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「ディプティック」の香りとともに、アール・ドゥ・ヴィーヴルに暮らす

2025.07.08

1961年にフランス・パリで誕生したブランド「ディプティック(DIPTYQUE)」。創業以来、フレグランスをはじめとしたアイテムの洗練された香りやデザインが、国や年齢、性別を問わず、多くの人から愛され続けています。香りはいずれもジェンダーレスで、原料の透明性とトレーサビリティにこだわるなど、人にも地球環境にも配慮したものづくりを行っているところも魅力のひとつです。

ジェンダーレスなフレグランスの先駆け

オーバルの形をしたラベルが印象的な美しいボトル、そして、バリエーション豊かな香り。キャンドルや香水でおなじみの「ディプティック」は、五感を呼び覚ますようなアーティスティックなアイテムを通して、毎日の暮らしに癒やしや感動を与えてくれる。ブランドが誕生したのは1961年。画家のデスモンド・ノックス=リット、舞台芸術家のイヴ・クエロン、インテリアデザイナーのクリスチャンヌ・モンタドル=ゴトロの3人がフランス・パリで創業した。

フランスには「アール・ドゥ・ヴィーヴル」という言葉がある。これは「暮らしの芸術」という意味で、日々の生活のなかで自分なりに工夫をしながら美や楽しみを見出していくという考え方のことだ。ディプティックは、旅やアートが好きという共通点をもつ彼ら3人が、自分たちが考えるアール・ドゥ・ヴィーヴルを発信するセレクトショップとしてスタート。すぐに、感度の高い顧客が集まる注目の店となった。

当初はインテリア雑貨やオリジナルのテキスタイルなどを扱っていたが、1963年にフレグランスキャンドルを作って販売したところ、大評判に。68年にはオリジナルのオードトワレを発表。以降はさまざまな香りのアイテムを生み出していくようになった。

「最初に誕生したオードトワレ『ロー(L’Eau)』は、日本語では『水』という意味。クローブとシナモンの香りが印象的なこのオードトワレは、性別を問わず使いやすい香りが特徴です。『ジェンダーレスなフレグランス』は、創業時から続くコンセプトです」(ディプティック PR&コミュニケーション シニア マネージャー・高田志保さん)

3人のアーティストが共鳴し、1961年、パリ5区のサン・ジェルマン大通り34番地にディプティックをオープン。そのブティックにちなんだ「サン・ジェルマン 34」は今も人気の香り。画像提供=ディプティック

使用後のアイテムに新たな価値をもたらす提案

創業メンバー3人には「サヴォアフェール」への強いリスペクトがある、と高田さんは語る。

「サヴォアフェールという言葉は日本語では『匠の技』などと訳されますが、長い歴史と伝統によって紡がれてきた職人技を彼らは重視しています」

ディプティックでは素晴らしいものを生み出す技術を後世に残していくための取り組みのひとつとして、キャンドルを使い終わったあとの容器をペン立てや花瓶、鉢カバーとして活用するといった「セカンドライフ」のアイデアを提案してきた。

さらには、容器を美しくディスプレイできるオブジェや持ち手のついたポットなど、「セカンドライフ」をサポートするアクセサリーも販売。使用後のアイテムにひと工夫して新たな価値をプラスするという発想は、まさにアール・ドゥ・ヴィーヴルそのものといえるだろう。

また、2023年に登場したブランド初のリフィル可能なキャンドル「レ モンド ドゥ ディプティック(Les Mondes de Diptyque)」にも、やはり長く愛用してもらうためのアイデアが詰まっている。ブランドを象徴するオーバル型のフォルムは、イタリア人デザイナーのクリスティーナ・チェレスティーノ氏が数年かけて構想したもの。そのままキャンドルのトレイとしても使えるフタには、パフュームバーナーの刻印が。棚やテーブルに置いておくだけで、インテリアをセンスアップしてくれる美しさだ。

「調香師が手がけた5種類の香りは、世界の秘境を表現しています。なかには、京都の苔寺からインスピレーションを得た香りもあります。キャンドルを使い終わったあとは、別の香りのリフィルを入れて楽しむこともできますよ」

ブランド初のリフィル可能なキャンドルコレクション「レ モンド ドゥ ディプティック」。火を灯しているときはもちろん、そうでないときも、美しいデザインがインテリアを格上げしてくれる

最新のプレミアムラインは細部まで環境に配慮

2024年9月にはフレグランスのプレミアムライン「レ ゼサンス ドゥ ディプティック(Les Essences de Diptyque)」をローンチ。ディプティックの香りはアートや旅、自然などからインスピレーションを得て開発されていて、このラインの5種類の香りも自然がモチーフとなっている。ただし、サンゴ、マザーオブパール、バーク(樹皮)、睡蓮、砂漠のバラ(デザートローズ)といった「香りの無い自然の宝物」をイメージして作られているのがユニークだ。

サステナブルな工夫にあふれているのも、レ ゼサンス ドゥ ディプティックの特徴。ブランド創業初期のオリジナルボトルをモダンに再解釈したボトルには、再生ガラスを使用している。球状の黒いキャップも再生利用可能なアルミニウム製。持ち運ぶときに便利な付属のポーチには再生コットンを用い、パッケージにはFSC(森林管理協議会)の認証を受けた素材を採用するなど、環境に配慮したものを厳選している。

「フレグランスの原材料にもこだわっています。例えば、マザーオブパールをイメージした香り『ルナマリス』に使用しているシスタスという植物は、スペイン・アンダルシア地方の生産者が自然と調和した持続可能な収穫サイクルに従って栽培したもの。このほかの天然原料も、それぞれトレーサビリティを重視し、サステナブルなものを選んでいます」

レ ゼサンス ドゥ ディプティックのボトルにはアイルランド出身のアーティスト、ナイジェル・ピークによるそれぞれの香りをイメージしたイラストが。一部店舗とオンラインストア限定(写真はニュウマン横浜店)

ホームケア用品やテーブルウェアなども展開

フレグランスやキャンドル以外にも、暮らしを美しく彩るアイテムが豊富に揃っているのもディプティックのうれしいところ。2022年にはブランド初のホームケアコレクション「ラ・ドログリー(La droguerie)」も誕生した。

このコレクションの液剤は99%以上が天然または自然由来の成分を使用した生分解性素材で、人にも環境にも優しいのが特徴。食器用液体洗剤「ディッシュウォッシング リキッド フルール ド ランジェ」や、キッチンからバスルームまで家中のあらゆる場所の表面汚れ落としに使える「マルチサーフェス クリーナー ヴィネグル」といったほとんどのアイテムが、持続可能な活動に関する世界的な認証機関であるエコサートの認証を受けている。ボトルにはリサイクルガラスを採用し、リフィルを詰め替えれば、継続して使える仕様。パッケージ資材も最小限に抑えているという。

さらには、テーブルウェアやステーショナリー、バスルームアクセサリーなどもラインアップ。ホームフレグランスコレクションは、これまでの200mlのディフューザー容器に加え、100mlと2Lの容器が今年の4月に仲間入り。空間や用途に合わせてさらに選びやすくなった。
 

右はブランド初のホームケアコレクション「ラ・ドログリー(La droguerie)」。左は「セカンドライフ」の一例。使い終わったキャンドルのガラス容器にアクセサリーをプラスし、花器として活用している

自分らしいライフスタイルをさらに輝かせてくれるアイテムを選んだり、使い終わったあとも「セカンドライフ」を楽しんだり。ディプティックから始める、アール・ドゥ・ヴィーヴルを感じる暮らしは、新たな気づきやインスピレーションをもたらしてくれる毎日となりそうだ。

2025年9月には、高輪ゲートウェイに新たに誕生する商業施設「ニュウマン高輪」内に新店舗がオープンするという。どのようなブティックになるのか詳細は未定だが、ディプティックならではのクリエイティビティと職人技が感じられる魅力的な場所になるに違いない。続報を楽しみに待ちたい。



■ディプティック
https://www.diptyqueparis.com/

>> ルミネ・ニュウマンのショップはこちら
※本記事は2025年6月30日に『&Illuminate』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi

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