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触れて感じるフィジカルな喜び。好奇心は軽やかな春風にのってやってくる

2026.02.26

ニュウマンが季節ごとにお届けしているシーズンビジュアル。2026年2月26日から展開される春のビジュアルのコンセプトは「KEEP THE PLAY ALIVE」です。柔らかく広がったりはためいたりする色とりどりのテキスタイル(生地)で、新しい季節へ向かうワクワク感や遊び心を表現しました。ビジュアルに込めたメッセージや制作の裏側について、クリエイティブディレクターを務めたSIMONEの渡辺琢磨さんと、テキスタイルデザイナーの竹内瑠奈さんに伺いました。

思わず触れたくなる、空間を共有する体験

2025年、ニュウマンが1年にわたり展開してきたシーズンビジュアルのテーマは「ニュウマン的アートミュージアム」。“日常の中にありながら一歩先を行く”というニュウマンの個性を、アートミュージアムに行ったときに感じる特別感や気づきをもたらす体験と重ね合わせて発信するという試みです。物事を新たな解釈で表現したり、いつもと違うものに見立てたりするビジュアルは、見る人の感性を揺さぶり、「そこに行けばなにかがある」という期待感を高めてくれました。
この春は前回までのアプローチを踏襲しつつ、渡辺さんは「触れてみたくなる“手触り感”をより強調し、画面の向こうにある空間そのものを共有するような体験を目指した」といいます。

「昨年はデジタルやCGでの制作を中心としていたので、画面の中で起こっていることを眺めるような体験だったかと思うのですが、今回は実物のモチーフを用いることにこだわりました。触れたり、撫でたり、フィジカルに何かを感じたときに湧きあがる驚きや喜びを、質量感のあるアプローチで伝えたいなと。春はいろんなことにトライしてみたくなるはじまりの季節でもあるので、そうした表現で見る人の好奇心を刺激できたらいいなと思いました」

そこでモチーフに選んだのが、竹内瑠奈さんが制作したテキスタイルです。竹内さんは、テキスタイルをはじめグラフィック、エディトリアル、空間デザインなど、領域を横断して活動。主に「平面と立体」「素材と技術の融合」をテーマに多様な表現に取り組んでいるデザイナーです。

初めてのオファーに驚きつつも、「たくさんのクリエイターがいるなかで私を見つけてくださり、率直にとてもうれしかったです」と竹内さん。「ニュウマンは身近な存在だったので、すぐに『やりたいです』とお返事しました」というように、ふたつ返事で引き受けたそうです。

そうしてコラボレーションが叶い、これまでに制作したテキスタイルから今回のコンセプトに合うものをお互いに意見を出し合いながら選んでいきました。
渡辺さんは「個性豊かな質感や色味、変形したり、風を受けたときの表情など、さまざまな視点からセレクトしました」と話し、こう続けます。

「複数枚のテキスタイルを使用するうえでは、色や素材感、動きにバリエーションを持たせつつ、ひとつの世界観としてまとめあげるという指針がありました。最終的には、竹内さん同席のもとで軽くテストシュートしながら決めて。いくつもの個性的なテキスタイルが踊るように空間を彩る、印象的な仕上がりになったと思います」

平面であり立体。何にでもなれる余白がテキスタイルの醍醐味

小さなパーツを組み合わせた立体的なフォルムの布、カラフルなフリンジのような布、型抜きが施された二層構造の布。竹内さんのテキスタイルは唯一無二の存在感を放っています。どのような意識で創作活動をしているのか尋ねてみました。

「布に限らず、形や用途を限定しない“余白”を持つものに惹かれます。テキスタイルも一枚の布の状態が最終形態ではなく、衣服やインテリア、空間など、いろいろなものになっていく素材ですよね。
最大の魅力は、平面でもあり立体でもあるところだと思います。床に広げれば平面に見え、空気をはらめば立体物として柔軟にフォルムを変える。服やインテリアとして私たちの身近にある存在なのに、奥深く、緻密な構造を持っているところにとても惹かれるんです。制作を通してテキスタイルが持つ可能性を探求していきたいです」

竹内さんのものづくりへの姿勢に触れた渡辺さんは「すごくいいなと感じたのが、表現者である一方で、きちんとデザイナーでもあるところです」と話します。

「つまり、内的な自己表現ではなく、身近な布というものに問いを立て、表現を通して『もっとこういうものがあったらいいな』『こうしたらおもしろいんじゃないか』と世の中に提案しているということです。一方通行ではないプロダクトとして、見る人、使う人とのインタラクティブな関係を意識されているのだろうと感じました」

撮影に使用したテキスタイルは、竹内さんのこれまでの作品からセレクトされています。古くは美術大学時代の卒業制作から、近年コレクションのデザインを担当している東レ株式会社の人工皮革「Ultrasuede®︎」まで幅広く網羅。今回のビジュアルは、自身の創作歴がつまったクロニクルのような存在にもなりました。

「時間が経っても古く感じず、いつでも新しく見えたり、反対にすごく歴史深いものにも見えたり。そんなふうに、流行にとらわれないものづくりがしたい」と竹内さん。その想いが表れた作品たちは、1枚1枚に違った個性を持ち、まるで意志を持っているかのように美しいドレープを描きます。青空をバックに画面いっぱいに広がる色とりどりのテキスタイルが、春らしい高揚感を伝えています。

撮影に立ち会う竹内さん

撮影期間は丸2日。大胆な表現の裏の緻密さ

撮影時に意識したことについて「それぞれのフォルムやテクスチャー、色、仕組みを最大化させられるようなアングルやライティングです」と話す渡辺さん。竹内さんも現場に入り、「ここの部分にフォーカスしたらおもしろそう」「この動きのほうがより生き生きして見える」など、意見を出し合いながら進めていきました。こうした緻密な撮影は丸2日におよび、SIMONEがニュウマンのビジュアルを担当してきたなかでも最長を記録したそうです。

完成したビジュアルについて、「目にしたときのかわいい、おもしろいといった感情を入口に、春ならではの開放的な空気感みたいなものを受け取ってもらえたら」と想いを語った渡辺さん。竹内さんも「余白と可能性を持ったビジュアルになったと思います。春らしいワクワクする気持ちやポジティブな印象を感じてほしいですね」と期待を寄せ、制作をこう振り返ります。

「誰かに自分の活動について話すとき、『テキスタイルのデザインをしています』と言ってもうまく伝わらないことがあります。たとえば洋服や椅子のデザインであればわかりやすいのですが、布のデザインというのはピンとこない方が多いんですよね。自分のことを説明しづらいなとずっと思っていたのですが、そんなモヤモヤとした気持ちも吹き飛ばしてくれるぐらい、美しいビジュアルをつくってくださって本当にうれしいです」

新しい季節へ踏み出す軽やかで自由な心を表現したかのような今回のシーズンビジュアル。個性豊かなテキスタイルが織りなす世界は、ニュウマンを訪れファッションを身にまとう喜びをいっそう高めてくれるはずです。


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Textile Designer: Runa Takeuchi
Photographer / Cinematographer: Daisuke Abe(bird and insect)
Gaffer: Hirotsugu Hamada(bird and insect)
Prop Stylist: Erina Tsutsumi(bird and insect)
Creative Director: Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Movie Director: Shintaro Kamei(SIMONE INC.)
Art Director: Naoki Mizobe(SIMONE INC.)
Producer: Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager: Haruka Tokoi(SIMONE INC.)


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