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味わったことのない食体験が待つ!? 「ZEROCORNER」の隠れた秘密

2025.12.05

「ニュウマン高輪」にオープンした「ZEROCORNER(ゼロコーナー)」は、素材本来のおいしさや、野菜や肉、魚の低温熟成による食体験を楽しめる店舗。イートインメニューから物販コーナーの加工食品まで、どれもフレッシュな味わいが感じられるその裏側には、実は100年後の食の未来を見据えた新たな取り組みが隠れています。その秘密を、カフェ・カンパニー株式会社で新規事業を手がける星川智子さんに伺いました。

全国の食材がとれたてのおいしさのまま届く

ニュウマン高輪South1階の「ZEROCORNER(ゼロコーナー)」は、「ZEROから始まる新しい食の交差点」がコンセプト。日本初の鮮度保持技術「ZEROCO™(ゼロコ)」を活用した、今までになかったグルメスポットだ。店内は、朝食からランチ、カフェタイム、ディナーまで料理やドリンクを楽しめるオールデイダイニングと、日本各地の食材やクラフトドリンクなどを集めたマーケットゾーンで構成されている。

いちばんの特徴は、日本各地の食材を、ほぼとれたてのおいしさのままに味わえること。例えば、上の写真のイチゴのスムージーもそのひとつ。イチゴは足が早く、鮮度を保つのが難しい果物だが、ZEROCO™を使えば香りや酸味を保ちながら冷凍できる。そのため、こちらのスムージーも口に含むと、まるで生のイチゴを潰したかのようなみずみずしい風味が広がる。

「マーケットゾーンで販売している『フローズンフルーツ』も、やはりZEROCO™を使うことで、今までにない冷凍フルーツの食感をつくり出すことに成功しました」と、ZEROCORNERを企画運営するカフェ・カンパニー株式会社の星川智子さんは語る。

「従来の冷凍フルーツはジャリジャリとした食感で、ときには噛(か)み切れないことも。ですが、ZEROCO™で冷凍すると食材に含まれる水分をコントロールできるので、まるで天然のシャーベットのようなサクッとした食感に仕上がります」

社内で新規事業に取り組む、カフェ・カンパニーの星川智子さん

人手不足やフードロスなどの課題を解決

ZEROCO™を手がけているのは、カフェ・カンパニー株式会社の創業者で最高顧問を務める楠本修二郎さん。食料自給率の低さやフードロスなど、日本の食を取り巻くさまざまな課題に食産業が一丸となって立ち向かうべきという考えのもと、食品の鮮度を保つ知恵とテクノロジーを模索しているなかで出合ったのが、従来の冷蔵庫とも冷凍庫とも違う、ZEROCO™の基盤となる技術だった。

その魅力は、食材に適した低温高湿環境により品質劣化を防止し、鮮度とおいしさを保持できること。農業や漁業といった一次産業の現場にZEROCO™のコンテナを置けば、とれたての食材の鮮度を保ったまま大量に保管、物流ができ、物流コストの削減につながる。また、一般的な急速冷凍庫と比べると最大使用電力(設備容量)が低く、電力負荷も減らすことができる。さらに、消費者に食材本来のおいしさを届けられるだけでなく、食材の寿命が延びるので出荷管理がしやすくなること、加工の手間が減ることから、フードロスの削減や人手不足による業務過多の改善といったメリットも生まれる。

「日持ちしないことなどが理由で都市部にはなかなか大量には届かず、地元で処分されてしまう食材は全国に少なくありません。そういった食のミスマッチを解消していくことにもつながります」

川上から川下まで一気通貫で、食にまつわる社会課題を解決。日本の食産業の発展を支える基盤をつくることができるというわけだ。

マーケットゾーンで販売されているフローズンフルーツは、国産の果物100%でできている新食感の冷凍フルーツ。独特の食感とみずみずしい味わいが楽しい

食のサステナビリティを目指して

そんなZEROCO™を活用したZEROCORNERは、前述のようにとれたての食材のおいしさを提供する以外にも、「食のサステナビリティ」を見据えたいろいろな試みを行っている。飲食店でありながら店内に大規模な調理設備をもたない「キッチンレス」という発想もそのひとつ。外食産業が直面している人手不足、初期投資やオペレーションの負荷、フードロスといった課題を解決するためのアイデアだ。

「例えば、皮つきのジャガイモの場合、常温で長期保存すると、芽が出て食べられない部分が出てきてしまうこともあります。一方、ZEROCO™で低温熟成して甘みやうまみが増した状態で調理し、保管しておけば、おいしさが増すうえにフードロスを減らせます」

店内ではそれをスピードオーブンで温めて提供するだけなので、一から調理する手間も不要。いつでもどこでもおいしく味わえる食事を実現できるのも、安心・安全で健康的な食を誰もが選べる社会への一歩となる。

(右から)「鯖(さば)の塩麹 (こうじ)グリル」「皮つきジャガイモ」など、オールデイダイニングのすべてのメニューにZEROCO™を活用。いずれも素材のおいしさが引き出されていて、風味が豊か

生産者と生活者をつなぐ新たな食のかたち

ZEROCORNERという店名の「ZERO」には、「ゼロからの挑戦」「無駄な味付けゼロ」「フライヤーなどのキッチン設備ゼロ」といった意味が込められているそう。また、交差点や街角を表す「CORNER」には、「生産者×生活者」「地方×都市」「テクノロジー×文化」など、異なるものが交わる場でありたいという姿勢を示しているという。

今後は生産者とコラボレーションし、特定の食材にフォーカスした期間限定店舗を展開するなど、生産者の営みや思いを伝えるイベントを通して、新たな価値を生み出す場づくりにも取り組んでいきたいと星川さんは語る。

「ZEROCORNERでは、あえて今はZEROCO™については触れていません。なぜなら、テクノロジーを前面に押し出すよりも、食材の本来のおいしさを感じていただくことが大切だと考えているからです。もちろん、ZEROCO™に興味をもってお店にいらしてくださった方にはお伝えしていますが、ZEROCO™から始まる新たな食のかたちが暮らしのなかに自然に溶け込んでいくのが理想的かなと感じています」

ZEROCORNERの食の未来を育む試みは、まだ始まったばかり。どんな取り組みに挑んでいくのか、これからも目が離せない。

ニュウマン高輪に誕生したZEROCORNERは朝8時からの営業。朝早くからビジネスマンや犬の散歩ついでに立ち寄る人の姿もちらほら

■ZEROCORNER

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※本記事は2025年11月28日に『&Illuminate』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi

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