ART

スズキエイミさん(現代美術家・ジュエリーデザイナー・マルチアーティスト)
一輪の花のように、人生を豊かにする作品を/LUMINE ART FAIR アーティストインタビュー
2025.09.26
アートのある毎日をお届けする「LUMINE meets ART PROJECT」。その一環として、2025年11月1日(土)~3日(月・祝)にニュウマン新宿5Fのルミネゼロでアートフェア「LUMINE ART FAIR –My 1_st Collection Vol.4-」を開催します。
ルミネがキュレーションした新進気鋭のアーティストや海外アーティストを含む、約30名が参加。“アートと共に暮らすはじめの一歩”を応援するために、「部屋に飾りやすいサイズやイメージ」「手に取りやすい価格」という視点でセレクトした現代アート作品が並びます。また、アートコンシェルジュが作品の飾り方、保管についてもアドバイス。雑貨などのアートグッズを扱う限定ショップやカフェスペースもあり、肩肘張らない雰囲気のなかでアートとの出会いを楽しめます。
今回インタビューしたのは、参加アーティストのひとりであるスズキエイミさん。現代美術家・ジュエリーデザイナー・マルチアーティストとして活動するスズキさんに、多様な創作活動やLUMINE ART FAIRへの出展に向けた想いを伺いました。
ルミネがキュレーションした新進気鋭のアーティストや海外アーティストを含む、約30名が参加。“アートと共に暮らすはじめの一歩”を応援するために、「部屋に飾りやすいサイズやイメージ」「手に取りやすい価格」という視点でセレクトした現代アート作品が並びます。また、アートコンシェルジュが作品の飾り方、保管についてもアドバイス。雑貨などのアートグッズを扱う限定ショップやカフェスペースもあり、肩肘張らない雰囲気のなかでアートとの出会いを楽しめます。
今回インタビューしたのは、参加アーティストのひとりであるスズキエイミさん。現代美術家・ジュエリーデザイナー・マルチアーティストとして活動するスズキさんに、多様な創作活動やLUMINE ART FAIRへの出展に向けた想いを伺いました。

原点は幼いころに抱いた“体内”への興味
―スズキさんの現在の活動について教えてください。
アーティストとしての活動のメインは平面作品の制作・発表です。古典美術の絵画を引用したコラージュにペインティングを施し、切り貼り感のあるものではなく、一枚の絵に見えるように仕上げています。
そのほか、本やCDのジャケット、映画のポスターを制作したり、ファッションブランドとのコラボレーションではお洋服のテキスタイルをデザインしたり。2024年には、ニュウマン横浜のクリスマスのアートディレクションを担当させていただきました。
2022年にはジュエリーブランド「eimiess」を立ち上げ、ディレクターとデザイナーを務めています。
アーティストとしての活動のメインは平面作品の制作・発表です。古典美術の絵画を引用したコラージュにペインティングを施し、切り貼り感のあるものではなく、一枚の絵に見えるように仕上げています。
そのほか、本やCDのジャケット、映画のポスターを制作したり、ファッションブランドとのコラボレーションではお洋服のテキスタイルをデザインしたり。2024年には、ニュウマン横浜のクリスマスのアートディレクションを担当させていただきました。
2022年にはジュエリーブランド「eimiess」を立ち上げ、ディレクターとデザイナーを務めています。

左/《Whereabouts of the body Ⅰ》 右/ファッションブランドのテキスタイルデザインを担当(Juliette et Justine "Mangeurs de beauté")
―アートやジュエリーなど活動ジャンルは多岐にわたりますが、スズキさんの作品はすべて生と死や偏見、祈りというテーマが一貫しています。その背景にはなにがありますか?
アナトミカル(解剖学的)な要素が入った作品が多く、それは幼少期の経験がもとになっています。家には病理学の資料がたくさんあったため、それらを眺めるうちに医学への興味が湧き、レントゲンを透かして遊んだり、「身体の中ってどうなっているんだろう」と考えたりしていたんです。
また、家族や周囲に病気や障がいを持っている人がいたので、そういった方たちへの偏見にも意識が向きました。それらの経験がいま、作品としてアウトプットすることにつながっているのだと思います。
―スズキさんの作品のなかには、内臓や骨といった「身体の中」のモチーフを取り入れたものも多いですよね。美しさと生々しさのバランスをどのようにとっていますか?
内臓や骨を用いた表現にグロテスクさを感じる方もいるかもしれませんが、私はそうとは思っていないため、特別に考えることもないのです。普段は見えていないだけで、誰もが身体のなかに内臓や骨を持っている。当たり前のものとしてとらえているので、抵抗感を抱くこともない……そのような感覚でしょうか。
アナトミカル(解剖学的)な要素が入った作品が多く、それは幼少期の経験がもとになっています。家には病理学の資料がたくさんあったため、それらを眺めるうちに医学への興味が湧き、レントゲンを透かして遊んだり、「身体の中ってどうなっているんだろう」と考えたりしていたんです。
また、家族や周囲に病気や障がいを持っている人がいたので、そういった方たちへの偏見にも意識が向きました。それらの経験がいま、作品としてアウトプットすることにつながっているのだと思います。
―スズキさんの作品のなかには、内臓や骨といった「身体の中」のモチーフを取り入れたものも多いですよね。美しさと生々しさのバランスをどのようにとっていますか?
内臓や骨を用いた表現にグロテスクさを感じる方もいるかもしれませんが、私はそうとは思っていないため、特別に考えることもないのです。普段は見えていないだけで、誰もが身体のなかに内臓や骨を持っている。当たり前のものとしてとらえているので、抵抗感を抱くこともない……そのような感覚でしょうか。

スズキさんが手がけるジュエリーブランド「eimiess」。写真のリップリングと指輪はコレクション「Murder in the Movie(=映画における殺人)」のアイテム。
古典美術を引用した独自の作品
―西洋の古典絵画を引用していることも、スズキさんの作品ならではの特徴かと思います。
幼少期から西洋絵画が好きで、よく美術館にも行きました。名画を鑑賞しているときも、描かれた人物の身体の中では内臓はこうなっているのかなと想像したり、絵の中の身体のパーツが浮かび上がってくるように感じたりすることがありました。それで、アートと骨や内臓といった身体の中のものを組み合わせたら面白いかもしれないと思うようになったんです。
西洋絵画、たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やゴッホの作品は、世界中の多くの方に知られているアートだと思います。こうした作品を引用することで、詳細に説明しなくても、鑑賞される方が作品のコンセプトや雰囲気を自然に感じ取っていただけるのではないかと考えています。
作品制作の初期には、昔の名画に解剖学的な要素を少し加えた、比較的シンプルな構成の作品が多かったのですが、最近では元の作品が容易にはわからないほど複雑な構成の作品も増えてきました。
ほかに意識していることは、西洋美術のアトリビュート(特定の人物や事柄などをひと目で表すアイコン的なモチーフ)を絵のなかに忍ばせることです。たとえば、聖母マリアのアトリビュートはユリの花。頭蓋骨は「人生のはかなさ」、砂時計は「人生の短さ」、レモンは「人生の苦しみ」を表します。ただ、作品を見てくださる方にそういった知識を求めているわけではなくて、あくまでも作品を楽しんでもらうためのいち要素として盛り込んでいきたいなと考えています。
幼少期から西洋絵画が好きで、よく美術館にも行きました。名画を鑑賞しているときも、描かれた人物の身体の中では内臓はこうなっているのかなと想像したり、絵の中の身体のパーツが浮かび上がってくるように感じたりすることがありました。それで、アートと骨や内臓といった身体の中のものを組み合わせたら面白いかもしれないと思うようになったんです。
西洋絵画、たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》やゴッホの作品は、世界中の多くの方に知られているアートだと思います。こうした作品を引用することで、詳細に説明しなくても、鑑賞される方が作品のコンセプトや雰囲気を自然に感じ取っていただけるのではないかと考えています。
作品制作の初期には、昔の名画に解剖学的な要素を少し加えた、比較的シンプルな構成の作品が多かったのですが、最近では元の作品が容易にはわからないほど複雑な構成の作品も増えてきました。
ほかに意識していることは、西洋美術のアトリビュート(特定の人物や事柄などをひと目で表すアイコン的なモチーフ)を絵のなかに忍ばせることです。たとえば、聖母マリアのアトリビュートはユリの花。頭蓋骨は「人生のはかなさ」、砂時計は「人生の短さ」、レモンは「人生の苦しみ」を表します。ただ、作品を見てくださる方にそういった知識を求めているわけではなくて、あくまでも作品を楽しんでもらうためのいち要素として盛り込んでいきたいなと考えています。

美しいものを食べて生きる高貴な人たちをテーマにした作品《Epicure Gourmet》。「食事は他の命を食べて生きるということですから、頭蓋骨のモチーフを忍ばせています」とスズキさん。
―アート作品を制作することと、ジュエリーなどのプロダクトをつくることはどう住み分けしているのでしょうか? 取り組むうえで意識の違いはありますか?
自分の意識という意味では、すべて同じです。ただ使っている脳の分野は違うかもしれません。ジュエリーも、1点ものであればアート作品と同じように制約を気にせずつくることができますが、多くは量産する前提でつくっているものです。「原型から型を取る」といった工程から逆算してデザインを考えたり、使う石にまつわる制限を考慮したり、コレクション全体のバランスを考えたりもしています。そういう点で頭を使う部分が違うかなと感じます。
自分の意識という意味では、すべて同じです。ただ使っている脳の分野は違うかもしれません。ジュエリーも、1点ものであればアート作品と同じように制約を気にせずつくることができますが、多くは量産する前提でつくっているものです。「原型から型を取る」といった工程から逆算してデザインを考えたり、使う石にまつわる制限を考慮したり、コレクション全体のバランスを考えたりもしています。そういう点で頭を使う部分が違うかなと感じます。

2024年にスズキさんがアートディレクションを担当した、ニュウマン横浜のクリスマスキャンペーンのメインビジュアル。
はじめての作品購入も後押ししたい
―今回のLUMINE ART FAIRでは、どのような作品を出展する予定ですか?
若い方も手に取りやすいアートプリントや小さいサイズの作品など、無理なくほしいものを選んでもらえるラインナップを用意しているところです。
ニュウマン横浜のクリスマスキャンペーンのビジュアルや館内ディスプレイにも使ったタロットの絵をアートプリントにして持っていく予定です。それから、いま(取材時)中国・上海で滞在制作をしているので、上海のアンティークマーケットで見つけたフレームや写真を使ったアナログコラージュの小さい作品も持っていきたいと思っています。普段アナログ手法だけを使ったコラージュはあまりしないのですが、いましかできない作品ですし、新しい挑戦にもなるので、なんとか間に合わせたいですね。
これまでに開いた個展では10代を含む幅広い年齢の方が見にきてくださっていて、「はじめてアート作品というものを購入しました」と買っていただくこともありました。
アートって、人生を豊かにするもののひとつだと思うんです。部屋に1輪の花を飾ることにも似ているような気がして。私が初めてアートを購入したのは、18歳か19歳のときでした。どうしてもほしくて、はじめてクレジットカードの分割払いで買って……その絵はいまも大切に飾っています。
―LUMINE ART FAIRは、まさに“最初の1点”を買う機会としてぴったりですね。
そうですね。作品をその日に持って帰ることができることもすごく魅力的だと思います。
2024年のLUMINE ART FAIRにお邪魔させていただいたとき、会場の雰囲気がとても良くて、作家さんから直接、丁寧に作品の説明をしていただきました。ほかのアートフェアではキュレーターやギャラリーの方が説明してくれることが多く、作家が会場にいることはあまりありません。今回は私も会場に可能な限りいる予定なので、ぜひ来場者の方とお話しをしたいです。
私は新宿駅の南口にある文化学園大学出身で、ルミネ新宿を通って大学に行き、帰りにもよくお買い物をしていました。そんな思い出のあるルミネのアートフェアに参加できることがとてもうれしいです。来場者の方々にも楽しんでいただけるように頑張りたいですね。
―海外での活動も増えていますが、今後の活動について目標はありますか?
これから先も長くフルタイムのアーティストとして活動していけるよう、幅広く取り組んでいきたいです。具体的には、平面作品の制作や個展の開催にとどまらず、昨年ニュウマン横浜で担当させていただいたように、商業施設などパブリックな場所での展示や装飾に携われたらと思っています。同時に国内外のさまざまな景色を見て、いろんな方と関わりながら創作活動を続けていきたいですね。
PROFILE
スズキエイミ/現代美術家・ジュエリーデザイナー・マルチアーティスト
1993年、東京都生まれ。2016年、文化学園大学 造形学部 ジュエリー・メタルワークコース卒業。生や偏見、祈りをテーマとし、古典美術を現代に落とし込んだコラージュにペインティングを組み合わせた平面作品を制作する他、金工作品やオブジェなども手掛ける。国内外で精力的に展示活動を行うかたわら、アートディレクションやファッションブランドとのコラボレーションの他、CDジャケットや装丁の描き下ろし等、その活動は多岐にわたる。2022年夏にジュエリーブランド「eimiess」を始動。
https://www.eimi-suzuki.com/
https://eimiess.stores.jp/
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LUMINE ART FAIR – My 1_st Collection Vol.4-
〔日時〕2025年11月1日(土)・2日(日)11:00~19:00/11月3日(月・祝)11:00~17:00
〔場所〕ルミネゼロ(東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55 ニュウマン新宿 5F)
〔入場料〕無料
https://www.lumine.ne.jp/lmap/fair/2025lmaf/
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■あわせて読みたい
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若い方も手に取りやすいアートプリントや小さいサイズの作品など、無理なくほしいものを選んでもらえるラインナップを用意しているところです。
ニュウマン横浜のクリスマスキャンペーンのビジュアルや館内ディスプレイにも使ったタロットの絵をアートプリントにして持っていく予定です。それから、いま(取材時)中国・上海で滞在制作をしているので、上海のアンティークマーケットで見つけたフレームや写真を使ったアナログコラージュの小さい作品も持っていきたいと思っています。普段アナログ手法だけを使ったコラージュはあまりしないのですが、いましかできない作品ですし、新しい挑戦にもなるので、なんとか間に合わせたいですね。
これまでに開いた個展では10代を含む幅広い年齢の方が見にきてくださっていて、「はじめてアート作品というものを購入しました」と買っていただくこともありました。
アートって、人生を豊かにするもののひとつだと思うんです。部屋に1輪の花を飾ることにも似ているような気がして。私が初めてアートを購入したのは、18歳か19歳のときでした。どうしてもほしくて、はじめてクレジットカードの分割払いで買って……その絵はいまも大切に飾っています。
―LUMINE ART FAIRは、まさに“最初の1点”を買う機会としてぴったりですね。
そうですね。作品をその日に持って帰ることができることもすごく魅力的だと思います。
2024年のLUMINE ART FAIRにお邪魔させていただいたとき、会場の雰囲気がとても良くて、作家さんから直接、丁寧に作品の説明をしていただきました。ほかのアートフェアではキュレーターやギャラリーの方が説明してくれることが多く、作家が会場にいることはあまりありません。今回は私も会場に可能な限りいる予定なので、ぜひ来場者の方とお話しをしたいです。
私は新宿駅の南口にある文化学園大学出身で、ルミネ新宿を通って大学に行き、帰りにもよくお買い物をしていました。そんな思い出のあるルミネのアートフェアに参加できることがとてもうれしいです。来場者の方々にも楽しんでいただけるように頑張りたいですね。
―海外での活動も増えていますが、今後の活動について目標はありますか?
これから先も長くフルタイムのアーティストとして活動していけるよう、幅広く取り組んでいきたいです。具体的には、平面作品の制作や個展の開催にとどまらず、昨年ニュウマン横浜で担当させていただいたように、商業施設などパブリックな場所での展示や装飾に携われたらと思っています。同時に国内外のさまざまな景色を見て、いろんな方と関わりながら創作活動を続けていきたいですね。
PROFILE
スズキエイミ/現代美術家・ジュエリーデザイナー・マルチアーティスト
1993年、東京都生まれ。2016年、文化学園大学 造形学部 ジュエリー・メタルワークコース卒業。生や偏見、祈りをテーマとし、古典美術を現代に落とし込んだコラージュにペインティングを組み合わせた平面作品を制作する他、金工作品やオブジェなども手掛ける。国内外で精力的に展示活動を行うかたわら、アートディレクションやファッションブランドとのコラボレーションの他、CDジャケットや装丁の描き下ろし等、その活動は多岐にわたる。2022年夏にジュエリーブランド「eimiess」を始動。
https://www.eimi-suzuki.com/
https://eimiess.stores.jp/
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LUMINE ART FAIR – My 1_st Collection Vol.4-
〔日時〕2025年11月1日(土)・2日(日)11:00~19:00/11月3日(月・祝)11:00~17:00
〔場所〕ルミネゼロ(東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55 ニュウマン新宿 5F)
〔入場料〕無料
https://www.lumine.ne.jp/lmap/fair/2025lmaf/
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