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“一生の相棒”になる鍋を。持ち主の心にも優しい「バーミキュラ」の思い

2025.11.06

メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー調理器ブランド「バーミキュラ(VERMICULAR)」。無水調理ができる鍋や余分な水分を瞬間蒸発させるフライパンなど、素材本来のおいしさを引き出すアイテムで人気を集めています。ブランドの哲学を広報の加藤久美子さんに尋ねると、そこには「一生の相棒として、製品を長く使い続けてほしい」というつくり手の熱い思いがあふれていました。ニュウマン高輪にオープンした話題の旗艦店についても伺いました。

1万個以上の試作の末、高い密閉性を実現

「バーミキュラ」といえば、無水調理ができる鍋のイメージが強い人も多いだろう。ブランドを立ち上げたのは、1936年創業の「愛知ドビー」という名古屋市の鋳造メーカー。「自分たちにしかつくれない世界最高の製品をつくりたい」という情熱のもと、開発をスタートしたのが2007年のこと。熱伝導率の高さ、保温性の高さ、遠赤外線効果といった鋳物ホーロー製の鍋の利点と、フタと本体の高い密閉性を兼ね備えた「無水調理可能な鋳物ホーロー鍋」を生み出すべく、研究と試作を重ねたが、その道のりは簡単ではなかったそう。

「特に難しかったのは、高い密閉性を実現することでした。というのも、一般的な鋳物ホーローは焼成する際に高熱の影響でどうしても変形してしまうんです。フタと本体を重ねたときにピタッと閉まるように土台を設計しても、焼成後はそのせいで、密閉度が下がってしまいます」(バーミキュラ 広報・加藤久美子さん)

開発者たちは3年もの間、1万個以上の試作品をつくりながら粘り強く研究。最終的には13種の金属を独自に配合することで、焼成しても変形しない鋳物ホーロー鍋を実現した。それが、2010年にデビューしたバーミキュラの最初の製品「オーブンポットラウンド」。無水調理ができ、しかも、蓄熱性が高く遠赤外線の効果で食材の内側からじっくり火が入るこの鍋は「いつもと同じように調理をしても、グンとおいしくなる」とたちまち評判となった。

バーミキュラ 広報の加藤久美子さん。ファンミーティングの企画運営も行う。「バーミキュラ フラッグシップショップ ニュウマン高輪店」にて

愛用品が生まれ変わるサステナブルなサービス

食材にゆっくりと熱が伝わりジューシーに仕上がる、さびにくくてお手入れが簡単など、メリットの多い鋳物ホーロー鍋だが、どうしても避けられないのは経年劣化。使用頻度や状況にもよるが、頻繁に使っていると、購入から10年前後で表面の汚れが落ちにくくなったり、ホーローがはがれたりといった現象が起きてしまうのが一般的だ。そこで、バーミキュラではブランド誕生当初から「リペアプログラム」を実施。細かなひび割れができてしまったオーブンポット、ウッドハンドルの焦げや変色が気になるフライパンなどを、新品同様に生まれ変わった状態で手元に戻してくれる。傷んだホーローをはがし、再コーティングするので、ホーローのカラーを変更することも可能だ(生産終了カラー、限定販売カラーを除く)。

「私たちはもともと小さな町工場で、ブランド立ち上げ当初はほとんど知名度がありませんでした。にもかかわらず、私たちを信用して製品を買ってくださったみなさまには本当に感謝の思いでいっぱいですし、その信用を保ち続けたい。ですから、製品を販売したら終わりというのではなく、購入後もずっと楽しんでいただくために、アフターサービスに力を入れています」

さらに、2023年からは、愛用していたバーミキュラ製品を再び鉄に溶かして新たな製品へとつくり替えてくれる新サービス「リクラフトプログラム」もスタート。例えば、家族が増えた、子どもが巣立って夫婦2人暮らしになったといったライフスタイルの変化にあわせて、製品のサイズアップやサイズダウンができる。また、オーブンポット1をより高性能な2にモデルチェンジするといったアップデートにも対応している。

ずっと大事にしてきた製品を、また新たなかたちでずっと使い続けられるのは、環境に優しいのはもちろん、持ち主の心にも優しい。いずれも有料だが、新品に買い替えるよりは安いコストで済む点もうれしいポイントだ。

「製品をつくる際にどうしても製品になりきらない金属の余りが出てしまうのですが、バーミキュラ用に独自に配合した金属の場合は完全にリサイクルするのが難しく、半分ほどしか再利用できていませんでした。ですが、近年の資材の高騰の影響もあり、製造のプロセスを見直した結果、100%再利用できる方法を見つけ出すことができました。そのおかげで、『リクラフトプログラム』を提供できるようになったんです」

「バーミキュラ レストラン ザ ファウンダリー ニュウマン高輪店」のディナーメニューの一例。前菜からサラダ、薪火料理、デザートまで、すべての料理にバーミキュラを使用

ファンのリクエストから新製品が誕生

こうしたアフターサービスを含めて、バーミキュラが大切にしているのは「使い捨てないモノづくり」。ブランド誕生から10年間はモデルチェンジを行わず、新製品をたった3型しか出さなかったのも、次から次へとモノをつくっては売るという市場のあり方に疑問を感じ、自分たちが心の底から素晴らしいと思える製品だけを丁寧に提供していきたいと考えていたからだった。

しかし、近年ではバーミキュラのファンから「新製品を出してほしい」という声が届くように。そういったリクエストの声と技術の進歩が後押しとなり、今年はスープポット、雪平鍋、テーブルウェアの3製品を発表することとなった。

「2023年からファンミーティングを開催しているのですが、卵焼きやトーストがおいしく焼ける『エッグ&トーストパン』は、参加者の声から生まれたものです。これからもファンのみなさんの感想やリクエストを伺いながら、ともに歩んでいきたいと思っています。また、ファン同士の交流の場をつくることも、私たちが当初から力を入れているアフターサービスのひとつにもなるのかなと考えています」

「バーミキュラ レストラン ザ ファウンダリー ニュウマン高輪店」。開店前から行列ができることも珍しくないという

実際に食べて使って世界観を体感できる旗艦店

そんなバーミキュラの最新のニュースは、今年の9月にニュウマン高輪 North 2階にフラッグシップショップとレストラン、ベーカリーの3業態を集約させた店舗がオープンしたこと。

「バーミキュラの世界観を楽しんでいただくこと、バーミキュラ料理のおいしさを知っていただくこと、メイド・イン・ジャパンのモノづくりを感じていただくことを目指しています」

「バーミキュラ フラッグシップショップ ニュウマン高輪店」は、製品を購入する前に使い方などを試せるショップ。店内のキッチンでは試食のほか、実際に製品を使って調理を体験することもできる。バーミキュラの全ラインアップに加え、フラッグシップショップ限定の製品も揃う。

「バーミキュラ レストラン ザ ファウンダリー ニュウマン高輪店」では、バーミキュラの鋳物ホーロー製品と特製の薪窯を用いた本格的なバーミキュラ料理を味わえる。ランチタイムにぜひトライしたいのは、バーミキュラ料理の代表格である「無水カレー」。素材のもつ水分だけでじっくり煮込んだカレーは、野菜の甘みがたっぷり。ディナーもライスポットで低温調理したあとに薪火でグリルして仕上げた黒毛和牛のステーキをはじめ、バーミキュラの底力を実感できるメニューが並ぶ。

「バーミキュラ ポットメイドベーカリー ニュウマン高輪店」は、すべてのパンをバーミキュラで焼き上げるベーカリー。専用の鍋や食パン型を使って職人が手作りしたパンは、中はしっとり、外はパリッとした食感と奥深い甘みが魅力。無水カレーを包んで10cmのバーミキュラで揚げ焼きにした「バーミキュラの無水カレーパン」は、癖になるおいしさだ。

「バーミキュラの無水カレーパン」は「バーミキュラ ポットメイドベーカリー ニュウマン高輪店」の看板メニュー。うまみが凝縮された無水カレーを、絶妙な食感の生地が包み込む

食事は、毎日の暮らしのなかでもとても大切な要素。人生の豊かさに直結するものといっても過言ではない。料理が手軽においしく仕上がるバーミキュラは、日々の食事に寄り添ってくれる強い味方といえるだろう。

「ご愛用いただいているみなさんのなかには、バーミキュラの製品を相棒やお守りのように感じている、と言ってくださる方も多いんです。これからも、一生の相棒として楽しんでいただける製品を提供できるブランドであり続けたいと思っています」



■バーミキュラ
https://www.vermicular.jp/

>> ルミネ・ニュウマンのショップはこちら
※本記事は2025年10月31日に『&Illuminate』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi

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