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LUMINE meets ART PROJECT

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2026.03.27LUMINE meets ART

meets ART story #23

  • #INTERVIEW

故郷の雪山を滑った身体的な記憶がオリジナリティに。
複雑なレイヤーと立体感をもつ松村咲希の抽象画

アクリル絵の具やステンシルなどさまざまな技法で、複雑なレイヤーと立体感をもつ抽象絵画を制作。作品には斜めの面やカーブが描かれることが多く、そこには自身の原風景が潜んでいる。

「高校卒業まで、長野の山間部の村で育ちました。数年前にかなり久し振りに帰省したら、村から見える山の斜面が自分の抽象画とそっくりで。子どもの頃にスキーをしながら体感していた山の記憶が無意識にリンクしていたことに驚き、自分の体験をベースに作品が立ち上がってくるのだなと感じました」

学生の頃は人物などをモチーフに油絵を描いていたが、美大の卒業制作展の際に「作品が自己満足にとどまっているのでは?」という疑念が生じた。大学院ではこれまでと反対のことを試してみようと、絵筆をスプレーやシルクスクリーンに持ち替え、具象から抽象にシフト。「絵はモチーフありき」という先入観を捨て、描き方を実験するなかからオリジナリティを拾い出すことができた。

「美大志望生は受験に向けてデッサンを厳しく指導されがちです。基礎はたしかに大事ですが、自らの個性を見つけて表現するには、自分の思い込みから勇気をもって一歩踏み出す必要があると気づきました」

その「一歩踏み出す」チャレンジは、現在も継続。最近は抽象画にあえて具象を織り交ぜることが多く、例えば「Mountain」シリーズには雪山の景色が描かれている。

「絵を見てくださる方から『○○山の風景を思い出しました』と声をかけられることも。具体的なモチーフがあると、鑑賞者の過去の記憶やイメージが引き出されやすく、そこからコミュニケーションが生まれるのは楽しいです。新たな視点を得られることもあり、私はこうした対話のために絵を描いているのかもしれない、と感じることもあります」

2025年11月に開催されたルミネのアートフェアでは作品がキービジュアルの一つに選出された。会期前後は、ニュウマン新宿2階正面ショーウインドウでインスタレーション作品を披露するなど、活動の幅も広がっている。

「ショーウインドウのようにスケールの大きい作品は、よりフィジカルに訴えかけることができるのでうれしいです。今後も自分のスタイルをときに壊しながら、挑戦し続けていきたいですね」

作品イメージ

松村さんの右の作品が「Mountain」シリーズ。左は京都の庭文化に影響を受けた「Garden」シリーズ。

作品イメージ

「絵の具による立体感も特徴の一つ。

作品イメージ

2025年10~11月に展開されたニュウマン新宿2階のウインドウディスプレイ「Layers of Landscapes」。山、月、祭りを題材にした抽象画を組み合わせた。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2026年1月26日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。