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LIFESTYLE

     

Stories for new standard
これからの世界での、わたしらしさ -1-

2020.09.01

これからの世界での、わたしらしさ

これまでの日常が一変し、新たなライフスタイルが定着しつつある今日このごろ。

変わったこと、変わらないこと、変えていきたいこと。

住む場所も国籍も違う、さまざまなライフスタイルを送る10名のみなさんに、考える時間が増えたからこそ気づけた、自分らしさや自分の本質についてお伺いしました。

あなたの大切なものは何ですか?

いま一度、自分に向き合ってみてはいかがでしょうか。




                      
 

好きなものを見極める時間

清水 奈緒美


 「その新しい服、かわいいね」。友達に会えていた期間は、服についてコメントをもらったり、街で鏡に映る自分のファッションを見て、今日のコーディネートいいぞ、と気分が上がる瞬間がありました。でも自分の姿を目にすることがなくなった、自宅で過ごす長い時間。私の気持ちを上げてくれたのは、ジュエリーでした。
こんなときだからこそ自分の好きなものを、と身に着けたのは、今の自分には背伸びしすぎているかな…と、何日も悩んだ末に購入した指輪でした。
 目に入るたびに気持ちは高揚し、「あぁ本当に買ってよかったな」と何度も嬉しくなりました。そして改めて思いました。やっぱり私は、ジュエリーが好き。
 もともと自分の内に入って、好きなものを精査する作業を行うタイプでしたが、ステイホーム中はその気持ちが強くなった気がします。自分は何が好きで、何が必要か。
 私がそうであったように、ファッション界の多くの人にとっても、大切なものを見極める期間になったかもしれません。これからは新しいものを生み出すのではなく、自国の文化を大事にした
クリエイションをしよう、ショーの回数を見直そう。そんなブランドが増える気がします。
 女性に必要なのは、自分だけが感じるときめき。
 「あのジュエリーを身に着けて、どこへ行こう」。そうワクワクさせてくれるものを、私は大切にしていきたいです。


profle / naomi shimizu

ファッション誌の編集者を経てスタイリストに。現在はモード誌を中心に、広告やアーティストのスタイリングを手がける。大のジュエリー&バッグ好きで、自宅には数え切れないほどのコレクションが。





                      
 

古着は誰かの贈りもの

eri <文>


 わたしは父の後を継ぎ自社のブランドと並行して古着屋を営んでいます。古着は循環することで生まれるファッション産業で、時代もジェンダーも宗教も肌の色も年齢もすべて軽々しく飛び越えてわたしたちの手もとにやってくるなんとも自由な服たちです。すべての子に物語があり、その目に見えない物語も含めてその子の価値があります。“誰かが大切に着たから” “誰かがゴミとして燃やさずにいたから”今ここに存在する服たちなのです。
 2020年世界を取り巻く状況は一変しました。そしてコロナ禍においての生活はわたしたちにいろいろなことを教えてくれました。
 物流に混乱が生じ、今まで輸入に頼り切っていたサプライチェーンの脆弱さに人々は気づき、ものを作っていくことを見直さざるを得なくなりました。自分たちのものは自分たちで、必要な分だけを作るという本来人間が大昔にやっていた原点へ回帰するような流れへ向かっていくでしょう。
 誰がどんな気持ちで作ったのかが不明瞭な、安くて目新しいだけの新しい服を一枚買う前に、もうすでにこの世に存在している古着たちを選択肢に加えることで世界の質は確実に上がっていきます。わたしが古着屋さんだからちょっとバイアスがかかってしまうけど、うちの店じゃなくても、どこでもいいのです。お気に入りのショップを覗いてみましょう。“わたしが大切に着たから”未来に残せる服をもっともっと増やしていきたいのです。
 古着たちは皆さんに着てもらえるのを今日も穏やかに待っています。


profle / eri

自身のブランド〈mother〉でデザインを手がけるほか、ヴィンテージショップ「DEPT」や台湾スイーツ店「明天好好」、輸入雑貨店「DONA DONA Tokyo」を営むなど、活動は多岐にわたる





                      
 

食から始めるサステナブル

谷尻直子


 「地球が怒っている」。事態が国をまたいでの地球単位になったとき、私はそう感じました。何かしら地球からのSOSなのではないかと。あまり買い物にいけなくなりましたが、「そうだ、家には乾物がある!」と、ソイミートや高野豆腐などの植物性タンパク源で料理を楽しむようになりました。そんなとき、肉食によるCO₂排出量について「ステーキ1枚をサラダに変えるだけで、数日間車を使わなかったときと同じ」という記事を読み、仕事として、日常生活として、昔行っていた菜食ライフを復活させることにしました。
 食において、何を摂取すべきですべきでないかは、生活スタイルと密接しています。17年前、肉と魚を摂らなくなった6年間がありました。その時期は意識がクリアになる感覚が心地良いのと同時に、感覚が繊細になったためか、心が傷つくことが増えてしまいました。その後都会で生きることを決めたときは、一人でサバイブするのに傷ついてはいられないと、お肉を摂り入れました。すると小さなことが気にならなくなり、バランスが取れるようになりました。
 もちろんウイルスと菜食には何の因果関係もありません。ただ、私にとって今は、地球環境に負担が少ない菜食を選ぶべきとき。今は、誰もが食べやすい菜食のお弁当を作って提供したり、菜食を一部の人のものでなくするために、家庭で作れるメニューをオンラインでお教えしたりしています。ただ前も今も「自分の手の届く範囲を大切にする」という生活を心がけているので、今後も考え方は以前とあまり変わらないかな。その自分の手の長さをぐんぐん伸ばしていけるといいなと、日々歩んでいます。


profle / naoko tanijiri

料理家。ファッションスタイリストとして活動した後、食の世界に軸を移し活動を開始。代々木上原の予約制レストラン「HITOTEMA」を運営し、食や器を中心としたライフスタイルに関わるプロジェクトを行う。





                      

一輪の花が変える空気

若井 ちえみ


 花の魅力ーー。それは部屋にあるだけで、その空気を変えてしまうことだと思います。それを実感したのは10年ほど前。花屋でアルバイトを始め、家に花を飾るようになったとき、一輪あるだけで部屋の空気が変わることに驚きました。この素敵な空気感をたくさんの方に知ってもらいたいと思い、「duft」をオープンしました。
 そんな思いを込めたお店も、数カ月間営業を自粛することに。お花の生産者さんはロスが増え、非常に緊迫した状態だということも耳にしました。お店を開けられない代わりに、自分にできることは何だろうと考えて始めたのが、お客さまの自宅にお花を配送することでした。家にいる時間が長くなる分、普段なかなか自宅にいられない人や不安に飲み込まれてしまいそうな人も、お花を飾ることで救われることがあるかもしれない。そう思い、店頭でも行っているお手持ちの花器をお伺いして、それに合ったお花をセレクトするサービスを、配送という形で続けました。
 するとたくさんの方にオーダーをいただきました。メール注文の際に温かい言葉を添えてくださる方も多く、逆に励まされました。それからはこの一度の出会いで終わりたくない、どうしてもお礼がしたいという思いから、お花と一緒に手紙も届けることにしました。花器へ飾るコツや管理方法に加え、手書きの一言を添えて。
 営業を再開したときは、嬉しいことにお花に興味を持たれた方が本当に増えたように感じました。気軽にお花を買うことが、たくさんの人の日常となりますように。これからも自分らしく、花屋としてできることをしていきたいです。


profle / chiemi wakai

松陰神社前に構える花屋「duft」のオーナー兼フローリスト。店頭ディスプレイやウェディングなどのフラワーアレンジメントや、雑誌・広告のスタイリングなど、花にまつわるさまざまな仕事を手がける。





                      





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