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WINDOW DISPLAY

厳しい環境を生き抜く力強さを。サステナブルにも挑戦したシーズンディスプレイ

2025.06.13

2025年6月5日(木)から7月9日(水)まで、ルミネ各館で展開されているウィンドウディスプレイのテーマは「Survive like me -ディストピアを生き抜く」。デザインは前回から引き続き、デザインムジカの安藤僚子さんが担当しています。実は、2期連続で同じクリエイターが手がけるのは、ルミネとして初めての試み。一貫したテーマのもとで異なる表現をしたり、資材を再利用したりと、チャレンジングな取り組みとなりました。制作のポイントや届けたい思いについて安藤さんが語ります。

乾いた大地のイメージを質感で表現

前回のカラフルな雰囲気から一転、色味をおさえた今回のウィンドウディスプレイ。安藤さんは発想の出発点として「2期連続で担当させていただくうえでは、いままでにないチャレンジをしてみたいと思いました」と振り返ります。そこで考えたのは、同じコンセプトで一貫性を持たせつつ、印象をガラリと変えること。「Landscape」という共通のコンセプトのもと、前回とは違った国や地域をイメージしました。

「前回は南国のトロピカルな雰囲気を表現しましたが、今回はもっと過酷な環境。具体的には、カタールやエジプトといった中東の国、あるいはアフリカでも砂漠のある地域のような、乾燥していて暑いエリアですね。そういった場所の文化をリサーチして、砂や石の素材感、暑く輝く黄金の太陽などのモチーフを取り入れようと考えました」

色数や植物のモチーフなど、要素を大きく削ぎ落とした一方で、石や砂の質感をつくり込むために、山型のパネルに貼っているシートは素材感のあるシートをセレクト。「凹凸があったり、粒子が貼りつけられていたりするものです。照明の当たり方によってすごく質感がきれいに見えたりもするので、ぜひ注目していただきたいです」と安藤さんは話しました。また、限られた空間のなかで立体感や奥行きが表現されていることもポイントです。

「ウィンドウディスプレイのデザインをするときはいつも、狭いウィンドウのなかでもなるべく奥行きを出せるように試行錯誤を重ねます。たとえば今回は黄金の太陽の造作物がドーンと入るんですが、施工会社の方が一つひとつパネルでパーツをつくってくださっていて。そこにキラキラしたシートを貼る際、フラットではなく高さを変えて貼っていたりするんです。一見わずかな違いであっても、こうした工夫の積み重ねと照明の当て方などで立体感が感じられるようになります」

サステナブルには技術者の知恵が詰まっている

表現に共通性を持たせること、そして、サステナブルな取り組みとして、資材の一部を再利用する試みも行われました。再利用したのは前述の山型のパネル。その具体的な方法について安藤さんが解説してくれました。

「前シーズンの展示の時点で、パネルの表面には民族模様のシートが、裏面には砂や石をイメージしたシートが貼られていて、展示を今回のものに切り替えるときに裏返して使用したんです。ウィンドウディスプレイの展示替えはひと晩で行わなければならないので、一度作業場にパネルを移動させて貼り替える時間がありません。なので、このような方法をとりました。

環境への負荷を考慮しながらデザインするというのは、いまの時代のデザイナーにとっては当たり前の命題です。そのなかでも、資材を再利用する際はある程度形が限定されるので、デザイン面でも施工面でも工夫が必要になるんですよね。たとえば今回のケースでいうと、パネルを使うのが1回だけであれば、自立させるための支持体を裏面に糊を張って取り付けられますが、再利用するので、裏面を傷つけないよう施工会社の方が取り付け方を工夫してくださいました。今回の制作を通して、サステナブルは技術者の知恵や経験があってこそ実現できるものだとあらためて感じました」

たくましく生きていくパワーを届けたい

2期にわたってデザインを担うことについて「いつもは、いくつかの案のなかから形にできるのはひとつだけ。でも今回、2つのアイデアを実現できたことは単純にうれしかった」と安藤さん。だからこそ、共通性を持たせたり、反対にまったく違うマテリアルを選ぶなど、イメージや表現を明確に分けて考え決定していくことができたといいます。

テーマに連続性を持たせること、そしてサステナブルを実現すること。今回のウィンドウディスプレイは、さまざまなチャレンジとなりました。安藤さんは最後に、ウィンドウの世界観から感じてほしいことについてこう話してくれました。

「テーマのサブタイトルにもありますが、『ディストピア』って、人間がそうたらしめているようなところもあると思うんですよね。たとえば水のない砂漠は、人にとっては生きづらい場所かもしれないけれど、そこには地球が果てしない時間をかけてつくりあげた石や砂、鉱物が存在していて。そういう、一見ネガティブに見えても実はパワーをもらえるものの美しさを再認識するきっかけになれば、という裏テーマもあります。今回のウィンドウディスプレイを通して、砂漠のような過酷な環境、あるいは困難の多い社会のなかでも、たくましく生きていこうと感じてもらえたらうれしいです」
期間/2025年6月5日(木)~7月9日(水)予定
ウィンドウテーマ/Survive like me -ディストピアを生き抜く
実施館/ルミネ新宿、ルミネエスト新宿、ルミネ有楽町、ルミネ北千住、ルミネ池袋、ルミネ立川、ルミネ町田、ルミネ荻窪、ルミネ大宮、ルミネ横浜

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Art Direction & Design/デザインムジカ 安藤僚子


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