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リメイクやエコ素材で、人にも、地球にもやさしく。ファッションブランド「BONUM」が目指すもの

2020.12.08

デニムのリメイクブランドとしてスタートし、2019年春夏シーズンからレディースブランドとして本格的に舵(かじ)を切った「BONUM(ボナム)」。時代の移り変わりとともにアップデートする一方で、ブランド誕生以来ずっと変わらないのは、サステナブルであることへの強いこだわり。現在の取り組みや今後の展望について、お話を聞きました。

リメイクアイテムのほか、エコ素材を用いた新商品の開発も

「BONUM」と聞いて、デニムのリメイクを思い浮かべた人は少なくないだろう。スタイリングだけでなく、アイテムの生地や縫製にもこだわるファッショニスタに向けて、同ブランドが産声を上げたのは2013年のこと。裁断から縫製、加工までの一連の作業を店内で行う、デニムのファクトリー兼オーダーショップ「FROM BONUM(フロム ボナム)」として東京・渋谷でスタートを切った。

2015年には、よりサステナブルに注力したブランドへと進化。需要がないサイズ感の古着やダメージが大きいヴィンテージ品など、単体では再生不能な部材を用いて、新たな商品へと再構築した。商品は店頭のみならず、国内外に向けた卸業態も開始するように。2019年春夏シーズンからは、ユニセックスブランドからレディースブランドへとリニューアル。「FREEDOM(自由)」「BASIC(普遍性)」「CREATIVE(創造性)」などのキーワードのもと、今の気分を取り入れたリメイクプロダクトのほか、サステナブルな素材を使用したオリジナル商品の開発も行っている。

ブランドの顔ともいえるデニムのリメイクアイテム。このほか、リメイクシャツにもファンが多い

ブランドに伸びしろを感じ、経理担当からマネージャーへ

BONUMがレディースブランドへと生まれ変わるにあたり、立役者となったスタッフのひとりが、マネージャーの井上祥さんだ。もともとはBONUMを擁するベイクルーズで経理を担当していたが、社内の女性活躍推進プロジェクトの一員として活動するなかで、「与えられた数字を計算するよりも、数字を積極的に“生み出す”仕事」に興味を抱くようになったという。そこで、「これからの時代に向けてまだまだ伸びしろがある」と感じたBONUMへの異動を願い出て、3年前にスタッフとして仲間入りした。

店頭での販売や本社での売り上げ管理などを経て、BONUMがレディースブランドへリニューアルするタイミングで現職に就任した。現在は、商品の企画からMD(マーチャンダイジング)、店舗の売り上げやスタッフの管理まで、BONUMのほぼすべてに関わり、多忙な日々を送っている。

BONUMのマネージャー、井上祥さん。商品の開発や店舗のスタッフ管理など仕事内容は多岐にわたる

長く大事に着てもらうために、着心地のよさは重要

2019年にレディースブランドへとリニューアルするにあたり、特に力を入れたのが、エコ素材を用いたオリジナル商品の開発だった、と井上さんは振り返る。

「近年、ネット通販の需要がどんどん高まっていく中でもお客様により満足していただくには、ECサイトを通して、リメイクアイテムのような一点ものだけでなく、個体差のないオリジナルの新商品を数多く提供していく必要もあると考えるようになりました。とはいえ、ただ単にトレンド感があるだけではBONUMらしくない。できるだけ環境に配慮した素材を用いながら、デザイン性も重視した商品の開発を心がけています」

再生繊維やオーガニックコットンといったエコ素材を極力取り入れたアイテムの数々は、シンプルかつ洗練されていて、大人のおしゃれな女性のデイリーウエアとして重宝するものばかり。手に取ってみると、肌触りのよさにも驚かされる。

「長く大事に着ていただけることこそがサステナブルだと思うので、オリジナル商品もリメイクアイテムも、着心地のよさにはかなりこだわって作っています。私たち自身が着たいと思えて、実際に着てみるとラクだけどちゃんときれいに見える。そんなアイテムを目指しています」

コロナ禍の今年は家で過ごす時間が長くなり、リラックス感のある服を買い足したいという女性が増えている。BONUMのアイテムはそんなニーズにもまさにフィットしている。

「最近は、来店されるお客さまのサステナブルへの意識が高まってきているのを感じます。BONUMでは以前からショッパーを紙製ではなく布製のものでご用意しているのですが、購入の際に『ショッパーは不要です』とおっしゃる方が増えてきました。エコ素材に関心をもっていらっしゃる方も多いですね」

原宿店のB1フロアには小さな工房も。タイミング次第ではパンツの裾上げなど、その場で仕上げてもらえることも

いずれは、世界の誰かを救えるブランドに成長したい

今後も「リメイクアイテムを通して一点ものの価値を知ってもらう」「新商品をきっかけにサステナブル素材の魅力を感じてもらう」という二本柱を軸に、アイテムを展開していきたいと井上さんは語る。現在、ECサイトでは新商品のみを扱っているが、今後は一点もののリメイクアイテムもオンラインで購入できるようにシフトしていくという。

「BONUMを2019年にリニューアルする際、最初にプランナー兼デザイナーの女性ととことん話し合ったのが、BONUMの存在意義って何だろう? ということでした。自分たちのブランドや会社さえよければそれでいいということは絶対にない。商品に関しても、ただリメイクをしているだけではサステナブルとは言えないのではないか。あれこれ考え抜いた末に到達したのが、今のBONUMの形なんです」

でも、決して現状に満足しているわけではない、と言葉に熱を込める。

「人にやさしくありたいと同時に、地球にやさしくありたい。それがBONUMとして、また私個人としても目指している姿勢です。いずれはBONUMのアイテムを買うことが寄付につながり、海外の生産拠点や途上国の雇用を支援できるような社会貢献の仕組みも作っていきたい。お客さまに喜んでいただくだけでなく、世界の誰かを救うことができる、そんなファッションブランドでありたいと願っています」

商品はほとんどがオリジナルの新商品またはリメイク品だが、一部、セレクトアイテムも扱う。こちらのコートは岡山のブランド「ARTE POVERA(アルテポーヴェラ)」発、古い寝袋をコートにリメイクしたもの

■BONUM
https://bonum.jp/


※本記事は2020年12月8日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura Photograph: Manami Takahashi Edit: Sayuri Kobayashi

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