2017.10.22
Report 1/3

私だけのミックススタイルを楽しもう

講師:髙山エリ(スタイリスト)

2017年10月22日(日)、ニュウマン新宿5Fのルミネゼロで開催された講座「私だけのミックススタイルを楽しもう」。講師を務めたのは、同時開催された「LUMINE ZERO MARKET」にも出展した、スタイリストの髙山エリさん。今回は、講義のレポートと合わせて、イベントの様子をお届けします。

リアルなファッションに、非日常をちょっとミックス

講座のスタートは、今回のテーマ「ミックススタイル」について。髙山さんは今回どんな服を着るか、かなり真剣に考えたのだそう。そして考え抜いた末に選んだのが和服。「洋服」については着たり考えたりする機会が多いので、今回はせっかくだから日本の服を、とセレクトしたと言います。そんな髙山さんの服選びの基準は……。

その日の気分ですね。仕事でスタイリングを組む際もガチガチには決めない。8割は決めていくのですが、実際に着る人に会ってみて、残りの2割はその人の気持ちや好みを尊重したいから。ファッションとはこういうものだ!というやり方はあまりしたくなくて。仕事でもそうだし、自分の服もその日にならないとわからないんです。結婚式に呼ばれて着ていこうと決めていた服があったのに、当日嫌になって、新宿中を走り回って服を探したこともありました。

髙山さんによれば、スタイリストといってもさまざまで、ファッション誌、広告、映画にドラマと、メインとしている分野はそれぞれ。内容によってタイプも意見も異なるのだそう。髙山さん自身は、ファッション誌でのアシスタント活動を経て、映画やドラマの現場に呼ばれるようになり、現在ではMVや広告を含め多彩に活動しています。その基本的なスタンスは「リアル」であること。

いろんな仕事をしているけれど、結局やっていることは同じだなと思っていて。たとえば、洗剤のCMでお父さんが無地のセーター1枚だけ着ているとリアルすぎるじゃないですか。そうではなくて、リアルだけどかわいい、真似できるのかできないのかという、ギリギリのところにいつもいたくて。私の服装も意外と普通なんですよ。実はベーシックなものがすごく好き。そこに、たとえば色合わせやスタイリングでちょっとだけ変えていく。ファッションは夢があるものだと思うから、夢というか非日常的なものをいつもミックスしたいなと思っています。

人真似ではなく、自分の“軸”を持ってほしい

スタイリストになるまでの経緯や、ビジネスとファッションの関係、最近の若者のマナーについてなど、さまざまな話題を話してくれた髙山さん。最近は「お洋服を買いに行くときのドキドキが少なくなっている」と言います。その理由として、みんなが同じようなお店や服をつくる社会になっているからだと考えているそうです。

他人のあれこれに振り回されずに、ちゃんと軸を持つことが必要だと思います。まずは自分でしっかり考えないと。そして、最近特に感じるのが、仲間を増やすことの大切さ。仲間を増やすというか、同じ気持ちを持った人たちと真面目にコツコツやっていく。私、「真面目にコツコツ」って書いて部屋の壁に貼っていて(笑)。いきなり思い立ってバンとやっても続かないでしょう。今はみんなSNSをやっていて情報があふれているから、いろんなことに手を出したくなるのかもしれませんが、それでうまくいくことは少ないと思いますね。

髙山さん自身はSNSを始めたのは最近のこと、調べ物などで便利さを実感してはいるものの、違和感もあると言います。たとえば、SNSで知ったアイテムを買いにお店に出かけても、目当てのもの以外にはまったく目を向けない人もいます。情報だけに振り回されて好奇心を失っていては、ただの“モノマネ”になってしまうのでは、というのが髙山さんの考え。

やっぱり好奇心をもっていろいろなことに目を向けないと、おしゃれにはなれないと思います。ファッションじゃなくてもそう。仕事で上司から指示を受けて、言われたことをやるのは当たり前ですけど、状況が見えていれば、これもやったほうがいいのかなって気付けるじゃないですか。上司だって一から十まで指示できるわけじゃないですから。すべての物事に対して視野を広く持つとか、周りの人に気配りや優しさや愛情も持てるかどうか、それだけだと思うんです。

暮らしは、ファッションと周りの人で成り立っている

講義の終わりには、質疑応答の時間も設けられました。寄せられた質問はファッションに関するもの。「よく行くお店は?」という問いには、「個性が際立っているお店」として、青山のル・シャルム・ドゥ・フィーフィーエ・ファーファー、ランプハラジュク、古着屋のオトエ、ボーイ、ミキリハッシンなど、いくつも店名を挙げて答えてくれました。

その日の気分によって、探しものの内容によってあちこち出没しています。調べて探すこともありますし、雑誌で見たり人から聞いたりして気になっていて、ふと思い出して行ってみたりすることも。知らない道を歩くのが昔から好きで、偶然見つけたお店に入ることが多かったですね。そういうことを積み重ねてきました。

もうひとつの質問は「好きな洋服のスタイリングは?」というもの。髙山さんはワンピースのように1枚で完結している服が好みだったり、トラディショナルなものにひとつくらいはずす感じのスタイルがお気に入り。「料理で言えばお出汁」のような、ベーシックな白いシャツやタートルネック、あるいはこの日着ていた着物など、クラシックなものを大切にしながら、それを強いひとつのアイテムで壊しにいく。ちょっとしたひねりで自分らしさを見せていくのが、髙山さんのスタイリング。最後に、そんな髙山さんにとっての「いい暮らし」とは? という質問をしたところ、こんな答えが。

率直に言うと、どうして「いい暮らしとは?」って聞かれるのかなって思いました(笑)。暮らしって何なんだろう……。一般的には暮らしの中にファッションが入っているじゃないですか。でも私の場合は、ファッションありき。ファッションと周りにいてくれる人がいるから私の暮らしは成り立っているんだなと思うんです。だから、それがなくなったら、たぶんもう死んじゃいますね(笑)。

>>同時開催イベントの様子はこちら

髙山エリ(スタイリスト)

文化服装学院卒業後、2007年よりフリーのスタイリストとして活動。2015年にはNHK連続テレビ小説「まれ」の衣装スタイリングを担当し、雑誌やMV、広告、映画など活動は多岐に渡る。2016年からはセレクトショップ「ハウス@ミキリハッシン」にてウィメンズのセレクトを監修する。
ウェブサイト:http://takayamaeri.com

TOPへ戻る