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LUMINE meets ART PROJECT

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2025.11.07LUMINE meets ART

meets ART story #21

  • #INTERVIEW

撮影した景色から窓や電柱などを消し、現実と虚構が交錯した都市の風景を生み出す。
違和感が心地よい安藤瑠美のアート

フォトグラファー&レタッチャーとして活動する安藤瑠美さんが2020年から制作している「TOKYO NUDE」は、虚構の東京を写真で作ることがコンセプトの作品シリーズだ。撮影した街の風景から窓や電柱、看板などをレタッチ技術で消し、色味を調整。完成した虚構の景色からはフラットな絵画のような静けさが漂い、まるで突然パラレルワールドに迷い込んだかのような不思議な感覚に至る。

東京藝術大学在学中にいろいろなメディアを研究し、レタッチに興味を抱いたという安藤さん。卒業後はレタッチの仕事をしながら、並行して作家活動を行うように。

「自分で撮影した写真に何かしら手を加えることでオリジナリティを表現したかったんです。あれこれ試した結果、レタッチという手法がいちばんしっくりきました」

あるとき、仕事で「写真に写っている電柱や電線を消す」という依頼を受け、「消さなくていいものまで消えている作品があったら面白いのでは」と思いついた。それが「TOKYO NUDE」の始まりだった。

「地方出身の私にとって、東京は情報が洪水のようにあふれている街。街の大量の看板に圧を感じることもあり、穏やかな風景をつくりたいという思いもありました」

当時は新型コロナウイルス禍で、世の中に閉塞感が漂っていた時期でもあった。人と人とのコミュニケーションが遮断されている状態を、建物にあるはずの窓やドアがないというビジュアルで表現した。

「とはいえ、空気が重くなりすぎると押しつけがましくなってしまう。そこで色味をカラフルにして、心地よさと不穏なムードのバランスを取るようにしました。そのさじ加減は今も変わりません」

「TOKYO NUDE」は現在では書籍の装丁や広告、ブランドとのコラボレーションなど、さまざまな形で広がりを見せている。今年は写真集『TOKYO NUDE』を出版、11月にはルミネが主催するアートフェアのキービジュアルの一つに選ばれるなど、ますます注目が集まる。

「『TOKYO NUDE』が概念として定着してきたように感じます。実は東京以外の街をモチーフにすることもあるのですが、それもまた『TOKYO NUDE』。いずれは南米や共産圏の国の風景を素材に、制作してみたいと思っています」

作品イメージ

安藤さんのアトリエにて。

作品イメージ

上は「LIBRIS KOBACO」とコラボレーションしたアクリルスタンド。くり抜かれた部分はピアスまたはイヤリングとして身につけられる。下は写真集『TOKYO NUDE』の刊行記念のハンカチ。トートバッグも発売された。

作品イメージ

作品が書籍の装丁に採用されることも多い。

INFORMATION
安藤さんは2025年11月1日(土)〜3日(月・祝)、ルミネゼロ(ニュウマン新宿5F)で行われるLUMINE ART FAIRに出展した。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2025年9月22日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。