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The Meadow

The Meadowで出合う、
食卓がもっと楽しくなるクラフトソルト

2020.06.22

国内外のクラフトフードを取り揃えるThe Meadow(ザ・メドウ)。大量生産品とは異なるクラフトフードには、つくり手の想いや、唯一無二の個性があふれています。今回はクラフトソルトに焦点をあて、その魅力や大切にしているフィロソフィについて、塩のアドバイザーとして店に関わる青山志穂さんに聞きました。

世界各地を旅して見出した、物語のある塩
ザ・メドウは、2006年、マーク・ビターマンがアメリカのポートランドで開いたクラフトフード専門店。現在はポートランドにふたつ、ニューヨークにもひとつお店があります。
そして2019年3月、ルミネ新宿店2に初めての国外店が生まれました。

小ぢんまりとした店内に並ぶのは、こだわりの塩とチョコレートとビターズ(カクテルなどに使う苦味の強いアルコール)、そして花。2020年6月からは、オレゴン州のクラフトビールと、ルミネの契約農家による農薬・化学肥料不使用野菜も取り扱いをスタート。大量生産品ではなく、世界の職人たちが想いを込めて手仕事でつくったものをセレクトしています。

店は新宿駅南口を出てすぐ。小さな空間の中に世界から厳選したアイテムが並ぶ。

ソルトコーディネーターの青山志穂さんは、ザ・メドウの日本進出に初期から携わってきました。塩の輸入や保管方法、販売方法、食品表示ラベルの作成、スタッフ研修など、塩に関わるさまざまなアドバイスをしています。

塩は、マークさんがクラフトフードの世界を広げていくきっかけとなったもの。青山さんは、そのラインナップに彼のフィロソフィが色濃く表れているといいます。

「ザ・メドウの塩は、大量生産品ではなく、いわゆるオーガニック的な“クラフトソルト”です。マークが一番大切にしているのは、物語のある塩であるということ。有機栽培の農作物と同じように、作り手さんの思いが詰まっています。掘り下げていくと、その人の生き方が生産方法に表れていることがわかってきたりして、バックボーンがすごく豊かなところがおもしろいですね。一つひとつにすごく個性があるんですよ。
クラフトソルトをつくっている人って、ちょっと変わった人が多いんです。儲からなくてもいいからいいものをつくりたい、自然環境と調和していきたいっていう人がすごく多くて、マーク自身もそういう人のひとりです」

マークさんはもともと旅が大好きで、旅をしながら生産者を訪ね歩いているのだといいます。
商品の中には、そうして出会った生産者とマークさんがアイデアを出し合いながらつくったものも多くあります。たとえば、ソコール・ブロッサー。なんとワインで染めたクラフトソルトです。

「マークが特に気に入っているグアテマラの海水塩があるんですが、それをワインで染めたものなんです。オレゴン州のビオ・ワインを牽引している、有名な家族経営のワイナリーを口説いてコラボレーションしたそうです」

青山志穂さん

ソルトコーディネーターの青山志穂さん。

実は無類の料理好きだというマークさん。その豊富な経験を生かし、カカオニブを混ぜたチョコレートソルトなど、日本では考えられないような組み合わせのものもつくっています。

「ハーブソルト(ハーブやスパイスをブレンドした調味塩)もこだわりがすごくて。塩と胡椒にとことんこだわったオーガニックの塩胡椒とか、ガーリックソルトでは、生のガーリックとローストしたガーリックを2種類使ったりしていますね。ほかにも燻製したチーズをブレンドした塩など、手の込んだものばかりです」

青山さんは、「マークのクラフトソルトに対するこだわりはもちろんすごく強いのですが、こうあるべきだと押し付けるわけではないんです」と続けます。

「彼は“塩を通じて、華やかで豊かで楽しい食卓を追求しよう”という考え方。だから、ハーブソルトをはじめとして、料理にひと振りするだけで華やかになるようなものを多く取り揃えています。
塩のほかに、花やビターズ、クラフトチョコレートも扱っているのは、それらが生活に彩りを与えてくれるものだからです。最初は私も『どうしてこういうラインナップなんだろう?』と不思議に思ったのですが、マークの話を聞いているうちに、食卓や生活空間にあるとテンションが上がるものだけを集めていることを知りました」

上段にあるのは、スポイト式の容器に入ったビターズなど。下段にはオレゴン州のクラフトビールが並ぶ。

生産地も製法もさまざま。個性的なラインナップ
独自の視点でセレクトした、個性的なクラフトソルト。
青山さんにおすすめを聞くと真っ先に挙がったのは、「アイスランディック・バーチ・スモークド・シーソルト」。マークさんがアイスランドの製塩所にリクエストして作ってもらっている、オリジナルの燻製塩です。
「海外は塩田沿いの土地が広いところが多いので、そこに塩田をつくって海水を引き入れ、太陽と風の力で濃縮・結晶化させる『天日塩』が多いのですが、このアイスランド・バーチは平釜で炊いているんです。釜炊きでつくられた塩を、バーチ(カバノキ科の広葉樹)で燻製にかけたもの。火山島であるアイスランドの地熱エネルギーだけを使って濃縮・結晶化させるという、18世紀頃の手法を現代に復活させた製塩方法なんですよ」

もうひとつ、青山さんが「これもザ・メドウらしい塩」と紹介してくれたのは、「サル・デ・グサノ」というメキシコの塩です。

「『グサノ』とは、リュウゼツランに生息するガの幼虫のこと。メキシコでは、テキーラなどのメスカル酒(リュウゼツランを使った蒸留酒)にこの芋虫を入れることが普通に行なわれています。サル・デ・グサノは、その芋虫を乾燥させて粉末化し、塩にブレンドしたものです。
現地のバーでは、テキーラのお供の定番。テキーラをぐいっと飲んだあとに舐めるんです。サル・デ・グサノを日本に輸入したのはザ・メドウが初めてで、バー関係の方には『日本で手に入るなんて』と驚かれますね(笑)。芋虫と聞くとちょっと敬遠されがちですが、粉末化してるので食べるときには案外気になりません。おがくずのような香りがして、ジャガイモなど土の香りがする食材とすごく相性がいいんですよ」

アイスランディック・バーチ・スモークド・シーソルト1,620円(左)と、サル・デ・グサノ2,376円(右)。

店頭には、海外の塩だけではなく日本の塩も30種類ほど並んでいます。それらは、マークさんから日本の塩も並べたいというリクエストを受け、青山さんがセレクトしたもの。青山さんは「ザ・メドウの理念に沿って、伝統的な製法でつくられているもの、バックボーンが感じられるものを選びました」と話します。

「たとえば、沖縄の多良間島でつくられている『くがにまーしゅ』。塩は海水を10倍くらいに濃縮してつくるのですが、普通はそこまでの間に、ネットにかけたり、煮出したりするなど、なんらかの形で人の手を加えるんですね。でも、このくがにまーしゅは、海水をそのまま結晶箱という箱に入れて、4カ月くらいかけてじっくりと結晶化させるんです。その間やるのは、朝晩ゴミをすくうだけ。なにも足さない、なにも引かない、究極の完全天日塩です。味はすっごく力強くて、余韻がとても長い。喉の奥の方に旨味と甘味が残り、それが日本酒と合うんですよ。
ほかに熊笹のエキスが入った『笹の雫』もおすすめです。よもぎのような風味がして、バニラアイスにかけたら最高。見た目も緑がかっていて華やかなので、マークも気に入ってくれました」

左から、「くがにまーしゅ 細塩」1,620円、「笹の雫」1,620円、青山さんがブレンドした「ごはんを美味しく食べる塩」972円。

大切なのは、店で楽しい時間を過ごしてもらうこと
ザ・メドウが、貴重で魅力的なクラフトソルトを届けるうえで大切にしているのは、お客さまとのコミュニケーションです。ここにも、マークさんの信念が表れています。

「店内には、商品の特徴を書いたPOPをあまり置かないようにしているんです。それはお客さまに、スタッフとのコミュニケーションを通じてザ・メドウを楽しんでもらいたいという、マークの考え方から。スタッフがお客さまに、この塩ってこうなんですよ、こうやってつくっているんですよとお伝えしたほうが、想いが伝わりますよね。
それもあって、スタッフの研修にはかなり力を入れています。一つひとつの商品の特徴を覚えることはもちろん、自宅に塩を持って帰り、実際に料理に使ってもらったりして。塩って単体で食べるわけじゃないので、こういう料理に合いますよと説明できないといけないんです」

研修を行うだけでなく、接客スタッフとして店頭に立つこともある青山さん。「塩を買う目的ではなく、『いろいろあるし覗いてみようかな』と来店してくれる方にも喜んでほしい」と話し、こう続けます。

「塩についてたくさん説明するというよりは、そのときの気分や、好きなことを聞いたりして対話することを大切にしています。その延長で『お塩っておもしろいんだ』と感じてくれて、手に取ってもらえたら、すごくうれしい。店を出るときには笑顔になっている方が多くて、コミュニケーションが楽しいお店になっているなと感じます」

これからのザ・メドウについて聞くと、「日本でここだけにしかないものもたくさんあることや、クラフトソルトを使うことにとって食卓が楽しくなることを、もっと広く伝えていきたい」と青山さん。「クラフトソルトやビターズ、チョコレートなどの商品を使ってプチパーティーを開いたりとか、楽しいワークショップを店頭でやってみたいですね」と語ってくれました。

つくり手の想いを大切にすることと同じように、お客さまの想いに丁寧に寄り添う。そして、一緒に楽しむ。ザ・メドウでは、クラフトソルトとの出合い、そして、クラフトソルトを介した人と人との温かな出合いが、日々生まれています。

※価格はすべて税込みです。

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The Meadow(ザ・メドウ)
東京都新宿区新宿3-38-2 ルミネ新宿 ルミネ2 1F
03-6279-4347
Instagram:@themeadow_jp

※新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、営業時間を変更しております。
詳しくはルミネ新宿店のホームページをご確認ください。
https://www.lumine.ne.jp/shinjuku/

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