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LUMINE meets ART PROJECT

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2025.11.07LUMINE meets ART

meets ART story #20

  • #INTERVIEW

実家の造船所から出た廃棄予定の木片が、ポップな立体アートや変形キャンバス作品に。
EMUが手がける唯一無二の世界観

捨てられるはずの木片をアップサイクルし、立体作品や変形キャンバス作品を制作しているEMUさん。独特のポップなタッチや斬新なアイデアで注目を集めている。使用している木片は、実は岡山の実家の造船所から出た端材。

「祖父も父も船大工で、木造船をつくる様子を子どもの頃から見てきました。僕も、端材でおもちゃをつくるのが好きでしたね」

やがて上京し、グラフィックデザイナーとして活躍していたが、40歳を過ぎた頃に心境に変化が訪れた。

「父の仕事がカッコいいなと。長い時間をかけて研鑽し、手作業で生み出したものには、そこにしかない温もりがある。僕も父のように、自分の手でつくったものをこの世に残したいという気持ちが芽生えました」

2016年、順調だったグラフィックデザイナーの仕事をきっぱりとやめて、アートの道へ。実家に保管してあった端材を送ってもらい、もともと好きだったこけしの概念を自分なりに置き換えた作品を制作し始めた。工作機械の使い方を独学で研究し、翌年、試行錯誤の末に生まれた作品をスイスの展示会に出展したところ、大反響を得た。

「捨てられる素材を使って伝統工芸をアップデートするという発想が、エコやリサイクルへの意識が高いスイスでは受け入れられやすいのではないかと思い、挑んだのですが、結果は予想以上でした」

すぐさまヨーロッパ各地で作品が話題となり、現在では国内外の企業とのコラボなどでも引っ張りだこの人気アーティストに。2021年からはペインティング作品も発表しているが、変形キャンバスをつくるところから始まり、オブジェをマグネットで着脱できる仕様にするなど、目からウロコのものばかり。

「変形キャンバスは『どうせならギミックのある自由なものを』と数年かけて開発しました。多角形のキャンバスを構造的に成立させるのは意外と難しい。木造の知識も経験も豊富な父のアドバイスの賜物です」

子どもの頃から廃材の再利用に親しんでいたEMUさんにとって、アップサイクルはごく自然なこと。今後は木片のほか、廃棄予定の布やプラスチックといった身近な素材も用いてパブリックアートを制作するのが目標だそう。今年の11月には「ルミネアートフェア」にも参加し、好評を博した。

作品イメージ

アトリエには作品のほか「フライターグ」のアイテムなど、EMUさんの好きなものがぎっしり。

作品イメージ

手製の変形キャンバス。裏側にはオリジナルのキャラクターのオブジェが。名前や性別などはあえて設定していない。

作品イメージ

旋盤機や紙やすり、エアブラシ塗装用の機材などを駆使して作品を制作している。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2025年7月28日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。