LUMINE MAGAZINE

SCROLL

SUSTAINABLE

 

家族経営で未来にバトンをつなぐ、パリ生まれの「ロンシャン」

2026.05.15

シンプルかつエレガントなデザインと使い勝手のよさで人気の、フランス・パリ生まれのラグジュアリーブランド「ロンシャン(Longchamp)」。1948年の創業当時から長く愛されるアイテムづくりをモットーに、デザインや職人技にこだわるのはもちろんのこと、サステナビリティにも積極的に取り組んでいます。4世代にわたって家族経営を守り続けているブランドの哲学を、創業家4代目のエイドリアン・キャスグランさんに伺いました。

長年、愛用されるものこそが真のラグジュアリー

「ロンシャン」といえば、ギャロップで駆ける馬のモチーフ入りのバッグが思い浮かぶ人も少なくないだろう。特にアイコニックなナイロントートバッグ「ル プリアージュ®」は通勤や通学のお供に、またトラベルバッグやマザーズバッグとして手放せないという声も多い。

現在はバッグのほかレザー小物、ウェアといった幅広いラインアップで知られているが、実は1948年にフランス・パリで創業した当時、ロンシャンは世界初の高級革巻きパイプブランドだった。職人が手巻きで革を貼ったラグジュアリーな仕様で他ブランドと差別化したロンシャンのパイプは、第二次世界大戦後、ヨーロッパに駐屯していた米兵らから絶大な人気を博したという。

腕利きの職人ほど素材を熟知し、できるだけ無駄を出さずに最大限に活かすことにこだわるものだ。ロンシャンはそんな職人たちをリスペクトし、彼らとの協業を通して、品質保持や環境への配慮といった「責任性」とデザインに遊び心をもたらす「創造的好奇心」を両立させてきた。

「素材をどうしたら活かし切れるか、また、余ったらそれをどう楽しむかという考え方は、ロンシャンにとってごく自然なこと。その姿勢が今、サステナビリティとして注目されているのはうれしいことです」と、創業家4代目でCSR(企業の社会的責任)およびトランスフォーメーション・ディレクターを務めるエイドリアン・キャスグランさんは言う。

「ロンシャンの使命は、最高のパートナーとして末永く大切にできる、公正で美しい製品を提供することです。その精神を守るには、高品質な素材を選び、サヴォアフェール(職人技)を磨き、すべての製品が責任を持って製造されるように努力し続ける必要があります。耐久性と修理のしやすさを念頭に置いたデザインも重要です。なぜなら、真のラグジュアリーとは、長年にわたって愛用されるものだからです」

創業家4代目でCSRおよびトランスフォーメーション・ディレクターを務めるエイドリアン・キャスグランさん。国際認証制度「B Corporation™」の取得にも尽力。画像提供=ロンシャン

無駄を極力少なくする知恵を先祖から教わった

創業以来、家族経営というスタイルを守り続けていることも、ロンシャンを語るうえで欠かせない。コングロマリット(複合企業)の傘下に入るラグジュアリーブランドも多い中、ロンシャンでは創業家の一族のメンバーがそれぞれ役割をもち、ブランドを支えている。そしてこの経営スタイルは、サステナビリティの面でもプラスに働いているようだ。

「ロンシャンは耐久性、創意工夫、そして素材への敬意を基盤に築き上げられてきました。これらはまさに、持続可能な価値観です。祖父母、そして曽祖父母から、私たちはよいものを選び、よいものをつくり、無駄を極力少なくすることを教わりました。この哲学は今もなお、私たちの根幹を成しています。家族経営のブランドだからこそ、こうした文化はより容易に受け継がれるのでしょう。私たちは自らのルーツを理解し、次世代に何を伝えたいのかを明確に認識しています」

今年は、アメリカの非営利団体「B Lab」による国際認証制度「B Corporation™」を取得したことも話題を呼んだ。厳格な基準のもと、利益だけでなく社会や環境にきちんと配慮した事業を行っていると評価された企業にのみ認められるもので、ロンシャンでは取得に向けて3年にわたり取り組んできたという。

「私たちが当たり前のように取り組んできたことが実は自分たちの強みだった、という認識が『B Corporation』の取得によってさらに強まりました。家族的な精神と長期的なビジョンを大切にしながらイノベーションを加速させていく原動力になっているように思います」

店内の「ライブラリー」と呼ばれるコーナーには、「ル プリアージュ®」のカラーバリエーションをラインアップ

リペアサービスでは廃番色もほぼ再現可能

持続可能な未来に向けて、ロンシャンでは「メイド・バイ・ロンシャン」「ロンシャン・ファミリー」の二本柱を軸にさまざまなことに取り組んでいる。「メイド・バイ・ロンシャン」のひとつは、フランスのエレガンスとサヴォアフェールという伝統に、新しい仕上げ技術などの革新を融合させること。精度を高める一方、人間の温かみを大切にすることも忘れない。

「例えば、デジタルカッティングという技術。革を台に載せると、どこをどうカットすれば無駄を減らせるかを機械が自動で判断するのですが、機械もパーフェクトではありません。職人が革を目で見て確認したうえで機械にゴーサインを出すステップが必要です。私たちは人間の力とテクノロジーを融合し、自然で、実用的で、時代を超越した製品を生み出すことを目指しています」

環境への負荷を軽減するアプローチにも精力的だ。優れた革の品質を維持しながら、水とエネルギーの使用量を削減する最新の製法を採用しているタンナー(製革業者)と提携している。使用する革はすべてLWG認証(環境や安全性に関する国際基準を満たした証し)を受けており、その88%以上が最高水準のLWGゴールド認証を取得。また、アイコンバッグ「ル プリアージュ®」にはリサイクルナイロンを用い、「ル プリアージュ®」の色や柄をパーソナライズできる「マイ プリアージュ®」には環境にやさしい昇華転写プリント(水を使わず熱で気化させ、鮮明に転写する技法)を採用している。

「リペアサービスも、ロンシャンが重視している取り組みのひとつです。フランスでは年間約8万点の製品の修理を請け負っています。すでに廃番になってしまった色もアーカイブを参照しながら色合わせを行い、極限まで近い状態に再現してお戻しします。もちろん、日本でもサービスを承っていますよ。不定期にはなりますが、日本では店頭で革をメンテナンスするイベントなども行っています」

ネットバッグで有名なブランド「FILT(フィルト)」とのコラボレーションにより生まれた「ル プリアージュ® フィレ」の新作。購入者には先着で端材のパッチの3点セットをプレゼント

働きやすい環境づくりやアーティスト支援も

「ロンシャン・ファミリー」の軸では、才能をサポートする取り組みを展開。障がい者を雇用し、活躍しやすい環境を整える「ミッション・ハンディキャップ」や、子育て支援、乳がん予防、性差別撲滅活動、家庭内暴力被害者への緊急支援などを行う「ウーマン」プログラムを実施している。さらに、子どもたちの教育と女性の社会進出支援に取り組むマダガスカルのNGO団体「Anaka」との協業、「ANDAMファッション・アワード」の常任審査員を務めるといった社会貢献、新進気鋭のアーティストとのコラボレーション、「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭 2026」「ミラノデザインウィーク2026」のサポートなど多岐にわたる。

キャスグランさんの話を聞いていると、ロンシャンにとってサステナビリティはもはやブランドのDNAの一部であることが伝わってくる。未来につながる賢明なショッピングの選択肢のひとつとして、今後ますます注目したいブランドといえそうだ。

「修理サービスの拡充、素材革新の加速、気候変動対策ロードマップの強化、そして、ロンシャンの精神を次世代へと受け継いでいくこと。私たちはこうした取り組みを通して、これからもフランスの職人技と創造力、責任あるイノベーションを融合し続けていきます」

店舗デザインは「現代のパリジェンヌのアパルトマン」がテーマ。オスマン建築の内装の特徴であるモールディングやブランドカラーのグリーンを取り入れている。こちらはニュウマン横浜4階に今春オープンした店舗

■ロンシャン
https://www.longchamp.com/

※本記事は2026年4月28日に『&Illuminate』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Hiromi Furusato, Edit: Sayuri Kobayashi

TOP