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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.24(選者:小谷実由さん)

2025.12.25

愛読家として知られ、自らもエッセイ集を刊行しているモデルの小谷実由さんが、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介する本企画。今回は「年末年始に読みたい本」をテーマとした特別編です。時間のあるお休み中にじっくり読みたい本、新しい年の始まりに読みたい本という視点で2冊をセレクトしてもらいました。

『おめでたい人』著:寺井奈緒美(左右社)

年末年始といえば、多くの人が一年を振り返り、この先の一年を見つめることをすると思う。新しい年がやってくると、私たちが口にする言葉である「あけましておめでとう」。意味もあまり深く考えずに少し照れながらも無意識に口にしていた十代の頃。そこからあっという間に大人になって、近ごろは何かを労るように、願うように口にするようになった気がする。元旦の晴れやかな空を眺めながら、少しでも「おめでとう」と思う瞬間がまた増えたらいいなといつも念じる。

歌人、土人形作家、エッセイストである寺井奈緒美さんの「おめでたい」をテーマにしたエッセイ&短歌集。パーティーピープルのような明るい人間ではないけれど、「パーティー」という言葉が好き。反省が止まらないクリスマスイブに行った電動自転車試乗コース。おめでたさの象徴みたいな花である蘭に呼ばれ訪れた「JOGA洋らん展」。おめでたいムードの下地を作ることができる便利な言葉「お見事」。“ぽつぽつとハッピーエンドの付箋を拾っていたらここに来ました”。天気の良い冬に浴びる窓際の陽だまりのようなあたたかな一首がこの一冊を締めくくる。日常に潜むおめでたい瞬間を集めていく寺井さんの姿がページを開くたびにキラキラとこぼれ落ちる、読んでいるこちらも今すぐにおめでたさをすくいあげてみたくなる。

『よくわからないまま輝き続ける世界と -気がつくための日記集』著:古賀及子(大和書房)

来年こそは、今年こそは。年末年始は何か新しいことを思い立つ瞬間がある。毎年そんな時期に思い立つことの一つとして「日記を書く」がある。最初の数日は年始の清々しさや始まったばかりの高揚で自分の内側に向かう気持ちに余裕があり、気分的にも時間的にもゆっくりたっぷりと書くことができる。それが日常のリズムに戻ると、どんどんとそこに充てる熱量が下がってしまう。そしてろくに着手できずに気づけば年末へ。気を取り直して来年こそは……。新しいことに取り組むとき、この繰り返しにならないようにするためにはいったいどうしたらいいものか。

読めば思わず自分も日記を書きたくなってしまう、日記エッセイのエキスパート古賀及子さんによる日記集。“いつもの日常に、今まで気になっていたけど試みたことがなかったものを取り入れてみることにした“。駅にあるワーキングブースを使ったら、よく行く喫茶店でコーヒーの回数券を買ったら、写真を紙焼きにしてみたら、パスタソースをうどんに和えたら、普段着でウォーキングをしたら……誰しもがふと気になったことがあるであろう物事をしっかりとキャッチし、古賀さんは味わい尽くす。これはただの体験記ではなく正真正銘の日記。鮮やかな試みを続ける最中も、彼女は子供たちのために弁当を作り、作業場で仕事をし、読書をしている。新しいことをするということは、生活の中に自然に組み込むことができるのかもしれない。この本は新しいことに尻込みしてしまう人々の背中をふわりと押してくれ、一緒に並走してくれるような頼もしい一冊だ。

小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』『集めずにはいられない』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください


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