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薬膳は身近な食材でも実践できる/余慶尚美さんインタビュー 前編

2024.01.19

美容家やヘアケアリストとして、メディアへの出演や講演会・セミナーの講師、商品開発など幅広く活躍している余慶尚美さん。漢方や薬膳、東洋医学をベースにしたメソッドで、たくさんの人の「美」をサポートしています。
そんな余慶さんの考え方やライフスタイルに迫るインタビュー。前編では、漢方との出会いや、薬膳の普段の暮らしへの取り入れ方について聞きました。

PROFILE
余慶尚美(よけい・なおみ)/美容家、ヘアケアリスト(毛髪診断士)
広告代理店や外資系企業にて広告宣伝の仕事に従事した後、2007年、美容家に転身。さまざまなメディアに出演するなど多岐にわたって活躍。近年はヘアケアリストとしても注目されている。著書に、髪の総合的な知見に加え、巡り、漢方美容、薬膳といった観点を取りいれた美髪メソッド本『髪トレ』があり、髪と共に生きていく女性のライフスタイルまでケアする活動に力を入れている。また、韓国ドラマ好きが高じ、韓国の俳優、女優の広告キャスティングコーデとしても仕事の場を広げている。
https://www.instagram.com/yokenao/

「巡り」に着目した美容法

―まずは、現在の活動について教えてください。

美容家やヘアケアリストとして、メディアに出演したり、講演会で登壇したりと、さまざまな活動をさせていただいています。
また、近年は韓国の俳優さんや女優さんの広告キャスティングをコーディネートする仕事もしています。こちらは韓国ドラマ好きが高じて、以前広告代理店に勤めていたときの仲間たちと始めました。


―美容のお仕事では、「美巡」をテーマにしていると聞きました。

はい、そうなんです。私の専門は、東洋医学をベースに、リンパドレナージュや漢方・薬膳を取り入れた美容法。「美巡」とは、心と身体の両面をケアする「巡り」に着目して掲げた言葉です。東洋医学では身体を構成する3大要素、“気・血・水”が滞りなく巡ることが重要とされています。“気・血・水”を補って巡らせ、排出し、調和させる。それがあって初めて心身の健康を保つことができるというのが基本的な考え方です。

重いPMSが、漢方に出会うきっかけに

―漢方や薬膳に出会ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

私、20代から30代にかけて、ずっとPMS(月経前症候群)がひどかったんです。PMSの症状は人によってさまざまですが、私の場合は、外出できないくらいの激しい偏頭痛がありました。光を見ると悪化するので、部屋にこもり、外から入ってくる日光も全部遮断して……。でもあまり薬に頼りたくなかったので、漢方の葛根湯を常備していました。葛根湯は風邪の引き始め以外にも、頭の痛みや筋肉のこわばりをやわらげる役割もあるんです。

その後30代前半のとき、仕事の都合でニューヨークに1年間滞在する機会がありました。持参していた葛根湯を切らしてしまいチャイナタウンに行ったら、英語も通じないような“本物”の薬局にたまたま入ってしまったんですね。ジェスチャーでなんとか症状を伝えて生薬を処方してもらったのですが、出てきたものもまた本物で……見た目はまるで木の枝や葉っぱ、そして根っこたちでした。

量はおそらく2週間分だったと思うのですが、当時は知識がまったくないので何日分なのかもわからないまま、とりあえず全量を煎じて飲んだんです。そしたらもう、ほんの少し口にしただけでふらふらになってしまって、眠たくて仕方がない状態に。その出来事は、衝撃的であると同時に、自然の持つ力や神秘を身をもって感じる機会になりました。漢方薬のすごさに触れ、強い興味を持ったんです。

帰国後もその気持ちは消えず、さらに、時代はナチュラル志向になりつつありました。世間でも漢方が流行り、飲んだらやっぱり効くわけですよね。それで、やっぱりすばらしいものなんだなと。その後、30代なかばで広告代理店を辞めてリンパドレナージュサロンのセラピストになったときに、「これからは巡りや漢方、薬膳をベースにした美容家としてやっていきたい」と考えました。漢方は、私の美容家としての原点なのです。


―自ら効果を体感して興味を持ったというのは、説得力がありますね。

そうなんです。でも理論もおもしろいですよ。たとえば紀元前1000年頃の周王朝の時代は、内科や外科の医師よりも、食事を管理する「食医」という医師が一番地位が高かったそうです。このエピソードだけでも、食べるものがどれほど大事かを表していますよね。
生姜を煎じて飲むような知恵も2000年前からあり、今でも変わらず残っている。そこにはロマンがあるんです。私はもともと歴史が大好きなので、漢方という未知のジャンルにもすっと入っていけたのかもしれません。

身体の状態に合わせて食材を選ぶ

―ふだんは薬膳をどのように取り入れているのでしょうか?

身体の不調を感じたら、旬の野菜を積極的に摂るようにしています。薬膳って難しいものではなく、実は身近な食材で実践できるんですよ。
たとえば、ほうれん草や青梗(ちんげん)菜、小松菜といった青菜。夜眠れないときには、補血作用を持つほうれん草がおすすめです。また、目のクマや身体のこわばりが気になるときは、血を巡らせる青梗菜。身体や肌が乾燥していると感じたら、うるおいをもらたしてくれる小松菜がいいですね。

旬のものというのは、“いま私たちの身体に必要なもの”なんです。青菜以外にも、乾燥する時期には蓮根や百合根など、身体をうるおしてくれるものがスーパーに並びます。
常日頃自分の体調を見て、薬膳と現代の栄養学の知識を組み合わせつつ、食材を選ぶ。おお肉に関しても、身体を温めたいときには鶏肉、うるおいがほしいときには豚肉など、都度使い分けるようにしています。

もう少し本格的なものでいうと、私は韓国が好きということもあり、現地で売っているナツメチップスをよく食べているのですが、これが本当においしいんです。ナツメは、中国に「ナツメ3粒老け知らず」ということわざがあるくらいポリフェノールが多く含まれているだけでなく、補血作用で血の巡りをよくしてくれる。さらに、身体を温めるので、安眠作用や怒りを鎮める作用もあるといわれています。

ナツメ以外には、日本でもスーパーフードとしてポピュラーになったクコの実もよく食べます。補血作用や抗酸化作用が期待されるので、女性には特におすすめです。眠れないときには、身体を内側から温めるフェンネルと、温まった身体を適度に冷やして熟睡に導いてくれる菊花茶のブレンド茶を飲みます。

―薬膳というと、本格的な生薬が思い浮かびますが、そうではなく、身近な食べ物にも通じるお話なんですね。

そういうことです。すべての食材にはいろいろな性質がある。それを知るだけでも、スーパーに行って食材を見て回ったり、食事をしたりするのが楽しくなります。

シルクと髪は相性抜群

―余慶さんはヘアケアリストとしても活動されていますが、こちらもやはり東洋医学がベースになっているのでしょうか?

はい、そうなんです。さらに専門性を深めるために、東洋医学に加えて西洋医学の知識も必要な毛髪診断士の資格を取得しました。

最近では、使われなくなったシルクの着物をオリジナルのシュシュにリメイクし、小規模ですが販売もしています。髪に跡がつかず頭皮にもやさしいシルクは、髪との相性がすごくいいんです。シュシュのほかにシルクの枕カバーもおすすめ。高価なものでなくても全然いいので、ぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。


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