FASHION

日常の風景に潜むアートの兆し。想像力を刺激する「見立て」のおもしろさ
2026.05.07
「ニュウマン的アートミュージアム」をテーマに、日常とは少し違う体験ができるニュウマンの個性を投影したシーズンビジュアル。2026年5月7日から展開されている「夏」のビジュアルは、まぶしい日差しの下、テニスコートに色鮮やかな洗濯物が干されているという、どこか不思議で想像力をかき立てる世界が広がっています。
コンセプトへの想いやビジュアルの表現、そして撮影時のエピソードについて、クリエイティブディレクターを務めるSIMONEの渡辺琢磨さんに伺いました。
コンセプトへの想いやビジュアルの表現、そして撮影時のエピソードについて、クリエイティブディレクターを務めるSIMONEの渡辺琢磨さんに伺いました。
テニスコートと洗濯物。日常と非日常の交差点から生まれるアート
CGによる幻想的な世界の創造から、より実体のあるものでの制作へ。さまざまなアプローチで“アート”の可能性を提示してきた本シリーズ。ひと区切りとなる今回も、実在するモノを撮影するという方向性はそのまま活かしつつ、最後になにを表現するかを突き詰めたと渡辺さんは語ります。シリーズの根底に流れている共通のキーワードは「見立て」でした。
「目の前にあるものに対して、違う見方をしてみたり、解釈を変えてみたりする。そうやって別の価値を見出す『見立て』の行為こそが、アートの根源的で本質的な部分に通じると考えています。誰でもこういうふうにアートに触れて楽しめるんだよ、というメッセージを込めました」
さらに、ファッションの表現や要素に立脚するという「ニュウマンらしさ」も今回のビジュアルの根本にあるといいます。
「見立て」のおもしろさを伝えること、アートは誰にでもひらかれているという可能性を示すこと、そしてファッションという切り口でニュウマンらしさを表現すること。この3つの軸がビジュアルの骨格を支えています。
夏のビジュアルに描かれているのは、色鮮やかな洋服を洗濯して干すという、極めて日常的な行為。しかし、その舞台となっているのはなんと「テニスコート」です。
「テニスコートに洗濯物を干すというのは、普通はしないけれど、物理的にはできることですよね。実際に僕たちも干せましたから(笑)。この『ありえないけれど、あり得る状況設定』こそが、今回表現したかった非日常性です」
見慣れたはずの風景に大胆な裏切りと遊び心をプラスすることで、まったく違う世界として再構築できる。ミスマッチな状況設定は、そんな「見立て」のおもしろさを視覚化したものなのです。
「目の前にあるものに対して、違う見方をしてみたり、解釈を変えてみたりする。そうやって別の価値を見出す『見立て』の行為こそが、アートの根源的で本質的な部分に通じると考えています。誰でもこういうふうにアートに触れて楽しめるんだよ、というメッセージを込めました」
さらに、ファッションの表現や要素に立脚するという「ニュウマンらしさ」も今回のビジュアルの根本にあるといいます。
「見立て」のおもしろさを伝えること、アートは誰にでもひらかれているという可能性を示すこと、そしてファッションという切り口でニュウマンらしさを表現すること。この3つの軸がビジュアルの骨格を支えています。
夏のビジュアルに描かれているのは、色鮮やかな洋服を洗濯して干すという、極めて日常的な行為。しかし、その舞台となっているのはなんと「テニスコート」です。
「テニスコートに洗濯物を干すというのは、普通はしないけれど、物理的にはできることですよね。実際に僕たちも干せましたから(笑)。この『ありえないけれど、あり得る状況設定』こそが、今回表現したかった非日常性です」
見慣れたはずの風景に大胆な裏切りと遊び心をプラスすることで、まったく違う世界として再構築できる。ミスマッチな状況設定は、そんな「見立て」のおもしろさを視覚化したものなのです。
削ぎ落とすことで際立つ想像の余白
パッと見た瞬間、どこの国ともつかない不思議な雰囲気が漂い、整然と干されているわけでもない洗濯物には、誰かが干したような手触りや温もりが残っています。
「場所、服装、見え方。そういった当たり前のことを少しずつずらし、違和感をかけ合わせていくことで、見ている人は『なんだこれ?』『この素材の服、普通は干さないよね?』と考え始めます。その違和感によって想起される感情や思考の広がりこそが、アートのきっかけなんです」
日常のなかに非日常を掛け合わせることで新しい感覚を覚える。それはまさに、訪れるたびに新しい発見があるニュウマンという場所にも通じる表現です。
「今回はシンプルに削ぎ落としていくなかで、メッセージも一番シンプルになりました。ひと目で違和感や不思議な感覚を抱いてもらえる、潔いクリエイティブになったと思います」と渡辺さん。
余白があるからこそ、見る人の数だけ解釈が生まれ、想像力が刺激される。その“考えてしまう時間”こそが、このビジュアルが提供するアート体験です。
「場所、服装、見え方。そういった当たり前のことを少しずつずらし、違和感をかけ合わせていくことで、見ている人は『なんだこれ?』『この素材の服、普通は干さないよね?』と考え始めます。その違和感によって想起される感情や思考の広がりこそが、アートのきっかけなんです」
日常のなかに非日常を掛け合わせることで新しい感覚を覚える。それはまさに、訪れるたびに新しい発見があるニュウマンという場所にも通じる表現です。
「今回はシンプルに削ぎ落としていくなかで、メッセージも一番シンプルになりました。ひと目で違和感や不思議な感覚を抱いてもらえる、潔いクリエイティブになったと思います」と渡辺さん。
余白があるからこそ、見る人の数だけ解釈が生まれ、想像力が刺激される。その“考えてしまう時間”こそが、このビジュアルが提供するアート体験です。

偶然の風と光を捉えた、フィジカルな撮影
CGを駆使した表現ではなく、あえて実写撮影で行われた今回のビジュアル制作。そこには、自然環境と向き合う現場ならではの苦労と喜びがありました。
「外部環境に左右されるし、それによって生まれる意外性もある。ちょうどいい風や、ちょうどいい日差しを待って切り取るというプロセスは、フィジカルだからこその難しさであり、醍醐味でもありました」
撮影が行われたのは、まだ肌寒い3月。しかし、現場では予想外の強い日差しが降り注ぎ、スタッフは肌が日焼けで真っ赤になるほどだったと言います。
「朝には雨が降ったり、日が差したり陰ったりと、天候には翻弄されました。でも、だからこそ、ベストな瞬間を捉えられたときの喜びは大きかったですね」
夏のまぶしいキラキラ感を演出するため、太陽光をベースにしつつ、自然光の照度や色温度に合わせた照明を組んで光をつくり込みました。風も、自然の風に加えてスタッフが風を起こし、それらを組み合わせて洋服の絶妙な動きを表現したそうです。
「外部環境に左右されるし、それによって生まれる意外性もある。ちょうどいい風や、ちょうどいい日差しを待って切り取るというプロセスは、フィジカルだからこその難しさであり、醍醐味でもありました」
撮影が行われたのは、まだ肌寒い3月。しかし、現場では予想外の強い日差しが降り注ぎ、スタッフは肌が日焼けで真っ赤になるほどだったと言います。
「朝には雨が降ったり、日が差したり陰ったりと、天候には翻弄されました。でも、だからこそ、ベストな瞬間を捉えられたときの喜びは大きかったですね」
夏のまぶしいキラキラ感を演出するため、太陽光をベースにしつつ、自然光の照度や色温度に合わせた照明を組んで光をつくり込みました。風も、自然の風に加えてスタッフが風を起こし、それらを組み合わせて洋服の絶妙な動きを表現したそうです。

不在の人物像を立ち上げるこだわりのスタイリング
ビジュアルには人物は登場しません。しかし、そこに干されている洋服や小物からは、確かな“誰か”の気配が感じられます。
実は今回の撮影では、モデルが不在であるにもかかわらず、プロのスタイリストが架空の人物像に合わせて洋服や小物をセレクトしました。
さらに注目したいのは、使用されたアイテムの多くが“1点もの”であるということ。エスモード・東京校の学生が手がけたオリジナルの制作物や、独自の味わいを持つヴィンテージ品などをスタイリングに取り入れました。色とりどりの個性的なアイテムが風に揺れる様子は、多様性を肯定するかのような空気感も生み出しています。
「ただの小道具としてではなく、誰かが着る前提で個性を出す。そこは隠れたこだわりポイントですね。画面映えする素材やシルエット、カラーバランスの良さはもちろんですが、服や小物の選び方から、その持ち主のパーソナリティを感じ取ってもらえたらおもしろいなと思いました。
持ち主は画面に映らず、そこには個性的な服だけがある。そんなふうに逆説的に人の存在を感じさせる演出です。ムービーでは、そのことを強化するアクセントとして、ファッションアイテムに混じって手書きのメモが干されていたりします」
ムービーでは、干してあった帽子が風で落ち、帽子がコロコロと転がっていくラストシーンが印象的。ちょっとしたアクシデントを描くことでリアリティを出し、同時にコミカルさもプラスしています。
また、映像を彩る音楽も、“夏のワクワク感”ではなく、どこかコンセプチュアルで不思議な余韻を残す仕上がりになっています。
「洗濯物が干されている風景自体は、基本的にはなにも起こらない静かなものです。その静けさを前提にしつつも、人の介在やストーリーを感じさせるような絶妙なバランスを狙った音楽を用意しました」
実は今回の撮影では、モデルが不在であるにもかかわらず、プロのスタイリストが架空の人物像に合わせて洋服や小物をセレクトしました。
さらに注目したいのは、使用されたアイテムの多くが“1点もの”であるということ。エスモード・東京校の学生が手がけたオリジナルの制作物や、独自の味わいを持つヴィンテージ品などをスタイリングに取り入れました。色とりどりの個性的なアイテムが風に揺れる様子は、多様性を肯定するかのような空気感も生み出しています。
「ただの小道具としてではなく、誰かが着る前提で個性を出す。そこは隠れたこだわりポイントですね。画面映えする素材やシルエット、カラーバランスの良さはもちろんですが、服や小物の選び方から、その持ち主のパーソナリティを感じ取ってもらえたらおもしろいなと思いました。
持ち主は画面に映らず、そこには個性的な服だけがある。そんなふうに逆説的に人の存在を感じさせる演出です。ムービーでは、そのことを強化するアクセントとして、ファッションアイテムに混じって手書きのメモが干されていたりします」
ムービーでは、干してあった帽子が風で落ち、帽子がコロコロと転がっていくラストシーンが印象的。ちょっとしたアクシデントを描くことでリアリティを出し、同時にコミカルさもプラスしています。
また、映像を彩る音楽も、“夏のワクワク感”ではなく、どこかコンセプチュアルで不思議な余韻を残す仕上がりになっています。
「洗濯物が干されている風景自体は、基本的にはなにも起こらない静かなものです。その静けさを前提にしつつも、人の介在やストーリーを感じさせるような絶妙なバランスを狙った音楽を用意しました」

「あとはご自由に」というメッセージを込めて
シリーズのひと区切りとなる本作。最後に、このビジュアルを通して読者にどんな気持ちになってほしいかを渡辺さんに伺いました。
「画面全体としては、夏らしさ、爽やかさ、そして彩りの豊かさを素直に感じていただけたらうれしいです。そのうえで、この『テニスコートに洗濯物』という不思議な状況を見たときに、自由に想像を膨らませてほしいですね」
だからこそ「特定のメッセージを押し付けるのではなく、見た人の心に委ねたい」と渡辺さんは言います。
「これで頭が刺激されたり、考えてもらったり、なにかポジティブなメッセージを受け取ってほしいというよりは、『このユニークな状況から、あなたはなにを感じますか?』と問いかけているような作品です。あとはご自由に感じてください、というのが強く出ていると思います」
「これまでの制作のなかでも、良い意味での“ちぐはぐさ”を一番表現できたクリエイティブ」と渡辺さんが笑顔で語る通り、正解のないアートの自由さがそこにはあります。シリーズを通じて掲げてきた「ニュウマン的アートミュージアム」の精神は、この最終作で最もシンプルかつ力強い形に結実しました。
今夏、ニュウマンに立ち寄った際は、ぜひこのビジュアルを探してみてください。そして、あなた自身のフィルターを通して、どんな物語を想像するのかを楽しんでみてはいかがでしょうか。
---------------
Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Art Director:Naoki Mizobe(SIMONE INC.)
Movie Director:Ayano Kamiyama(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)
Photographer:Kiyotaka Hamamura
Cinematographer:Daisuke Abe(bird and insect)
Gaffer:Hirotsugu Hamada(bird and insect)
Stylist:Hirano Mizuki
Prop Stylist:Erina Tsutsumi(bird and insect)
Retouch:VITA INC.
===================
■あわせて読みたい
>> 触れて感じるフィジカルな喜び。好奇心は軽やかな春風にのってやってくる
■こちらもおすすめ
>> もっと身近に、もっと気軽に。アートと出会う3日間/LUMINE ART FAIR 開催レポート
「画面全体としては、夏らしさ、爽やかさ、そして彩りの豊かさを素直に感じていただけたらうれしいです。そのうえで、この『テニスコートに洗濯物』という不思議な状況を見たときに、自由に想像を膨らませてほしいですね」
だからこそ「特定のメッセージを押し付けるのではなく、見た人の心に委ねたい」と渡辺さんは言います。
「これで頭が刺激されたり、考えてもらったり、なにかポジティブなメッセージを受け取ってほしいというよりは、『このユニークな状況から、あなたはなにを感じますか?』と問いかけているような作品です。あとはご自由に感じてください、というのが強く出ていると思います」
「これまでの制作のなかでも、良い意味での“ちぐはぐさ”を一番表現できたクリエイティブ」と渡辺さんが笑顔で語る通り、正解のないアートの自由さがそこにはあります。シリーズを通じて掲げてきた「ニュウマン的アートミュージアム」の精神は、この最終作で最もシンプルかつ力強い形に結実しました。
今夏、ニュウマンに立ち寄った際は、ぜひこのビジュアルを探してみてください。そして、あなた自身のフィルターを通して、どんな物語を想像するのかを楽しんでみてはいかがでしょうか。
---------------
Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Art Director:Naoki Mizobe(SIMONE INC.)
Movie Director:Ayano Kamiyama(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)
Photographer:Kiyotaka Hamamura
Cinematographer:Daisuke Abe(bird and insect)
Gaffer:Hirotsugu Hamada(bird and insect)
Stylist:Hirano Mizuki
Prop Stylist:Erina Tsutsumi(bird and insect)
Retouch:VITA INC.
===================
■あわせて読みたい
>> 触れて感じるフィジカルな喜び。好奇心は軽やかな春風にのってやってくる
■こちらもおすすめ
>> もっと身近に、もっと気軽に。アートと出会う3日間/LUMINE ART FAIR 開催レポート