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今、見直される「木」との向き合い方。ルミネのウィンドウが注目される理由
 

2023.10.17

本記事は2023年10月10日に『FRaU the Earth』に掲載された記事を再編集しています。



ルミネとFRaUがタッグを組み、『Wild & Primitive 自然が教えてくれること』をテーマとした今期のウィンドウディスプレイが、現在、ルミネ9館で展開されている。

第1弾の記事では、ルミネのウィンドウディスプレイ担当者とFRaU編集長 関龍彦の今回の取り組みへの想いを伝えた。第2弾となる本記事では、アートディレクションおよびデザインを担当した佐々木啓光氏(Vivid.Design)のデザインへのこだわり、そしてディスプレイ内で使われた写真を撮影した、写真家の稲田美織氏の写真に込めた想いをお伝えする。
 

ディスプレイ内で使われている写真家稲田氏の写真

今、「木」に注目している理由

今回FRaUとの取り組みで設定されたテーマは『Wild & Primitive 自然が教えてくれること』。現在展開されているウィンドウディスプレイには木が利用され、また“木の写真”もディスプレイの一部として飾られている。

「サステナブルは日々浸透していますが、改めて自然に敬意を払い、人間は自然の中の一部であるということに気づくきっかけになればと考え、テーマを設定しました。キーワードは、エシカルやエココンシャス、アップサイクル素材などの最新技術と⾃然との融合。それをウィンドウの中で表現したいと考え、アートディレクターの佐々木啓光さんとも相談し、木を額縁にしたディスプレイデザインに決定しました。

私たちの暮らしは自然につながっています。今回ディスプレイで使用させていただいた、稲田美織さんの写真に写る美しい自然と、私たちの毎日。都会・自然、と分断するのではなく、『実はつながっていて、生活の中で循環しているんだなぁ』と想いをめぐらせるきっかけの一つになれば嬉しいです」と、ルミネの担当者は語る。

タッグを組んだFRaUは“木”の利用を提案したが、そもそもなぜ、 “木”だったのだろうか。FRaU編集長の関龍彦に聞いた。

「FRaUでは、今⼀番、“⽊を利⽤する”ことに注⽬しています。⽊の需要が伸びれば供給も伸びる。間伐が進めば、空間ができ、陽が⼊る。植物、昆⾍、動物の多様性に繋がる。⼟も肥え、豊かな森になる。『⽣育するたくさんの樹⽊たちを、ただ保護するのではなく、 私たちの⽣活に取り⼊れることが、⽇本の未来を明るくする』。

使って、リユースして、また植える、その循環こそが豊かな⾃然を守ることに繋がります。そのことにもっと気づいてもらいたいと感じて、今回のウィンドウディスプレイで提案したのです。そしてそれは、FRaUが伝えたいことをたくさんの街行く人々に感じてもらえるという嬉しい機会となりました! SDGsは、皆で、一緒にやるもの──これから先も、日本中でさまざまなコラボが生まれていくことが、ゴールへの近道だと信じています」

佐々木氏が描いた当初のラフ画

「自然の中で過ごしている空間」をウインドウで表現

FRaUの提案を受け、ウィンドウデザインを担当したのは、Vivid.Designでアートディレクター、グラフィックデザイナーを務め、数々のブランドのカタログやパッケージ、ロゴなどを手がけている佐々木啓光氏だ。
「テーマが『Wild & Primitive』だと伺った時、まずはヨセミテ国立公園のクライマー達を追った写真集<YOSEMITE IN THE SIXTIE>と、ジョン・クラカワーの書籍<荒野へ>を思い出しました。自然と向き合いながら生きるようなイメージです。現在、登山やキャンプブームでもありますし、自然の中で過ごしているような空間を表現できたらと思い、木材で製作した木のシルエットを使うデザインアイデアが浮かびました。のちにそれが木や森の写真、そして額縁によるツリーにするアイデアになりました」


木をテーマにする上でのこだわりについて、佐々木氏はこのように話す。

「全体の面では額や木材をただコラージュするだけでなく、全体が木のシルエットに見えるように、そして木の板や、額が幾重にも重なって立体感が出るようにしました。また、素材も使用しているのは間伐材を使用した合板で、デザインでは見えない部分にも木の「リユース」という視点が入っています。あえて木目や節が目立つ部分を選び、額角の接続部分などはも綺麗な処理をせずにつないだワイルドな印象にしてます。このように、細かいところにテーマやメッセージが隠れているので、そこを読み取っていただけると嬉しいです。そして、都会の商業施設にいながら、自然を感じてほしいと思っています」

ディスプレイ内で使用している稲田氏の写真

日本の聖地を撮る写真家、稲田氏の世界観

ディスプレイ内に飾られている写真は、FRaUweb で連載『写真家が見たSDGs』を持っている写真家の稲田美織氏の作品だ。稲田氏は多摩美術大学を卒業後、教職を経てNYに移住。1995年にはハーバード大学でデビューするも、9.11同時多発テロの目撃に衝撃を受け、神や宗教を肌で感じるため、世界中の聖地を巡り撮影を続け、世界中で展覧会や出版などの活動を行っている。

ディスプレイに飾られている写真を撮影したときのエピソードや、写真に込めた想いを聞いた。

「こちらの(上に掲載)木漏れ日の写真は、神宮の神域の森の中で撮影しました。雨の翌日など、早朝、太陽が昇ると、湿気で光が浮かび上がり、神々しく美しい光景を見せてくれます。そのほかの写真は山形・出羽三山で撮影し、月山の森羅万象の雄大な世界、光、季節に彩られる美しい山の自然を収めています。

私たちは自然の一部で、その循環の中で生かされている。だから、自分も自然の一部となって撮影出来たらと、いつも思っています。また撮影をするにあたって、心技体が一致するように運動し、心や体を整えるようにしています」



圧巻の自然をありのままに映し出す稲田氏の写真。自然と向き合う稲田氏は、環境の変化も感じているという。

「異常気象などが原因で山のがけ崩れが起こり、山道が崩れたり、あるいは動植物の生態系が変化していることを肌で感じています。未来に美しい地球を渡せることを祈り、これからも謙虚に美しい写真を撮影していきたいと思っています。そして、世界中の人びとに色々な方法で伝えていきたいです」

今年、かつてないほど長く続いた夏日。地球について真剣に考えなければならないときが来たことを感じている人も多いだろう。ふだん忙しく、なかなか地球という壮大なテーマを考える時間はないけれど、今回のルミネのウィンドウディスプレイから、何か感じてもらえたら嬉しい。また、そのためには自分自身について考える余裕も必要だ。ファッションを楽しみ、自分を労る。そんな時間を大切にしつつ、「木」を通じて少しでも自然や地球環境に目を向ける人が増えることを願っている。

ウィンドウディスプレイに記されたメッセージにも、ぜひ注目してほしい。
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木を育て、使い、リユースし、新たに植える……何十年もの時を経て
古くなった木は新陳代謝が落ち、二酸化炭素を吸収・固定できなくなる。
使って植えて、循環させていくことが豊かな地球を守ることにつながります。
ライフスタイルにおいてもファッションにおいてもよりサステナブルな
考え方が重視される時代です。この秋は、自然が教えてくれることに
耳を傾け、自分のため、地球のためにできることを探しませんか。
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ルミネと、アートディレクターの佐々木氏、写真家の稲田氏、そしてFRaUの想いが詰まったルミネのウィンドウディスプレイを見に、ぜひ館に足を運んで欲しい。

構成・文/本間綾
 

ルミネ新宿 都道小窓

期間/2023年10月5日(木)~11月15日(水)予定
ウィンドウテーマ/Wild & Primitive 自然が教えてくれること
実施館/ルミネ新宿、ルミネエスト新宿、ルミネ有楽町、ルミネ北千住、ルミネ池袋、ルミネ町田、ルミネ荻窪、ルミネ大宮、ルミネ横浜


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