2017.12.13
Report 1/3

ワンプレートアートの楽しみ方

講師:たかはしよしこ(フードデザイナー)

今回は、西小山のフードアトリエ「S/S/A/W」で、「エジプト塩」などオリジナル調味料の製造・販売、ケータリング、レストランの営業を行っている、フードデザイナーのたかはしよしこさんの講座を開催。さらに、全員が参加して「お野菜盛り付けバトル」も行いました。その様子をどうぞ。

エジプトへの妄想から生まれた万能調味料

はじめはケータリングを中心に行っていたたかはしさんがフードアトリエ「S/S/A/W」を構えたのは2012年、ケータリングで好評だった万能調味料「エジプト塩」が発売されたのもこの頃。さらに子どもが生まれたことを機に、それまで予約制・ディナーのみだったところを「エジプト塩食堂」としてランチ営業に変え、「エジプト塩」に続きオリジナル調味料も製造するようになりました。その名前から、現地で親しまれている調味料かと思いきや……。

実は私、エジプトに行ったことがないんです。おいしそうな食べ物やスパイス、街の匂いなど現地の話を姉から聞いたときに、わーっと妄想が広がって。それから研究と開発を重ねて生み出しました。スパイスやナッツを加えて、ひとつで満足できる調味料に仕上げています。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、年代を問わず人気なんですよ。いつかエジプトの人にも食べてもらうのが私の野望です(笑)。

エジプト塩の人気は口コミで広がり、3月14日にはレシピなどを紹介する『エジプト塩の本』(美術出版社)から出版されることになりました。またそれ以前にも、21_21 DESIGN SIGHTで開催された「雑貨展」への出店をきっかけに、『S/S/A/W ZAKKA』という本を出版したことも。登場するのは器やキッチンまわりの小物など、たかはしさんの活躍は料理だけにとどまりません。

たとえば陶芸家・鹿児島睦さんの器。動物や植物の柄が海外でも人気で、料理を盛り付けると自然物と自然物とが響き合うようですごく楽しい。私の食堂をイメージしてつくってもらった黄色いピラミッド皿もお気に入りです。それから、八木麻子さんのつくるガラスプレートもすてきですね。ほかにもホーロー看板を裏返して、お皿をつくってもらったこともあります。

おいしい瞬間は、ごはんと空間が一緒につくるもの

実は食に関わる前、たかはしさんはインテリアデザインの会社で働いていました。そこで家具や空間といった“大きなもの”を扱ううち、もっと“小さなもの”、「食卓」やお皿の上の「料理」の魅力に気づいたのだそうです。食とインテリアは通じるところがある、とたかはしさん。

おいしい料理を食べたときのうれしい気持ちって、味だけじゃなくて、その瞬間を一緒に過ごす人や空間、器や盛り付けが一体となってつくり出すものだと思う。すてきなお皿で料理が出てきたらテンションが上がりますよね。それに、今日みなさんと一緒にやる「盛り付け」も、いわば器の上の空間を考えるということですから。

お話のあとは、いよいよ「お野菜盛り付けバトル」がスタート。各テーブルには25種類の野菜と、「エジプト塩」「富山コンカリー」「アルル塩」、そして、この日のためにつくった特製ロメスコディップが用意されました。紫しぐれ大根、黒大根、紅芯大根、ラディッシュと、大根だけでも種類がたくさん。たかはしさんのアドバイスのもと、参加者のみなさんが自由に野菜を盛り付け、投票を行っていきます(その結果は次のページでご紹介!)。

私が盛り付けるときは、みずみずしくて力強い、季節の食材にポイントを置くことが多いですね。盛り付けって、洋服のコーディネートと似ているかもしれません。そういえば、今日は野菜をイメージしたワンピースを着てきました(笑)。いつもスタッフと盛り付けバトルをしていますが、負けるとけっこう悔しいですよ。みなさんもぜひ本気で楽しんでみてください。

仕上げのスパイスで、料理を都会的な味わいに

講義では、皆さんからの質問に答えて、おすすめの食材やスパイスを教えてくれました。たとえば冬におすすめの野菜はラディッシュで、フランスに行ったときに知った、生のままでバターをつけてじゃりじゃりの塩を振りかける食べ方がおすすめだそう。

スパイスは、料理をおしゃれにしてやろうという欲望で(笑)、最後の仕上げに使うことが多いですね。ちょっと高いけど、スープをつくるとき、お米を炊くときに、サフランを少量入れるだけで料理が華やかで都会的になるんです。それから、プチっと爽やかに香るフェンネルシードはサラダに。クミンは、ピーマンの肉詰めや野菜炒めにパラパラ入れるとエキゾチックな感じになっていいですよ。

最後にCLASS ROOM恒例の質問、「よい暮らしとは?」にはこんな回答をくれました。

大切にしているのは、1日3回の食事をないがしろにせず、楽しむこと。健康を崩して医療費がかかることを考えたら、食べ物にかけるお金は惜しまなくていいと思っていて。料理って面倒くさいことも多いけれど、その代わりに“おいしい幸せ”が返ってくるし、心も体も元気になる。それだけで人生が豊かになると思うし、落ち込んだときも立ち直りが早くなる気がします。

>>交流会の様子はこちら

たかはしよしこ(フードデザイナー)

料理家。フードデザイナー。フードアトリエ・S/S/A/W主催。生産者と食べる人の架け橋になるように心がけ、季節やテーマに添ったお料理を完全オーダーメイドで製作する。魔法の調味料「エジプト塩」「モロッコ胡椒」「アルル塩」「富山コンカリー」「チョコエ塩」の製造と販売も行う。「エジプト塩食堂」としても不定期で営業中。
ウェブサイト:http://s-s-a-w.com/

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