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LUMINE meets ART PROJECT

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2023.10.03LUMINE meets ART

meets ART story #9

  • #INTERVIEW

昆虫や動物、植物の多様で不思議な形。
それらを丁寧に描き、私たちの想像力を刺激してくれる黒田潔のアート

植物や動物の有機的な形を線画で丁寧に描いたアートワークで人気の黒田潔さん。商品パッケージや壁画広告などで作品を目にしたことのある人も多いだろう。幼少期から、昆虫のからだの模様や植物の葉脈など「自然界のデザイン」に熱中。絵を描くのも得意で、高校卒業後は多摩美術大学へ。創作漬けの日々のなか、同大の大学院在籍時に有名デザイン事務所でグラフィックデザインの仕事を開始。修了後もそのまま働いていたが、やがて葛藤が。
「イラストレーターになることを目標にデザインの現場に入ったのですが、忙しすぎて、このままでは絵を描くことから遠ざかってしまうという恐怖感が出てきて。イラストレーターとして再スタートするきっかけを作らなくては、と思いました」

当時は、SNSなど個人が作品を気軽に発表できる場がなかった時代。「作品への感想や意見を聞きたい」と、憧れのギャラリーにアプローチを重ね、2003年、初の個展を開催。作品の細部を見てほしいからと、高さ2メートルの壁一面に広がる巨大な植物の絵を披露した。それから2年後の2005年、新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックを担当するチャンスを得て、長さ数百メートルに及ぶ絵を2カ月で制作。グッドデザイン賞を受賞したことで知名度が一気に高まった。
「不特定多数の方に見ていただく作品づくりを経験し、『人の意識に残るものをどうつくるか』というテーマが生まれました」

記憶に残る作品を生むには、「描きたい」という衝動が大切だと感じた黒田さん。それまでは図鑑などの印刷物を参考にモチーフを描くことが多かったが、実際の動植物を観察し、その場で得た情報や発見を絵に転換していくように。
「地方の動物園からアラスカの森まで、さまざまな土地で出会う生き物に、ひとつとして同じ形はありません。その面白さを表現し、見る人の想像力を刺激できたら」

現在は木材を用いて厚みを出したインテリア感覚で楽しめる作品の制作など、パンデミック中にためていたアイデアにも挑戦。
「展示を控えざるを得なかった時期を経て、僕は誰かとつながるために絵を描いているのだとあらためて感じました。今後は絵本など、幅広い世代の人に届く作品も発表していきたいです」

作品イメージ

1975年東京生まれ。アメコミや俵屋宗達、伊藤若冲などの影響を受けながら、独自の線画を確立。

作品イメージ

東京・新宿の「B GALLERY」で先日開いた個展で披露した最新作。

作品イメージ

JR新宿駅南改札を出て正面、ルミネ新宿ルミネ2のシャッターに描いた作品。美しいモチーフが、行きかう人々の目を和ませてくれる。

Text: Kaori Shimura Photo: Ittetsu Matsuoka(上、中) Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi

※本記事は2023年9月25日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。