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クローゼットの奥に開く冬の入口。五感を刺激するシーズンディスプレイ

2025.10.17

2025年10月9日(木)から11月19日(水)までルミネ各館で展開されている冬のシーズンディスプレイ。「Multisensory Interface -多感覚に楽しむ冬のスタイル」をテーマに、巨大な服と雪景色が目を引く、どこかファンタジックな世界観が広がります。

ディスプレイのデザインを手がけたのは、REFLECTAの岡﨑真理子さんと倉品美沙さんです。テーマからどのようにコンセプトを導き出し、最終的なアウトプットに至ったのか、制作の裏側を伺いました。

児童書からひらめいた「多感覚」の世界

初回のオリエンテーションでは「今期のファッショントレンドやキーカラーなどのほか、『多感覚』『冬の始まり』といったキーワードをルミネさんからインプットしていただきました」と岡﨑さん。それらの情報から思い起こしたのは、子どものころから愛読している児童書のワンシーンでした。

「イギリスの児童書『ナルニア国物語』に出てくる不思議なクローゼットが、ぱっと思い浮かびました。小さな女の子がクローゼットの中にもぐり込み、大好きな毛皮のコートに頬ずりをしたり、匂いを嗅いだりして五感を使いながら奥へ奥へと進んでいくと、いつのまにか冬の森に出るというシーンなんです。『子どもの鋭敏な五感で感じる冬の始まり』という感じが今回のテーマにぴったりだなと思い、ディスプレイデザインのなかにそのイメージを引用することにしました」

AIが描いた非現実的な服

鼻をくすぐる服の匂い、頬に触れる質感、服をかき分けたときの手の感覚……。そんな五感や、空間・時間・質感の交差を体感的に表現したい。岡﨑さんは倉品さんと相談するなかで、引用元であるナルニア国の世界観をそのまま再現するのではなく、引用しつつもまったく違う、現代的な感じにしたいと考えたといいます。

イメージしたのは、違和感のあるスケール感になっていたりと、どこか非現実的に見える『子供の感覚で見た大人のクローゼット』。その表現にひと役買ったのは、生成AIでした。

「クローゼットの両側にかかっている巨大な服の画像を生成AIでつくることにしました。ありそうでないようなフォルムのものや、素材感がちょっと変だったりするものができるんじゃないかと思ったんです。

素材や柄、色、フォルムを指定しつつ、“エキセントリックだけどウェアラブル”といった言葉を加えた長文プロンプトで20着ほどの服を生成しました。ウィンドウごとに異なるデザインの服を展示しているので、ぜひ見比べてほしいですね」

これまでに素材づくりの一部にAIを取り入れたことはあったものの、そのまま画像として使うのは今回が初めてという岡﨑さん。「ウィンドウの中のマネキンが着る本物の服と切り分けるという意味でも、うまくはまったのではないかと思います」と続けました。

制約さえも活かす空間づくり

デザインを検討するにあたっては、岡﨑さんが平面で描いたデザインを倉品さんがモデリングして立体化し、シミュレーション。そのうえでまた色味や細部を調整するというように進められました。

もともと、学生時代は建築を学んでいたというおふたり。「2Dのなかに3D的な手法や考え方をミックスすることは、私たちのデザインの特徴のひとつかもしれません」と岡﨑さんは話します。

「平面であるグラフィックデザインでも、テクスチャーというか、素材感や紙、印刷にこだわっている作品が多いですね。今回も、たとえば巨大な服をビニールの素材に印刷する際、表側から見たときに素材が持つ光沢感が出るよう、あえて裏側に印刷しています」

また倉品さんは、ウィンドウという限られた空間のなかで、いかに奥行きを感じさせるかという点にも注力したといいます。

「ウィンドウは複数あってそれぞれに空間の形が異なり、場所によってはすべてを立体物で再現できないところもあります。それを逆手に取って面白く活かすという意味でも、3Dモデリングで詳細につくり込んだクローゼットの床や扉の画像を印刷したシートを貼り、擬似的にそれらが存在するように見せることで、さらに奥行きを感じるようにしています」

子どものころ感じたワクワクを、もう一度

今回のウィンドウディスプレイについて「いろいろな素材感を織り交ぜ、その組み合わせにもこだわりました。テクスチャーの違いを楽しんでいただけたらなと思っています」と倉品さん。続いて、岡﨑さんもこう語りました。

「幼いころにお母さんのクローゼットを覗いたときのような、ワクワクや憧れる気持ちを思い出すきっかけになったらうれしいです。冬は素材感が豊かで楽しい季節。異なる素材やテクスチャーを発見しながら、多角的にファッションを楽しんでいただきたいです」
期間/2025年10月9日(木)〜11月19日(水)
ディスプレイテーマ/Multisensory Interface -多感覚に楽しむ冬のスタイル
実施館/ルミネ新宿、ルミネ有楽町、ルミネ北千住、ルミネ池袋、ルミネ町田、ルミネ荻窪、ルミネ大宮、ルミネ横浜、ルミネ立川


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Art Direction & Design/REFLECTA, Inc.(岡﨑真理子+倉品美沙) @reflecta.jp


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