ART

色彩が目を引くフリースタイルの作品。「好き」も「遊び」も創作活動とつながっている
2026.02.26
デザイナー、イラストレーター、そしてアーティストとして、さまざまな分野で活動している渡辺明日香さん。抽象的な画面構成と鮮やかな色使いが特徴の作品は、『FUJI ROCK FESTIVAL』のポスターやキービジュアルなどでも知られています。ルミネ・ニュウマンでは、2025年秋に続き、2026年春もニューショップ/リニューアルショップを告知するキャンペーンのキービジュアルを担当。渡辺さんに、ご自身の活動や「好き」と向き合うこと、今回のビジュアルへの思いなどを伺いました。
PROFILE
渡辺明日香/デザイナー、イラストレーター、アーティスト
多摩美術大学造形表現学部でデザインと美術を学んだあと、広告プロダクションやデザイン事務所での経験を経て、フリーランスとして活動。『FUJI ROCK FESTIVAL』とのコラボレーションなど多様なプロジェクトに携わり、デザインとアートの境界を越えた独自のスタイルを確立して国内外で注目を集めている。
https://asukawatanabe.com
PROFILE
渡辺明日香/デザイナー、イラストレーター、アーティスト
多摩美術大学造形表現学部でデザインと美術を学んだあと、広告プロダクションやデザイン事務所での経験を経て、フリーランスとして活動。『FUJI ROCK FESTIVAL』とのコラボレーションなど多様なプロジェクトに携わり、デザインとアートの境界を越えた独自のスタイルを確立して国内外で注目を集めている。
https://asukawatanabe.com

2025年5月に開催した個展『Shapes of Rhythm』。リズムという見えない動きや時間の流れを、抽象的な構成によって視覚化することを試みた。
プロジェクトに合わせて表現もスタイルも変化
―渡辺さんの現在の活動について教えてください。
グラフィックデザイナーを名乗ることが多いのですが、プロジェクトによって役割はいろいろです。ビジュアルを使ったコミュニケーションツールを手がけることがメインで、イラストを描くこともあります。ほかに、アートディレクションやキュレーションを担当することも。最近は、自分がいったい何屋なのかわからない感じになってきました(笑)。
大学卒業後に広告のデザインを手がけていたこともあり、ひとつの型や作風を持つというより、その都度スタイルを変化させるようになったのだと思います。イラストレーターとして仕事をするときも、そのプロジェクトに合わせて表現は変わります。それでも新しい作品を見た周囲の人たちからは「明日香っぽいね」と言われることも多いです。
―プロジェクトに合わせて、さまざまなスタイルをとっているのですね。
そうですね。一方で、やりたいことやビジョンが割とはっきりしているタイプでもあります。「私はこういうビジュアルがいいと思いますがどうですか?」「こういうスタイルで進めたいです」とコミュニケーションをとりながら、私らしさを活かせるように提案させていただいています。
グラフィックデザイナーを名乗ることが多いのですが、プロジェクトによって役割はいろいろです。ビジュアルを使ったコミュニケーションツールを手がけることがメインで、イラストを描くこともあります。ほかに、アートディレクションやキュレーションを担当することも。最近は、自分がいったい何屋なのかわからない感じになってきました(笑)。
大学卒業後に広告のデザインを手がけていたこともあり、ひとつの型や作風を持つというより、その都度スタイルを変化させるようになったのだと思います。イラストレーターとして仕事をするときも、そのプロジェクトに合わせて表現は変わります。それでも新しい作品を見た周囲の人たちからは「明日香っぽいね」と言われることも多いです。
―プロジェクトに合わせて、さまざまなスタイルをとっているのですね。
そうですね。一方で、やりたいことやビジョンが割とはっきりしているタイプでもあります。「私はこういうビジュアルがいいと思いますがどうですか?」「こういうスタイルで進めたいです」とコミュニケーションをとりながら、私らしさを活かせるように提案させていただいています。

ビジュアル・コミュニケーションに欠かせないインパクト
―さまざまな立場で制作に携わるなかでも、一貫して大切にしていることや、意識していることはありますか?
インパクトを持たせることを意識しています。ビジュアルを通したコミュニケーションはほんの一瞬。特に広告やポスターなどは、目に入って1〜2秒でビビっとくるものでないと見た人を惹きつけることは難しいからです。
私は、色の強さを最初のインプレッションにすることが多いですね。また、「これってなんだろう?」「なんとなく変だな」と感じるような良い違和感を意図的に出すこともあります。たとえばペットをテーマとしたビジュアルでは、犬や猫に加えてペットとして飼われることはあまりない鶏を紛れ込ませたり。ほかにも、線のブレをあえて活かしたりと、“整いすぎていない”ことも気にしているポイントです。
―普段のお仕事では、デジタルで描くことが多いのでしょうか?
デジタルがほとんどですが、絵具でペイントすることもありますし、手描きのイラストや写真に撮ったものを取り込んでデータ化し、素材として使用することもあります。媒体や目的によって、クラフト感を出したいケースや手で塗るほうが合うこともあるので、そういうときは手触りや質感も大切にしながら制作しています。
インパクトを持たせることを意識しています。ビジュアルを通したコミュニケーションはほんの一瞬。特に広告やポスターなどは、目に入って1〜2秒でビビっとくるものでないと見た人を惹きつけることは難しいからです。
私は、色の強さを最初のインプレッションにすることが多いですね。また、「これってなんだろう?」「なんとなく変だな」と感じるような良い違和感を意図的に出すこともあります。たとえばペットをテーマとしたビジュアルでは、犬や猫に加えてペットとして飼われることはあまりない鶏を紛れ込ませたり。ほかにも、線のブレをあえて活かしたりと、“整いすぎていない”ことも気にしているポイントです。
―普段のお仕事では、デジタルで描くことが多いのでしょうか?
デジタルがほとんどですが、絵具でペイントすることもありますし、手描きのイラストや写真に撮ったものを取り込んでデータ化し、素材として使用することもあります。媒体や目的によって、クラフト感を出したいケースや手で塗るほうが合うこともあるので、そういうときは手触りや質感も大切にしながら制作しています。

自ら現地でのペイントも行ったFUJI ROCK FESTIVAL '25のゲート。
遊びと仕事は常につながっている
―ルミネ・ニュウマンが掲げる2026年春のシーズンテーマは「The Playful Shift -遊びがあってこそ、人生」です。渡辺さんは普段、どのように「好き」や「ときめき」に向き合っていますか?
直感を大事にしています。ただ、本当にこれが好きだと確信を持って言えるようになったのは最近のことです。20代のころは、あまり自信がありませんでした。自分が好きなものに対して、本当にこれが好きでいいのかなって。今は自分の好きなものを好きでいていいんだと吹っ切れました。
実は、高校生のときにプロのミュージシャンになりたいと思ったほど音楽が好きなんです。才能がないと気づいてからは、プレイヤーとして食べていくことはできなくても、なんらかの形で音楽に関わり続けたいと模索していました。それで、音楽をやっている知り合いに「雑用でもなんでもやるよ」と声をかけていたら、クラブイベントやライブのポスターやフライヤー、バンドのロゴなどをつくらせてもらえるようになったんです。
そうやって小規模ながらコツコツと続けてきたことがつながったのが、FUJI ROCK FESTIVALの仕事です。2017年からはじめて、毎回準備に1年近くかかるので、もう10年もずっと人生を共にしているライフワークのようなもの。最初は、私がデザインしたクラブのフライヤーを、FUJI ROCK FESTIVALを主催している会社の方が偶然見て、声をかけてくださったのがはじまりでした。
―FUJI ROCK FESTIVALでは、メインビジュアルなどのデザインのほか、会場に建つ大きなエントランスゲートの制作も手がけていらっしゃいます。デザインだけでなくペイントも担当されていますね。
横幅が30メートルぐらいあって、2025年は3人で1週間近くかけて完成させました。なにができてなにができないか、現地入りしてはじめてわかることも多いので、アドリブと気合いでやっている感じです。
ゲートは最初は色の設計やデザインのみを担当し、実物の制作は造作屋さんにお願いしていました。私が塗装するようになったのは2022年から。当初は印刷したものを貼ってつくるというプランだったのですが、自然が豊かな苗場の環境にはプリントではなく塗装したほうがマッチすると思ったんです。なんとかできませんかと相談しましたが、造作屋さんから塗装ではうまく表現できないと言われたので、それなら私が塗装しに行きますということになりました。
自分ができることをやって、周りの人が喜んでくれるのを感じると、やっぱりすごくうれしいですよね。FUJI ROCK FESTIVALの仕事をきっかけに、音楽イベント以外でも、大きなくくりでいうと「お祭り」に関わる仕事が増えました。
いま思えば、中学のときに劇のステージに飾る大きな絵を描いたり、高校時代は文化祭のビジュアルを担当したこともありました。昔から祝祭ムードのある作品をつくるのは好きだったのかもしれません。
―渡辺さんは、好きが仕事につながっていますが、“遊び”もつながっているんでしょうか?
作品をつくることも遊びみたいなものです。制作で初めての体験をするとき、すごくワクワクするんですよ。それも、遊びと同じような感覚です。知り合いのライブ会場で機材のケーブルを巻くのも、絵描きの知人の展示を手伝うのも楽しい。趣味のような、遊びのような体験が刺激になって、仕事にも影響してくると思っています。
直感を大事にしています。ただ、本当にこれが好きだと確信を持って言えるようになったのは最近のことです。20代のころは、あまり自信がありませんでした。自分が好きなものに対して、本当にこれが好きでいいのかなって。今は自分の好きなものを好きでいていいんだと吹っ切れました。
実は、高校生のときにプロのミュージシャンになりたいと思ったほど音楽が好きなんです。才能がないと気づいてからは、プレイヤーとして食べていくことはできなくても、なんらかの形で音楽に関わり続けたいと模索していました。それで、音楽をやっている知り合いに「雑用でもなんでもやるよ」と声をかけていたら、クラブイベントやライブのポスターやフライヤー、バンドのロゴなどをつくらせてもらえるようになったんです。
そうやって小規模ながらコツコツと続けてきたことがつながったのが、FUJI ROCK FESTIVALの仕事です。2017年からはじめて、毎回準備に1年近くかかるので、もう10年もずっと人生を共にしているライフワークのようなもの。最初は、私がデザインしたクラブのフライヤーを、FUJI ROCK FESTIVALを主催している会社の方が偶然見て、声をかけてくださったのがはじまりでした。
―FUJI ROCK FESTIVALでは、メインビジュアルなどのデザインのほか、会場に建つ大きなエントランスゲートの制作も手がけていらっしゃいます。デザインだけでなくペイントも担当されていますね。
横幅が30メートルぐらいあって、2025年は3人で1週間近くかけて完成させました。なにができてなにができないか、現地入りしてはじめてわかることも多いので、アドリブと気合いでやっている感じです。
ゲートは最初は色の設計やデザインのみを担当し、実物の制作は造作屋さんにお願いしていました。私が塗装するようになったのは2022年から。当初は印刷したものを貼ってつくるというプランだったのですが、自然が豊かな苗場の環境にはプリントではなく塗装したほうがマッチすると思ったんです。なんとかできませんかと相談しましたが、造作屋さんから塗装ではうまく表現できないと言われたので、それなら私が塗装しに行きますということになりました。
自分ができることをやって、周りの人が喜んでくれるのを感じると、やっぱりすごくうれしいですよね。FUJI ROCK FESTIVALの仕事をきっかけに、音楽イベント以外でも、大きなくくりでいうと「お祭り」に関わる仕事が増えました。
いま思えば、中学のときに劇のステージに飾る大きな絵を描いたり、高校時代は文化祭のビジュアルを担当したこともありました。昔から祝祭ムードのある作品をつくるのは好きだったのかもしれません。
―渡辺さんは、好きが仕事につながっていますが、“遊び”もつながっているんでしょうか?
作品をつくることも遊びみたいなものです。制作で初めての体験をするとき、すごくワクワクするんですよ。それも、遊びと同じような感覚です。知り合いのライブ会場で機材のケーブルを巻くのも、絵描きの知人の展示を手伝うのも楽しい。趣味のような、遊びのような体験が刺激になって、仕事にも影響してくると思っています。

2026年春のニューショップ/リニューアルショップのキャンペーンビジュアル。
それぞれが想像を膨らませてほしい。新しい生命を感じる春のイメージ
―今回の2026年春のニューショップ/リニューアルショップのキャンペーンビジュアルは、どのようにしてつくられたのでしょうか?
春なので、まずは生き生きとしていて華やかなイメージにしたいと考えました。草原にいくつもの花が咲き、新しい生命が芽吹いていくようなシーン。ただし、説明的になりすぎず、抽象的な表現で、見る人それぞれに想像してもらいたいと考えました。全体を見ると下のほうは草原、上のほうは雲のある空のようにも見えますが、川や丘、山にも見えるのではないでしょうか。個人的には、背景のモニョモニョとしたいびつな線が気に入っています。
ルミネもニュウマンも駅直結の商業施設なので、さまざまな年齢や属性の人たちがこのビジュアルを目にすると思います。その幅広い人たちに、春が待ち遠しくなるような、明るく楽しい気分になってもらえたらうれしいですね。普段はかわいいものとは距離のあるおじさまたちにとっても、グッとくるようなイメージにできたのではないかと思います。
春なので、まずは生き生きとしていて華やかなイメージにしたいと考えました。草原にいくつもの花が咲き、新しい生命が芽吹いていくようなシーン。ただし、説明的になりすぎず、抽象的な表現で、見る人それぞれに想像してもらいたいと考えました。全体を見ると下のほうは草原、上のほうは雲のある空のようにも見えますが、川や丘、山にも見えるのではないでしょうか。個人的には、背景のモニョモニョとしたいびつな線が気に入っています。
ルミネもニュウマンも駅直結の商業施設なので、さまざまな年齢や属性の人たちがこのビジュアルを目にすると思います。その幅広い人たちに、春が待ち遠しくなるような、明るく楽しい気分になってもらえたらうれしいですね。普段はかわいいものとは距離のあるおじさまたちにとっても、グッとくるようなイメージにできたのではないかと思います。

お気に入りのアート作品が点在する渡辺さんの自室。右上は、知人でもあるアーティストの菊池虎十(きくちたけと)さんの作品。
アーティストの作品を手元に置くことが励みに
―作品をつくることも遊びみたいなものとおっしゃいましたが、制作に行き詰まったときはどのように乗り越えていますか?
ほかの作家さんの作品や作品集をよく購入するのですが、それらを部屋に飾っていると、つくり手の顔や情景が浮かんできて励まされることがあるんです。なかには知人のアーティストの作品もあり、本人が真っ直ぐ作品と向き合っていることを知っているので、制作で孤独を感じたときや思い悩んだときに目に入ると、私も頑張らなくちゃと思います。
―これからやってみたいことはありますか?
仕事と並行して、自主制作をもう少し増やしていけたらと考えています。
まだ先ですが、その発表の場として、約1年半後に東京でアーティストの前田裕(まえだゆう)さんと二人展をやる予定があって。そこではこれまでやってきたこととは少し違う表現を試してみたいと思っています。試行錯誤に時間がかかりそうなので、コツコツと実験を積み重ねて試していきたいですね。
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―これからやってみたいことはありますか?
仕事と並行して、自主制作をもう少し増やしていけたらと考えています。
まだ先ですが、その発表の場として、約1年半後に東京でアーティストの前田裕(まえだゆう)さんと二人展をやる予定があって。そこではこれまでやってきたこととは少し違う表現を試してみたいと思っています。試行錯誤に時間がかかりそうなので、コツコツと実験を積み重ねて試していきたいですね。
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