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「自分の時間」と「誰かと過ごす時間」を大切にしたくなるシーズンディスプレイ

2023.09.04

8月24日(木)~10月4日(水)のルミネのシーズンディスプレイは、「Gentle Living - 紡いでいく、愛おしい時間」がテーマです。

この数年を経て、いろいろなものの価値が見直されてきた。そして制限が解かれ、過ごす時間がより一層濃密になったこの秋冬は、自分を取り巻く大切なヒトやモノに囲まれて、去年よりも温かな気持ちで過ごしてもらいたい。

そんな想いを形にしたのは、鳴尾仁希さんと山家章宏さんによるユニット「yana」です。デザインに込めたメッセージやそれを表現するディテールについて、おふたりにお話を聞きました。

紡いでいく時間を編み物で表現

ディスプレイをデザインをするにあたり、「Gentle Living - 紡いでいく、愛おしい時間」というテーマについて、どのようにイメージを広げていったのでしょうか。鳴尾さんはこの言葉を目にしたとき、まず「暖かい印象のウィンドウにしたい」と思ったそうです。

「今回のテーマは、自分の身近な空間でこれまでの価値観を見直して、いかに大切に時間を過ごしていくか、ということだと解釈しました。『内なる時間』『紡ぐ』という印象からモチーフとして浮かんだのが、編み物。“編む”という行為は時間がかかるので、ゆっくりした時間が必要になってきます。また、1本の糸だけでは成立せず、複数の糸があってはじめて編むことができる。そんなイメージが、身近な人とのつながりを想起させるテーマとリンクしました」

さらに「自分がこれまで生きて紡いできた時間を毛糸になぞらえ、ニットの時計として表現しました」と山家さん。「いくつかある時計はそれぞれが個々の『自分の時間』や『つくり上げてきた感性や価値観』であり、それがほどけていって周りの人の時間や感性と溶け合っていく。そうして、また新たな時間が編まれていくことを表現しました」と続けました。

暖かみを宿すためのディテール

暖かみを表現するために、細部にまでこだわった今回のデザイン。山家さんは「時計は今回のテーマを抽象化したモチーフなので、抽象度を保つために現実離れしたスケール感で作りたいと思っていました」と話します。

「糸の太さや時計の大きさを通常のスケールとは違うものでつくりあげることで、イメージしているものをより抽象化できるのではないかと考えました。色はオレンジをメインに設定しました。周りに配置される時計には暖かく柔らかな印象になるよう中間色をセレクトし、全体を構成しています。また、時計の針は一つひとつが個々の時間であることを表現するために、それぞれ色や組み合わせを変えてデザインしています」

時計はきっちりと編むのではなく、編み上げたあとにあえて少し崩した部分をつくることで、機械的ではない、肩の力が抜けたような雰囲気を演出しています。また、毛糸を使っていることで「展示期間中に自重で時計の形が変化していくことを想定しています」と山家さん。そうした予測できない変化も、暖かみを感じる要素になるのです。

ビジュアル用に毛糸を紡いでニットをアレンジ

別のウィンドウでは、ふたりの女性の髪や、着ているニットの糸が寄り添っていくビジュアルを使用しています。寄り添いすぎない距離感で、お互いに自分の時間を大切にしつつも、それが融合して新しい時間が生み出されていく様子がこちらでも表されています。

ビジュアルの少しレトロな質感は、デジタルで撮影した写真を印刷し、もう一度スキャンで取り込むという、アナログな手法をとることで完成させています。カメラマンと試行錯誤を重ね、ここでもディテールのこだわりが光ります。

いまだからこそ伝えたい、深いコミュニケーションの価値

テーマからイメージを広げ、具現化していくなかで「自分の時間を大事にするだけでなく、いま身近にいる人やこれから出会う人との時間を、どのように大切に過ごしていくかに重きを置きました」と鳴尾さん。

「最近はさまざまな制限が解かれ、やっと通常の世界が戻ってきた実感がわたし自身にあります。オンラインの会議もすごく普及しましたし、仕事がしやすくなったところはもちろんあるのですが、やっぱり実際に会うのとはコミュニケーションの深さが違う。人との距離をもう一度近づけるような今回のテーマは、いまだからこそ身に染みるなと感じます」

プライベートではご夫婦でもある鳴尾さんと山家さん。2022年にお子さんが生まれたことで生活サイクルが変わり、時間の使い方も大きく変化したとおふたりはいいます。

「それこそ、糸が1本増えて“三つ編み”になったような感覚です。以前は仕事ばかりしていましたが、少し人間らしい生活になりました(笑)。ごはんの時間をきちんととったり、早寝早起きになったり。今回のディスプレイのテーマと、自分たちの暮らしや大事な時間、家族との結びつきみたいなものとリンクしていたなかでの制作となりました」

ひとりの時間で育んだ自分らしさは、大切な人と過ごすことでもっと深まる。そんなかけがえのない日々を彩るのは、自分が好きな服、そして誰かと過ごすときに着たい服です。秋の訪れとぬくもりを感じるルミネで、ウィンドウディスプレイを眺めながら、時間をゆっくりと紡ぐためのファッションを探してみてください。
期間/2023年8月24日(木)~10月4日(水)予定
ウィンドウテーマ/Gentle Living - 紡いでいく、愛おしい時間
実施館/ルミネ新宿、ルミネエスト新宿、ルミネ有楽町、ルミネ北千住、ルミネ池袋、ルミネ立川、ルミネ町田、ルミネ荻窪、ルミネ大宮、ルミネ横浜

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Art Director:yana @yana.studio_@akihiroyamaya and @naruochanworks
Photographer:MASAYA TANAKA(TRON) @masayatanaka1212
Stylist:KOTOMI SHIBAHARA @kotomishibahara
Hair/Make up:YUSUKE MORIOKA(eightpeace) @pyuuuuuu
Knit Dramaturg:DAIGO TAKEUCHI (SHITURAE) @daigotakeuchi
Model:GABRIELE V(CDU), GRYTE(BRAVO)
Photo Retouch:RUMI ANDO @andytrowa
Graphic Designer:HITOKI NARUO(yana) @naruochanworks


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