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ゆったり英気を養う冬。静かに世界を見渡せば、新たな季節への希望が見えてくる

2025.10.09

「ニュウマン的アートミュージアム」をテーマに、日常とは少し違う体験ができるニュウマンの個性を四季それぞれに投影した2025年のシーズンビジュアル。1年の締めくくりとなる冬は「Creating Resilience —今いる世界・場所でレジリエンスを蓄える」をコンセプトに、穏やかかつ幻想的な世界を表現しました。コンセプトへの想いやビジュアルの表現について、クリエイティブディレクターを務めるSIMONEの渡辺琢磨さんに伺いました。

厳しい寒さのなかにある柔らかさとこれから先への期待感

ファンタジックなワクワク感に包まれた春の世界観、インスピレーションを呼び覚ます多彩な光をつくりだした夏、動きとリズムで織りなした没入感のある秋の時間。それぞれの季節を経て、この冬のビジュアルは「少し落ち着いた雰囲気にしてコントラストをつけたかった」と渡辺さんは話します。

「ここ数年、社会は目まぐるしく変化しましたし、今年の夏も厳しい猛暑で、僕らはやっとそれらを乗り越えたところ。だからここで少し休憩してもいいんじゃないかなと、静的で穏やかな気持ちになれるようなクリエイティブがいいなと考えました。コンセプトの『Creating Resilience -今いる世界・場所でレジリエンスを蓄える』には、次の季節に向けて英気を養おう、エネルギーを溜めるような時間にしようという想いを込めています」

幻想的な植物が生み出す冬の風景。それは寒々しい景色のはずなのに、同時に凍結した地表の植物がゆっくりと溶け出すくらい、温かく柔らかい空気に包まれている空間にも見えます。静的ななかにも、世界の息遣いを感じられるビジュアルです。

CGの制作中の画面キャプチャ

わたしにもある。世界の景色を変える自分だけのフィルター

ビジュアルに添えられたメッセージは「The Power of Filter」。現実は変えられなくても、霞みがかった冷たい風景のなかに、心が少し暖かくなるような気配を見つけられる。誰もがそんな力を持っていると、渡辺さんは考えます。

「僕たちはみんな自分のフィルター、つまり“色眼鏡”を通して世の中を見ています。それは必ずしもネガティブなことばかりではなく、フィルターのかけ方しだいで自分が望む世界を見られるということでもある。冷たい現実のなかにも理想を見つけられる、そんな想像力が人間にはあると思っています」

慌ただしく駆け抜けてきた心や身体をちょっと落ち着かせ、次に来る季節への期待に心を膨らませよう。「The Power of Filter」は、現実に向き合い、ここまでがんばってきたわたしたちへのメッセージです。
ムービーではガラス越しに見える凍りついた世界が、自分のフィルターを通して色彩や空気感が柔らかく変化していく様子が表現されています。
CGの制作は春・秋と同じく、韓国のクリエイティブスタジオ・HERE Creativeが担当しました。非現実で幻想的ながら、あくまで質感はリアルに。そうすることでつくり出した情緒的で親しみを感じられる世界観は、HERE Creativeだからこそ具現化できたといいます。

「オブジェクトをリアルにつくり込んだり、エフェクトをうまく使って世界観に変化や動きを表現するスキルには信頼がありました。今回はフィルターをかける前と後の世界の変化の出し方にこだわり、1枚のビジュアルでもその変化の時間や変わり方が伝わるように、表現の強さなどを何度もやりとりしながらチューニングしていきました」と渡辺さん。

細やかな時間の流れを表現したビジュアルには、「The Power of Filter」のメッセージを体現した、自分だけのフィルターを通した理想の世界が創造されています。HERE Creativeからは「制作のすべての過程が大きな喜びだった」とコメントが寄せられました。

「SIMONEさんの明確でインスピレーションに満ちたビジョンがあったため、ためらうことなくクリエイティブな制作に集中することができました。創造的でありながら親しみやすさと生命力を込めた植物を描き出し、フィルターを通して世界が大きく変化する表現は、風景そのものが生きているように感じられることを目指しました」(HERE Creative)

リアルな植物のつくり込みにも注目

日常をアップデートしたニュウマンの挑戦

2025年のシーズンビジュアルでは、「ニュウマン的アートミュージアム」を大きなテーマとして、新たな世界を創造してきた渡辺さん。1年間の制作を振り返り、最後にこんなふうに語りました。

「CGを取り入れたことで、春夏秋冬を通してそれぞれの“1枚の絵づくり”に集中できたのはとてもおもしろかったですし、本当にいい経験になりました。今回の冬のビジュアルは、世界を自分の期待するように解釈したりして、ポジティブになってもいいんだという、ストレートなメッセージを込めたクリエイティブになったと思います。現実はいろいろ厳しいこともあるけれど、心が少し温かくなるような瞬間を感じてもらえたらうれしいです」


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Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Video Director:Shintaro Kamei(SIMONE INC.)
Art Director:Naoki Mizobe(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)
Creative & Production Agency:HERE CREATIVE
3D Artist:DETA
Retouch:VITA INC.


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