどきで異なるそうです。

通常、モデルさんをスタイリングする場合は、雑誌として伝えたいテーマが明確にあって、それに合わせて私が提案した服をモデルさんに着ていただきます。だけど、コムアイちゃんやエリイさんは、普段からアーティストとして何かを発信している人たち。スタイリングといっても、単に私が服を選んで着てもらうのではなくて、一緒にスタイルをつくっていく感じですね。(ベイカーさん)

走る目的は、何よりも「楽しむこと」

上田さんもベイカーさんも、自らランニングを日常的に行っている“走るひと”。ベイカーさんがランニングを始めたきっかけは、「フルマラソン走らへん?」という上田さんの一言。はじめは2キロを走るのが限界だったベイカーさんも、練習を重ねて、今ではフルマラソンを5回も経験しているそう。そんなベイカーさんは、「『楽しむために走る』ということを知ってほしい」と話します。

「ランニングをしている」と言うと、雑誌のインタビューやInstagramのコメントで必ず「痩せましたか?」と聞かれます。「走る=ダイエット」というイメージが定着しているんですよね。それは、メディアでそういう取り上げ方ばかりしているから。そういう見方を変えたいという思いもあって、「楽しむために走る」という方向での発信を続けていきたいと思っています。(ベイカーさん)

今では、「mellows」というランニングチームをつくるほどランニングを楽しんでいるベイカーさん。そんなベイカーさんならではの、ランニングの楽しみ方も教えてくれました。

ひとりで黙々と走るのもいいけど、私は友人や仲間と走ることをおすすめしたいです。私はランニングチームのみんなと一緒に、深夜2時に渋谷を出発して築地に朝ごはんを食べに行ったりする企画をして、みんなで楽しく走っています。夜に走って飲みにいくとか、走ってご飯を食べに行くとか、走ったあとに楽しい予定を入れるのがおすすめですね。ランニングを続けるコツは、「走るのが楽しい!」って思えるようになることなんです。(ベイカーさん)

締めくくりに、CLASS ROOM恒例の「よい暮らしとは?」という質問に、上田さん、恵利沙さんのお二人が答えてくれました。

「目標」があると、生活に張りが出るのかなと思います。フルマラソンで4時間切ったからといって何かがもらえるわけではないけど、自分の中の充実感はすごく大きい。そういう、一見なんの意味もなさそうな目標でも、それを追いかけている期間って、ほかのことも含めて充実して、いい時間になると思います。目標を持つことを、楽しく暮らすためのツールとして捉えるといいんじゃないかな。(上田さん)


一言で言うと「自分を否定しないこと」。私自身、生きるのが辛いなぁなんて思っていたときは、いつも自分を否定していたんです。考え方が全部に表れてしまうんですよね。否定するのをやめたことで楽になったし、良い暮らしをするためにも大切なことだと思います。あとは、私は猫が大好きで、バディちゃんという猫と暮らしているので、その子と一緒に過ごす時間ですね(笑)。(ベイカーさん)

>>交流会の様子はこちら

上田唯人(雑誌『走るひと』編集長)

大学在学中にアップルコンピューターにてiPodのプロモーションに携わる。卒業後、野村総合研究所で企業再生・マーケティングの戦略コンサルタントとして、ファッション・小売業界を担当。2011年、1milegroupを設立し、様々な制作やメディア運営に携わる。14年5月、雑誌『走るひと』創刊。 タイムを縮める方法や最新ギア指南の解説が一切ない独特の誌面が“異色のカルチャー誌”として注目され、発売直後に各書店で売り切れ状態となるなど反響を得ている。講演やテレビ、また福岡マラソン2016の公式PRディレクターを務めるなど、スポーツとカルチャーに関わる分野で、様々な発信を行っている。
【Instagram】
https://www.instagram.com/yuito_ueda/


ベイカー恵利沙(モデル/スタイリスト)

1989年1月1日生まれ。オレゴン州と千葉県育ち。モデル、ファッションスタイリスト。雑誌『走るひと』にて「走るファッション」企画を担当。それ以降、様々な場所でスポーツファッションに関するスタイリングを手がけており、フルマラソンに5度出場するなど自身の経験に基づいたスタイリングには定評がある。またSNSで発信するライフスタイルが女性を中心に支持を集めるなど、ファッション、インテリア、ビューティー、ヘルスと幅広い分野に活躍の場を広げている。
【Instagram】
https://www.instagram.com/bakerelisa/

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