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「食」や「暮らし」を通じたライフスタイルのご提案

     

Stories for new standard
これからの世界での、わたしらしさ -2-

2020.09.08

これからの世界での、わたしらしさ

 
これまでの日常が一変し、新たなライフスタイルが定着しつつある今日このごろ。

変わったこと、変わらないこと、変えていきたいこと。

住む場所も国籍も違う、さまざまなライフスタイルを送る10名のみなさんに、考える時間が増えたからこそ気づけた、自分らしさや自分の本質についてお伺いしました。

あなたの大切なものは何ですか?

いま一度、自分に向き合ってみてはいかがでしょうか。




                      
 

本来の価値、新しい暮らし方

鈴木 多依子


 昨年、勤めていたメキシコの旅行会社を辞め、現在はフリーランスのコーディネーターとして働いています。独立したての頃は「一般的な就業時間」に無意識に縛られていましたが、在宅ワークが普及するとその考えから解放され、自分のリズムで仕事ができるようになりました。目が冴えていれば夜にも仕事をするし、やることがなければ平日でも休む。仕事の合間に料理をしたり植物を育てる余裕ができ、仕事が生活の一部になりつつあります。そのライフスタイルは、まるでメキシコの地方都市オアハカに住む職人家族のよう。家の片隅に工房があり、子どもたちの面倒を見ながら仕事をして、お父さんが作業している間にお母さんが料理を作る。「日常生活にある仕事」という元来のあり方が、これから目指すべきワークスタイルだなと感じています。
 メキシコは裕福な国ではなく、今回の災禍で失業者が増え誰もが貧窮しています。でも彼らは柔軟性がありたくましく、家にあるものを売ったりSNSを通じて物々交換をしたりとお金を使わずに生活をするための新しいアイデアを生み出しています。わたしもこれを機にいらないものを整理して不用品を食料に換えてみたのですが、これは欲しい人と譲りたい人の協力関係でなる新しい経済なのだと気づかされました。最近は徒歩で行ける近所の市場で買い物をしていますが、互いに頻繁に顔を合わせるだけに売り手と買い手という関係だけではない近所のメンバーという認識が強くなってきています。
 お金に替えがたい“人との繋がり”や“昔ながらのやり方”に、さらなる価値を感じるようになりました。


profle / taeko suzuki

メキシコ在住の撮影&旅行コーディネーター。学生時代にアルゼンチンに留学しスペイン語を取得。地元・関西のような明るいメキシコの雰囲気に惹かれ移住を決める。今年でメキシコ居住歴5年。





                      
 

立ち止まってジャムを炊く

後藤裕一 <文>


 パティシエという仕事が好きだ。この職に就いてから日本やフランスで働き、止まらずここまできた。昨年は洋菓子店の開店やその他の仕事も重なりことさら忙しく、もはやブレーキを自ら壊してワーカーズハイになり、より美味しいもの、より面白い仕事を求め、そうしないと沈んでしまいそうな気さえしていた。
 そこへ自粛要請で強制的にブレーキをかけられ、休みが増えて自宅で子どもと一緒にお菓子作りなどをしていると、少しずつ心に余裕が出てきた。
 そんなとき、以前から付き合いのある農家さんから、柑橘類が沢山届いた。嬉しかった。普段だったら忙しさにかまけて、いただき物をしたと喜んだだけだったかもしれないが、貰った物でジャムを作ろうと自然に思いついた。頭の中から本来の洋菓子職人に戻れた気がした。
 心を込めて作ったジャムを、今度はこちらからその生産者さんに送ることができた。その後、友人の酪農家さんや農家さんとも同様のやり取りができて、心がホッとしている。そんなことをスタッフと話していると、みんなの洋菓子職人としての働き方も考えていかなきゃなと切実に感じた。何だか今まで以上に「人」に対して、想いを持つようになった。一人じゃ何もできないからね。
 この仕事の大変だけど、楽しいところ。それをより再認識させてくれる機会になった。


profle / yuichi goto

代々木八幡のレストラン「PATH」や、幡ヶ谷の洋菓子店「Equal」も手がけるオーナーパティシエ。メニュー開発や、店舗コンサルティング、アドバイザーとしてもパティシエの仕事の幅を広げる活動を続けている。





                      
 

日記みたいにドローイングをする

小林 エリカ <文>


 失恋したとき、憂鬱なとき、仕事も何もかもうまく行かないとき、大切なものや人を失ってしまったとき。とにかく、何かに苦しかったり、落ち着かないときには、私は日記を読むことにしている。
 一〇〇年前も一〇〇〇年前を生きる人たちも、海を遥かに越えたずっと遠い場所に住む人たちも、みんなごはん食べて、寝て、勉強したり、恋をしたり、悩んだりしていたのかと思うと、何だか勇気がわくから。それにどんなときにも季節は巡り、やがて冬は過ぎて、春が、夏が、やってくるから。
 今回も家から出られない怒涛の日々(保育園がなくなった子どもの世話と仕事が同時並行ってのは失神するかとおもった)の中で、真夜中貪るように日記を読んだ。それにくわえて今度ばかりは、自分でも日記をつけてみることにした。
 それさえも億劫なときにやるのは、ドローイング日記。
 長々と文章にまとめなくても、気に入ったものをみつけたら、iPhoneとかで写真を撮るかわりに、スケッチブックにドローイングをする。ささっと描くだけでいい。
 日々の雑事に追われまくって自分のことなんて何一つできていないような気さえする一日の終わりの夜寝る前に、スケッチブックを見返すとただそれだけで達成感もある。
 それにどこか遠くへ出かけられなくても、ほんの一瞬だけでもよく目を凝らしてみると、日々の些細なものが、とても輝いて見える。


profle / erika kobayashi

作家・マンガ家。著書に小説『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)、放射能の歴史を巡るコミック『光の子ども』(リトルモア)など。新刊『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)が発売中。





                      




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