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「食」や「暮らし」を通じたライフスタイルのご提案

LUMINE THE QUARTIER-LA

新宿西口 思い出横丁

アイデアの源は、祖父が遺したアルバム。 -RURI.Wデザイナー・渡邉瑠璃さんと巡る新宿

2020.11.30

次世代のファッションビジネスを担うブランドやクリエイターの発掘、育成を目指して、2001年からスタートした「LUMINE THE QUARTIER-LA」。
ルミネ新宿 ルミネ2の2階に新進気鋭のブランドを集めたショップを構えるほか、フリーペーパーの発行や館内ショーウィンドウでの展示などを通して、新たな出会いとクリエーションを生み出しています。

現在その一環として、LUMINE THE QUARTIER-LAのクリエイターが新宿のスポットを紹介する「新宿偏愛マップ」を店頭で配布中。
今回は、参加ブランドのひとつであるRURI.W(ルリ)のデザイナー、渡邉瑠璃さんと新宿を散策し、渡邉さんのお気に入りの場所を巡りながら、街とのかかわりやクリエーションの源についてお伺いしました。

『新宿偏愛マップ』

“父と行く特別な街”から、“日常の街”へ

――新宿の街にどんな印象を持っていますか?

幼い頃、父に連れられてよく新宿に行っていました。特に印象深いのは「アカシア 新宿本店」。老舗の洋食屋さんで、ロールキャベツを人生で初めて食べたのがそこです。家族で行って食べたときに私が喜んだのか、そのあと家でもよくロールキャベツが出るようになった記憶があります。

それから、おでん屋さんの「お多幸」や、小さな飲み屋さんがひしめき合っている「新宿西口 思い出横丁」もしょっちゅう父に連れて行ってもらいました。思い出横丁には父の行きつけの店があって、おじさんたちに交じってぎゅうぎゅうに座らされていました(笑)。いつも店内に子どもは私ぐらいしかいませんでしたが、祖父も思い出横丁に通っていたこともあり、全然抵抗はなくて。けっこうナチュラルに馴染めていたと思います。

――小さい頃からゆかりのある街だったんですね。その後、新宿にある大学に通われていたと聞きました。

はい、そうなんです。学生時代に毎日通っていたので、今ではすっかり日常に欠かせない街になっていて。生地がたくさん売っているオカダヤだったり、画材やデザイン用品が揃う世界堂に行ってインスピレーションを受けることもありますし、母校の図書館はファッション関係の資料がすごく充実しているので、発想を得たいときに行っています。
気取らなくていいし、張り切る必要もない。新宿はいつでも自然体で歩ける街です。

――LUMINE THE QUARTIER-LAには2019年の秋冬コレクションから出店されています。

お話をいただいたときはすごく嬉しかったですね。私は東京の大学を卒業してからロンドンの大学に留学したのですが、その大学出身の先輩が「NATSUMI ZAMA」というブランドでLUMINE THE QUARTIER-LAに参加していたことも後押しになって、仲間入りさせていただくことにしました。

LUMINE THE QUARTIER-LAでは店頭に立つイベントが定期的に開催されるので、そこでほかのクリエイターさんとお話ししたりしています。新宿というターミナル駅に出店できたことで、たくさんの人にお洋服を見てもらえるのはもちろん、クリエイターさんとのつながりが生まれたことも大きな変化です。

アカシア 新宿本店

ロンドンでアイデンティティを必死に探した

――「RURI.W」のコンセプトについて教えてください。

「“CATHEXIS(カセクシス)” 受け継がれたものを繋ぐ」がブランドコンセプトです。始まりは、ロンドンの大学の卒論で祖父をミューズにしたことでした。

ロンドンでは、「あなたのアイデンティティは?」ということをすごく問われました。でも、そもそも他人と自分との違いがまったくわからなくて。日本ではロンドンと違って、みんなだいたい同じような目の色、髪の色で、同じ教育を受け、同じような服を着させられて育つ。そのせいか、自分の個性がなにかなんて考えたことがありませんでした。

自身と向き合い続けていくうちに、私は人と比べて、亡くなった大切な人の一生を色褪せずに覚えていたい気持ちが強いんじゃないかと思い至りました。
初めて失った身近な人が祖父で、叶わないのはわかっているけれど戻ってきてほしいという想いがずっと消えなくて。その気持ちは一体どこから来ているのか、どうしたら乗り越えられるのか、心理的な面をリサーチすることから始めました。

あるとき、リサーチを続けるなかで読んだ精神分析学の文献に“CATHEXIS”という言葉を見つけて、それが自分にすごくしっくりきました。たとえば同じデザインのマグカップでも、祖父の形見とお店で売っている新品とではまったく別物に感じますよね。“CATHEXIS”は、そんなふうにモノに気持ちが宿っていることを指す言葉です。

その考え方をヒントに、卒論では「形見」をテーマにしたコレクションをつくりました。
祖父が着用していた洋服、つまり形見から着想を得て、もう着ることのできないその洋服に、遺されたアルバムの写真から読み取れる祖父の好んだカルチャーの要素を加え、新しい服へ。祖父の人生やアイデンティティのかけらを服に込めて未来へ繋ぐというこのときの考え方が、RURI.Wのブランドコンセプト「受け継がれたものを繋ぐ」の原点になっています。

RURI.W SPRING SUMMER 2021 - APRES-GIRL-SS1 -

写真の着物をヒントにした最新コレクション

――卒論で挑戦したテーマが、RURI.Wのブランドコンセプトになっているんですね。

2017年にRURI.Wを立ち上げるとき、やっぱり“CATHEXIS”の考え方が自分に合っているし、やるべきだと感じました。これまで一貫して、祖父のアルバムをヒントにコレクションをつくっています。

――最新の2021SSコレクションは、どのようなテーマですか?

アルバムにある1枚の写真の時代背景をリサーチしてみたら、当時はファッション雑誌が初めて登場し、日本人はわずかな情報を頼りに着物を分解してその生地から洋服に仕立て直し、新しいファッションを楽しんでいたことがわかりました。

そこから発想をふくらませ、当時の反物の幅である36cmほどを基準にパターンを構築したのが、ひとつ前の2020AWコレクションです。36cm幅の生地を6〜8枚はぎ合わせたフレアスカートから展開しました。軍の支給品や古着も出回っていた時代だったので、そのディテールを随所に取り入れています。

2021SSはそこから発想を少し変え、着物をほどいて洋服に仕立て直すのではなく、着物そのもののディテールを活かした状態で洋服風にアレンジするという設定にしました。着物の多くは、着る人の成長に合わせ、縫製をほどいて袖や裾を長く作り替えられるように、縫い代が大きくとられています。資料として準備した着物の縫い代の幅が5cmほどだったので、その特徴を反映させ、5cmの縫い代を随所に取り入れたデザインしました。
ほかにも、当時を写した写真のなかでセーラー服ともんペスタイルの女の子達が印象深かったので、セーラー服のディテールを落とし込んだアイテムがあります。

アカシア 新宿本店

直感を得るためにリサーチを重ねる

――服作りにおいて大切にしていることはなんですか?

デザインする前に、洋服を通じてなにを伝えたいかを明確にするためにも、とことんリサーチをすることです。
それもやっぱり、ロンドンで自分の考えに理解を得るため、論理的に伝えることの重要さを学んだのが大きいのかもしれません。

いろいろな手法があると思いますが、ロンドンで私はまず考察を立て、アカデミックにリサーチをして、考察が本当に正しいかどうかを確かめました。そうやって得た答えこそが、その服を作る理由になりますし、論理的に説明できるようにすることで初めて洋服に込めた想いが伝わると思います。
最初のうちは難しすぎてわからなかったんですが、リサーチをすることでそのあとのデザイン作業も導かれるように動いていくようになり、今では一番やりやすい方法になりました。

――リサーチを重ねた先に、ひらめきがある?

というよりも、ひらめきを得るためにリサーチをしているというイメージです。私は、初めから感覚で動けるタイプではなく、経験と知識を重ねた先に直感のようなものが生まれるタイプだと思うので、リサーチをする努力が欠かせないのです。
今はネットショップもあって、いつでもどこでも洋服が買える時代ですが、同じ形をしていて作者の考えが見える服とそうじゃない服があったら、私は前者にお金を使いたいって、やっぱり思うんですよね。だから多分、私は今の手法じゃないと洋服を作れないと思います。

RURI.W SPRING SUMMER 2021 - APRES-GIRL-SS1 -

満足しないから、作り続けたい

――デビューから7シーズン目を迎えた今、課題に感じていることはありますか?

洋服は自分の想いを込めた作品ともいえますが、同時に工業製品でもあります。そのバランスの取り方が難しいなと感じています。

誰かに着てもらう以上、ディテールが効いていてひと目で素敵だと感じられることや、着心地のよさももちろん大事なので、コンセプト重視になりすぎても選んでもらえないと思います。でも、コンセプトがブレてしまうと作る意味がなくなってしまうし……。コンセプトはしっかり据えたうえで、見た目の印象や着やすさを高めていくのが今後の課題かなと思っています。

――コレクションごとのテーマは、これからどのように変化していきそうですか?

学生のときからそうなんですけど、できあがった洋服に満足したことがないんです。というのも、人って日々成長していくものですよね。だから、コレクションを作り始めるときとできあがったときでは、自分の考えがわずかにでも変化している。それで「こうじゃなかったかも」「今ならこうするなあ」と考えたりして、毎回新しいスタート地点に立つような感覚です。

テーマや素材も、シーズンが変わったらまったく新しいものにするのではなく、同じもので工夫できないかと考えます。ひとつのものを最大限に活かすことができるまで取り組みたい。コレクションのタイトルの最後に“1”とナンバリングをつけているのも、そのためです。今はまだ7シーズン目なのですべて“1”なのですが、これから同じテーマの続編として“2”や“3”も出てくるかもしれない。そのためにも、RURI.Wを長く続けていくことが目下の目標です。


<プロフィール>
渡邉瑠璃/Ruri Watanabe
東京生まれ。5歳の時にフロリダで見たディズニーキャラクターのコスチューム製作現場に衝撃を受け、ファッションデザイナーになることを決意。東京の大学でファッションを専攻し卒業。その後英国の大学へ留学しファッション、ウィメンズウエアを専攻。在学中にロンドンとニューヨークのメゾンにてインターンの経験を経て卒業。卒業後直に帰国し、東京のメゾンでデザイナーとして経験を積む。2017年6月、自身のブランド「RURI.W」をスタート。
→公式サイト
→Instagram


【LUIMINE THE QUARTIER-LA】
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