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聴いて味わう「おととめし」で、人のぬくもりに触れる30分間の旅へ

2021.06.30

2021年5月14日〜23日の期間、ルミネ新宿で販売された「おととめし」。それは、旅の音や声を聴きながらいただき旅気分が味わえるという特別なお弁当です。地域の魅力をお弁当に込めた人、受け取った人、そして、両者をつないだ人。それぞれの登場人物の言葉を交えながら、おととめしについて紹介します。

いつもの食事の時間を、豊かな旅体験に

おととめしは、3月に開催されたリモート旅「おうち旅ルミネ meets 最上」から発展した企画です。

>> 「おうち旅ルミネ meets 最上」のレポートはこちら

このときに登場いただいた最上の方たちに再び協力してもらい、最上ならではの食材を使ったお弁当がつくられました。

大きな特徴は、オリジナルの音声コンテンツを聴きながらいただくこと。そのコンテンツでは、神社の鈴の音、祭囃子、肘折温泉の水音など、最上の音が流れるなか、地元の人々がお弁当に入っている食材のことや地域の文化について語っています。

旅ルミネの担当である鈴木は、おととめしを企画したきっかけについてこう話します。

「気軽に旅行ができない状況になり、みんな旅先に思いを馳せるようになったと思います。実家に帰りたくても帰れない人もいっぱいいますよね。そんななかでも、身近なお弁当を通して、いつもの食事時間を豊かな旅体験にできたらいいなと考えました。

『音を聴きながら食べるお弁当』という真新しさに興味を持ってご購入いただいた方も、実際に体験してみたらすごく温かな気持ちになれる。そんなゴールを目指して、最上の人たちのぬくもりや、そこに息づく暮らしを感じられるようにしたいと思ったんです」

最上の知られざる食材を届けたい

おととめしの背景を語るうえで欠かせないのが、おうち旅ルミネにも協力いただいた吉野敏充さんの存在。最上地方の新庄市でデザイナーとして活動している吉野さんは、おととめしを通してご自身が経験した“出会いのよろこび”を届けたかったと語ります。

「僕は一度東京に出たあと、ふるさとである新庄市にUターンしたんです。こっちでマルシェなどいろんなイベントに携わるなかで、いろんな人とつながっていって。そうやって出会った素敵な人たちに声をかけて、おうち旅ルミネに出てもらったり、おととめしに参加してもらったりしました。

魅力ある人たちとつながれたよろこびがあるからこそ、新庄で楽しく生きられているところがあります。そういうものを、おととめしを食べてもらった人に、同じように感じてもらえるんじゃないかと思いました」

吉野さんはおととめしに使った食材について、おうち旅ルミネに登場した地元の素材のほか、紹介しきれなかったものも選んだといいます。

「まず、おうち旅ルミネにも出てもらった高橋伸一さんという農家さんはいろんな野菜を作っているので外せないかなと。高橋さんの野菜を軸に、料理ユニット『南風食堂』の三原寛子さんと相談しながら組み立てていきました。
ポテトサラダに使っている『じんぎり』は、おうち旅ルミネでは紹介できなかった食材。独特な食材なので、お弁当にインパクトを与えることができそうだなと思って選びました。

じんぎりというのは、川を遡上してきた鮭を干してつくる最上地域の保存食です。僕らにとっては、おいしくないし匂いもよろしくないという存在なんですが、今回のポテトサラダはすごくおいしかった。最上では敬遠されることも多いじんぎりが、おととめしで東京にいるたくさんの人に食べてもらえたことが、ちょっと興奮を覚えるくらいうれしかったですね」

「おうち旅ルミネ meets 最上」での1コマ。吉野敏充さん(左)と、農家の高橋伸一さん(右)。

体験して芽生えた「行ってみたい、話してみたい」気持ち

今回はおととめしの体験者のひとり、藤田さんにも感想を伺いました。社会人1年目である藤田さんは、コロナ禍のために「友だちと食事に行くこともなくなりましたし、職場の先輩と飲み行ったこともまだほとんどありません。食事の時間は、コミュニケーションのひとつとしてすごくいい時間だったんだなとつくづく感じています」といいます。いつもは簡単なもので済ませているというリモート勤務の日のランチに、おととめしを体験したそうです。

「音を聴きながらお弁当を食べるという体験は初めだったので、『新鮮だった』と『おいしかった』という感想がまずあります。普段よくラジオを聴くのですが、今回の音声コンテンツは、それとはまた違った感じでした。生放送でもなく、ドラマでもドキュメンタリーでもなく、単純にインタビューをしているわけでもない。でも最上のよさを伝えようとしてくれる思いは伝わってくるという不思議な感覚でしたね。

体験してみて、普段の食事のときは食べているものに対してそこまで意識していなかったんだなと実感しました。最上の方がお話のなかで一つひとつの食材を紹介してくれたので、食べているものや食事すること自体にちゃんと向き合っている感じがしました」

最上地域のことを今回のおととめしで初めて知ったという藤田さん。「まったく知らない土地だからこその新鮮さがありました。食べたことのない味ばかりで、特にくるみゆべしは『これ甘いんだ!』と衝撃でした(笑)。耳なじみのない方言も印象的で、最上にはこういう方がいらっしゃるんだというのがすごく伝わってきて。その方たちとお話ししてみたい、実際に行ってみたいという気持ちが、食べ進めていくなかでどんどん生まれてきました」と続けました。

ルミネ新宿での販売の様子。

ソーシャルグッドな新しい旅の形

おととめしは、旅ルミネが提案する「日本中の人々が出会い、交流する新しい旅のかたち=ピープルツーリズム」の入り口になるお弁当です。

「人とつながることで温かさを感じる旅はきっと昔からあって、ただ、そういう旅を体験するにはハードルもあったと思います」と語るのは、旅ルミネの担当である山本。「私たちはそれを、軽やかさを持って届けていきたい。そういう想いから“ピープルツーリズム”と表現しています。これからも、旅を通じて日本中の人たちをつなげていきたいですね」と続けました。

旅ルミネ担当の鈴木は、おととめしやおうち旅ルミネはピープルツーリズムの可能性を実証していくための取り組みのひとつだといいます。

「この1年は、人とのつながりだったり、身近なコミュニティの大切さに気づく機会でもあったと思うんですね。日本のさまざまな場所で、土地に根ざして大切なものをしっかり持ちながら、自分らしく生き生きと暮らしてる人たちとつながったおうち旅ルミネやおととめしは、リアルな旅ではなくても、素敵なことが伝播していくような旅になったんじゃないかなと思います。
私たち自身も、吉野さんと旅をつくることを楽しみ、お客さまと一緒に仲間のようにリモート旅を楽しむことができました」

企画した旅ルミネの鈴木と山本、協力してくれた吉野さんや最上の人々、そして最上の魅力を受け取った藤田さん。さまざまな人のつながりを生んだおととめしは、ソーシャルグッドな、新しい旅の形です。

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